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イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

〔シリア・イラク〕 イスラム国(IS)日本人人質事件(2) 人質はどこに?

◆人質がいる可能性のある3つの場所
はたして2人の人質はどこにいるのだろうか。公開された処刑予告映像は合成ではないかという話が出ているが、後藤健二さん、湯川遥菜さんの2人がイスラム国(IS)の拘束下にあるのは間違いない。 拘束場所として推測されるのは3つ。ISが「首都」とするシリア中部ラッカ。イラクのモスル、湯川さんが拘束されたシリア北部のアレッポ近郊ではないか。可能性の高い順に並べてみた。

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IS支配地域は、日本の面積の3分の1から半分近くにまで及ぶ。外国人人質の拘束場所や殺害場所も広範囲にわたる。ラッカからモスルまでの直線距離は370キロ。ほぼ東京・名古屋間に相当する。

【可能性1】 ラッカ近郊(シリア)
シリア中西部のラッカは、ISが事実上の「首都」とし、最大拠点となっている町だ。治安、行政、社会システムなどイスラム国による独自のイスラム解釈にもとづく運営が始まり、強固に支配を固めている。ISの中枢機構はラッカにあるといわれ、人質は市内か近郊地域にいる可能性が最も高いのではないか。先月、ISと対峙するクルド組織の司令官に外国人人質の拘束場所についてきいた際も、ほとんどがラッカに連れて行かれる、と話した。 昨年、米軍が米国人人質救出のために特殊部隊デルタフォースを投入し、人質救出作戦を敢行したのもラッカ近郊の場所だった。このときは部隊が急襲した建物に人質はおらず、作戦は失敗に終わったといわれる。数週間後、救出予定だったとされる米国人人質のうち、ソトロフ氏とフォーリー氏の「処刑」映像が公開された。とくに米軍作戦以降、ISは人質の拘束場所については慎重になっていると思われる。

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ISが「首都」とするシリア中部のラッカ。写真はシリア軍から奪取した戦車や自走砲で市内をパレードする戦闘員ら。(IS映像)

【可能性2】 モスル(イラク) 
イラク北部のモスルは、昨年6月、ISが制圧したイラク第2の都市で、最高指導者バグダディ師が姿を現した場所である。昨年10月、後藤さんが行方不明となった時期に前後して、英国人人質ジョン・キャントリー氏がシリア北部コバニ(アイン・アル・アラブ)に連れて行かれ、「クルド勢力など残っていない」とISの主張に沿うようなリポートをしている。その後、彼の行方は分からなかったが、今月上旬、モスルで撮影された映像で再び「リポーター」として姿を現し、「ISのもとで人びとは平安に暮らしている。西欧メディアのデマ報道を信じてはない」と話すようすが確認された。

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ISの人質となっている英国人ジョン・キャントリー氏が、昨年、シリア北部のコバニ(アイン・アル・アラブ)から「リポート」をするようす。(IS映像)

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今月上旬に公開された最新映像では、キャントリー氏がIS支配下のイラク・モスル市内から再び「リポート」し、市民生活や病院などを紹介する姿が確認された。(IS映像)

【可能性3】 アレッポから東近郊(シリア)
シリア北西部のアレッポは湯川さんが拉致された場所であり、後藤さんが消息を絶ったマレアにも近い。この近くには、昨年、米国人人質ピーター・カッシグ氏がシリア軍兵士18人とともに処刑されたとされるダービクがある。ISは、預言者の言葉を独自に解釈し、ダービクを「十字軍との決戦の地」と位置づけ、わざわざこの町を選んでいる。今回の殺害予告映像では、「(日本は)自ら進んでISに対するこの十字軍に参加した」などとしており、象徴的なダービクを再び選ぶこともありうる。ただ、米国人処刑はISの主張するダービクではなかったのではないかという説もあるうえ、ISの主要支配地域のはずれにあたり対立勢力との衝突も起きる地域だ。アレッポ近郊に日本人人質がいる可能性は低い。

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昨年11月公開された米国人ピーター・カッシグ氏とシリア空軍兵士18人の殺害は、ダービクでおこなわれたとされる。中央の黒覆面の戦闘員は、英語の話しぶりから、今回、日本人人質2人の殺害予告映像に登場した「ジハーディ・ジョン」と推測される。(IS映像)

これら3つの場所でなければ、米軍などの空爆を避けるために、町から離れた村に拘束されているかもしれない。 拘束場所というのは、IS側が人質をどうするつもりかでも変わってくる。本当に身代金を取りたいのか、あるいは殺害は最初から決めていて、警告映像を公開して政治宣伝に最大限活用するために利用したいか。日本だけでなく世界じゅうのメディアが日本人人質事件をトップニュースで伝えたという意味では、ISの意図する宣伝効果としての目的は達成されている。 今回、72時間という短い警告時間を最初から区切って警告しているため、もし殺害を最初から準備しているなら、場所も選定済みで、すでに移送しているのではなか。(つづく)
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