イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

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【IS声明動画・日本語訳】イスラム国(IS)バグダディ指導者「カリフ」宣言(全文)(2014/07/04)

◆制圧後のモスルで「カリフ」名乗る
武装組織イスラム国(IS)のアブ・バクル・バグダディ指導者が、6月に制圧したイラク・モスルのモスクで、「カリフ」を宣言する映像が、ISメディア部門フルカーンによって公開された。撮影されたのは7月4日と見られる。映像には「イスラム国・カリフ・信徒の長」とあり、バグダディ自身が映像内で「私が指導者として任じられた」としている。このプロパガンダ映像には宗教的言辞が並んでいるが、「宗教」の名のもとに斬首や住民殺戮を繰り返す過激組織である実態にも留意していただきたい。過激組織は何を根拠に戦っているのか。その思考や背景を読み解くため資料として掲載する。以下は動画とそのテキスト全文。「カリフ就任」に関するテキスト部分は下のほうの赤文字の箇所。(一部意訳)

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【IS動画・日本語訳】バグダディ演説 (21分・2014/07/04) 一部意訳・転載禁止
映像を公開したフルカーンはイスラム国(IS)の公式メディア部門。この金曜礼拝の場所は、ISが6月に制圧したイラク・モスル市内にあるアル・ヌーリ・モスクとされる。複数のカメラが使われており、準備された撮影だったことが伺える。「カリフ」宣言の箇所は9分30秒めから。
カリフ-イブラヒム イスラム国・信徒の長
モスル・大モスクでの金曜説教と礼拝 

アブ・バクル・アル・フサイニ・アル・バグダディアッラーよ、彼を守りたまえ) 

まこと、アッラーにすべての称讃あれ。我らはアッラーを讃え、お力添えとお赦しを請い、心の悪と行ないの因果からの庇護をアッラーに求めるものなり。アッラーがお導きになる者は迷うことなく、アッラーが迷わせる者は導かれることはなし。アッラーのほかに神はなし、並びなき御方、と我は証言するものなり。ムハンマドアッラー下僕しもべであり、使徒たることを我は証言するものなり。預言者とそのご家族、ご教友にアッラーの格別の祝福と平安のあらんことを。

【信徒の者よ、アッラーを畏れ奉れ。いかなることあろうと、ムスリムでなきままに死ぬことなかれ】(イムラーン家章:102節)

【信徒の者よ、アッラーを畏れよ。そして正しきことを語れ。さすれば汝らの(曲がったところ)は直して下さるし、罪も赦して下さろう。アッラーと使徒に従いし者は、大いなる勝利へと至る】(部族同盟章:70-71節)

以下、かくのごとく。

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カリフとはもともと預言者ムハンマド亡きあとのイスラム共同体(ウンマ)、またはイスラムの国家における最高権威、指導者の称号。バグダディは、自ら一方的に「カリフ」を名乗り、指導者となったなどとしている。イラク政府や多くのイスラム学者は、過激武装組織の指導者のこの「カリフ宣言」に正統性や宗教的根拠はない、としている。バグダディはコーランの言葉を引用し、ジハードを呼びかけているが、ISは住民殺戮や他宗派、他宗教の迫害も繰り返す組織である。
 
 
 
 

アッラーの啓典こそ至高の真実の御言葉。最良のお導きこそムハンマド(祝福と平安あれ)のお導き。邪悪の極みとは、あらたに作られし雑事。あらたに作られしものは逸脱をもたらし、地獄の業火に至る。 

信徒の者よ、断食も汝らの守らねばならぬ規律。前の時代の人びとと同じように。(この規律をよく守れば)きっとお前たちにも本当に神を畏れかしこむ気持ちが出来てこよう。この勤めは限られた日数のあいだ守れ(牝牛章:183 - 184節)

アッラーはかく仰せになった。
コーランが、人びとのため(神からの)お導きとして、またお導きの明らかなしるしとして、また善悪の識別として啓示された(神聖な)ラマダン月(こそ断食の月)。されば汝ら、誰でもラマダン月に家におる者は断食せよ】(牝牛章:185節)

ムスリムたちよ。ラマダン月に至るのは大いなる祝福。崇高なるアッラーの大いなる恩寵。この月、慈悲のもとに始まる。その期中はお赦しが、そして終わりの際は地獄の業火からの解放がある。この月、断食をなした者は報われよう。誠実に夜を越えて祈った者は報われ、過去の罪は赦されよう。

