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イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

【動画】歌から読み解くシリア・イラクでの戦争(2) イスラム国(IS)欧米意識した外国戦闘員勧誘

◆IS関連 ◆歌から読み解く戦争

◆過激映像に感化される外国の若者たち
シリアとイラクでの戦闘には多数の外国人戦闘員も参加している。イスラム国(IS)は、こうした戦闘員を次々とインタビューで紹介し、故国の若者に向けた戦闘勧誘メッセージを発信。こうした動きをうけ、イギリスはシリアやイラクでの戦闘に加わろうとする者のパスポートを没収できる法整備を進め、ドイツはISの宣伝活動の法規制に乗り出した。 ナシード(イスラム聖歌)をアレンジし、過激映像を交えてドイツの若者を勧誘するビデオで、「ジハード(聖戦)をともに戦おう」と歌っているのは、ドイツ出身の戦闘員。人の命を奪うことの罪悪感を失わせるのがこうした宣伝映像でもある。

〔動画〕「いざ、ジハード(聖戦)へ」 アブ・タルハ・アル・アルマニ
(転載禁止・残酷な映像部分はぼかしを入れています)

いくつもあるISのナシードのなかでも異質なのが、このドイツ語で歌われる「いざ、ジハードへ」だ。過激な戦闘映像に、ミュージッククリップのような英語字幕が挿入されている。ラップの要素を取り入れたこの特殊なナシードは、欧米の若者を強く意識した作りになっている。現実に起きている破壊と殺戮を、戦争ゲームにでも参加するかのような「軽さ」に仕立て、ジハードを呼びかける。

これを歌っているのはベルリン出身の元ラップ歌手デニス・クスペルト。

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アブ・タルハ(Deso Dogg=本名デニス・クスペルト・39才)。ドイツ人の母とガーナ人の父のあいだに生まれた。ラップミュージシャン時代は、薬物で逮捕されている。ドイツの過激組織ミラトゥ・イビラヒム系のメディアに登場し、ラップ歌手時代を振り駆りながら、なぜ「信仰」に目覚めたのかを語っている。

1975年生まれの彼はミュージシャンとして活動中に、イスラム教に入信し、ジハードを称賛する歌を作り始める。ドイツ当局が警戒を強めるなか、内戦後のシリアに入り、別組織を経てIS戦闘員となった。組織名はアブ・タルハ・アル・アルマニ(ドイツのアブ・タルハ)。

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ISの「首都」ラッカ入りしたアブ・タルハ。ドイツでイスラム過激組織で活動を続けたのち内戦下のシリアへと向かった。別の武装組織を経てISに参加。

シリア内戦には、ほかにドイツの元サッカー代表ブラク・カラン選手も参加。所属組織は不明だが政府軍の爆撃で死亡している。ジハードに惹きつけられ外国から加わった戦闘員は数千人といわれる。欧米社会で抑圧された移民層が閉塞感や怒りから戦場に向かうだけでなく、恵まれた環境に育った若者も少なくない。

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ラッカ市内で銃を持つアブ・タルハ。映像では、「我々にあるのは勝利か殉教か」などと話し、ジハード戦士となったことへの喜びを語っている。

イスラム義勇兵」として宣伝映像に度々登場する外国人戦闘員だが、アラビア語もできないうえに戦争の経験がない外国人も少なくなく、前線に行ってもすぐに戦死したり、スパイを疑われる例もあるといわれる。一方で、戦闘員が出身国に帰って自爆事件や過激な活動を組織する懸念から、各国は監視を強化している。

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戦闘員としてISの映像に登場し、指導者バグダディ師への忠誠を表明するアブ・タルハ。

宣伝映像に感化されたり、「自分探し」「自分試し」として、シリア入りした外国人たち。なかには理想や大義に燃えて戦闘員となった者もいるだろう。だが組織の一員となったとき、課されるのは容赦ない殺戮行為である。 アメリカも爆撃で殺している、は、自分たちがおこなう異教徒襲撃や住民殺戮を正当化する理由にはならない。よそからやってきて人殺しの標的にされるシリアとイラクと人びとはたまったものではない。

イスラムを名乗る過激主義によって、毎日、多くの人の命が奪われていることに、一般のイスラム教徒は心を痛めている。

〔動画〕 これがベルリンでラップ歌手をしていた頃のアブ・タルハのビデオクリップ。Deso Doggの名前で活動していた。ドイツメディアは「下町の不良少年からテロリストへ」と報じている。彼をイスラム過激主義に向かわせたものは何だったのか。

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(歌には日本語の翻訳をつけましたが、わかりやすいように意訳した箇所もあります。特定の勢力の宣伝に荷担することを意図するものではなく、いま起きている戦争のひとつの側面を歌から読み解くという趣旨で掲載しています)

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