読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

【動画】歌から読み解くシリア・イラクでの戦争(1) イスラム国(IS) 宗教歌としてのナシード

激しい戦闘が続くシリアとイラク。歌や映像を通じた各派の宣伝合戦も盛んだ。シリア、イラク両政府は愛国歌をテレビで繰り返し流し、過激勢力の掃討作戦を戦う軍のイメージアップを狙う。一方、武装組織は、自派の戦果をおりまぜた映像で、勇猛果敢に戦う戦士を称える。歌詞からは、それぞれの特徴が読み取れる。イラク・シリアではいまどのような歌がプロパガンダに使われているのか。

◆ナシードで聖戦呼びかけ
ネット動画と映像をもっとも駆使しているのが、武装組織イスラム国(IS)だ。ネットを使った発信力、映像編集を駆使した動画は、シリアやイラクの政府宣伝をしのぐレベルである。ジハード(聖戦)を呼びかるプロパガンダ映像に心を動かされ、戦闘員に加わった若者も少なくない。

〔動画〕「わがウンマよ 夜明けのときが来た」(転載禁止)
「わがウンマよ 夜明けのときが来た」はISの映像に頻繁に使われている。くりかえし登場する「ウンマ」とはイスラム共同体を意味する。だが、スンニ派のISは、シーア派やアサド政権のアラウィ派を共同体でともに暮らすイスラムとは見なさず、「背教徒」として打ち倒す敵と規定。歌詞に出てくる「世を治めし法(シャリーア)」はイスラム法のことで、ISは独自に解釈したシャリーアを支配地域の統治原理として「イスラム国家」の樹立を一方的に宣言した。

ISの映像には「戦士の雄姿」が映し出されるが、実際に戦闘員が手を染めるのは殺戮である。戦争ゆえに敵対組織と戦闘を交えることはあるだろう。しかし、ISは自分たちに従わない一般市民をも容赦なく殺害する。相手を徹底的に打ち砕き、部族を恐怖で黙らせ支配を広げてゆく。シリアの混乱と、イラクでのマリキ政権に対するスンニ派からの反発を巧みに利用しながら、組織は急拡大した。

ISのスタイルは男性コーラスによるナシード。本来、ナシードは唱歌・合唱で、イスラムにおいてのナシードは信仰を讃える歌である。アッラーへの帰依、この世の美しさを歌うものや子ども向けのものもあり、ナシード自体がすべて戦意高揚の宗教歌というわけではない。ISのナシードの場合は、「自身の血を捧げよう」という歌詞が非常に多く、殺戮が「聖戦」に置き換わり、信仰上の義務であるかのように美化されている。

フセイン政権時代はアラブ式軍歌は歌われても、ジハードを称賛する聖歌ナシードには普通のイラク人は馴染みはなく、イラクで反米武装闘争が広まり自爆攻撃や襲撃映像が増え始めた当時、それにあわせて流れる男性コーラスのナシードは、「気味が悪い」というのが一般のイメージだった。 ISナシードの最近の傾向としては、指導者アブ・バクル・バグダディを讃える歌が増えている。過激主義に加え、ナシードを織り込んだ宣伝映像を駆使したことも、彼らが急速に勢力を拡大した理由といえる。 (つづく)

次へ>> 歌から読み解く(2) イスラム国(IS)欧米意識した外国戦闘員勧誘

(歌には日本語の翻訳をつけましたが、わかりやすいように意訳した箇所もあります。特定の勢力の宣伝に荷担することを意図するものではなく、いま起きている戦争のひとつの側面を歌から読み解くという趣旨で掲載しています)

 

 

◆IS・イラク・シリア・クルド情勢の
新着記事はツイッターで案内しています>>

広告を非表示にする