アブ・フライラ(アッラーよ、彼を嘉し給え)はかく伝えている。
アッラーの使徒(祝福と平安あれ)はこう仰せになった。
【誠実に断食をなした者は報われ、過去の一切の罪は赦されよう】
【誠実に夜を越えて祈った者は報われ、過去の罪は赦されよう】

この月を迎えたとき、天国への門が開かれ、地獄への門は閉ざされ、悪魔は封じられよう。ラマダンは、千の月にまさる一夜のある月。その月を経ない者は、一切の善を経ることはない。

【定めの夜こそ千の月にもまさるもの。この夜、天使たちと聖霊、御主のお許しを得て、神勅を伝えに降臨したまう。その平安、夜明けに至るまで】(定め章:3-5節)

その月、毎夜、アッラーはの下僕しもべたちを地獄の業火から解き放つ。その月、ジハードの市場が開かれる。ゆえに預言者(平安と祝福あれ)は戦団の隊伍をお整えになる。アッラーの敵と戦うために。そして、多神偶像崇拝者へのジハードを成すために。ゆえに、この聖月の時をとらえよ。アッラーに従うのだ、下僕しもべたちよ。この月にはその報奨は何倍にもなろう。

【これを願う者、そのつもりで大いに願い求めるがよい】(量りをごまかす人章:26節)

ムスリムたちよ。祝福されし崇高なる御方、アッラーが我らをお創りになった。一神教を実践し、御方を崇拝し、アッラーの宗教を建設するために。

崇高なるアッラーはかく仰せになった。
【我が妖霊や人間を創ったのは、我に仕えさせるため】(吹き散らす風章:56節)

そして祝福されし崇高なる御方はかく我々にお命じになった。諸敵と戦い、アッラーの大道にてジハードをなし、この宗教を打ち立てよということを。

崇高なるアッラーはこう仰せになった。
【戦うことは汝らに課されたる義務。たとえいやたろうとも】(牝牛章:216節)

崇高なるアッラーはこうも仰せになっている。
【迫害がなくなるまで、そして宗教がすべてアッラーに帰一するまで彼らと戦い続けよ】(戦利品章:39節)

おお、民衆たちよ、まこと祝福されし崇高なる御方、アッラーの宗教を打ち立てることだけではない。アッラーの御法の統治と司法、ハッド刑訳註:コーランが規定する身体罰を含む刑罰)を導入せずしてそれは語れない。それは威力と権力なしには成せぬこと。

アッラーはこう仰せになった。
【こうして我らは何人も使徒を遣わし、れっきとした神兆を届けさせ、また彼らに啓典を下し、(正邪の基準たる)秤を下した。人間が公正を持していくことができるように。鉄も授けた。これには凄まじき力があり、使いようでは人間に役立つ。まことアッラーは見えぬことなき御自分や使徒たちの味方をするのは誰かをおわかりになる。まことアッラーは威力に満ちた御方】(鉄章:25節)

かくてこれぞ御教みおしえの根幹。導きを与えしものは啓典、支えしものは剣。

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アグ・バクル・バグダディは、本名・イブラヒム・アワッド・イブラヒム・アル・バドリ。1971年、イラク・サマラ出身とされる。2004年には米軍に対する武装闘争などの容疑で拘束され、米軍イラク・キャンプ・ブッカに収容されている。

今回の「カリフ」宣言のなかで、「誤っていると私を見るなら助言を」と謙虚な姿勢を装っているが、殺戮を繰り返す組織とその指導者に意義を唱えることのできる者などいないのが実態である。

まこと諸君ら、ジハード戦士の兄弟同胞たちは崇高なるアッラーによって勝利のもとに祝福された。長きジハードの苦難ののちに確固たる力の祝福が与えられ、アッラーの敵と戦っている。

アッラーは彼らをお導きになり、目的を果たすべく威力をお授けになった。ゆえに、彼らはカリフ制を宣するために馳せ参じ、私を教導者として任じたのだ。これはムスリムの義務である。地上から消し去られ幾世紀も忘れ去られてきた義務なのだ。多くのムスリムがこれに無関心で、(カリフを)棄て去ったことは罪深きことである。

カリフ制を打ち立てることは、つねに(ムスリムの)義務なりしこと。かくしていま、彼らは(カリフ制を)打ち立てたのだ。アッラーを称え、その祝福を授けられよ。

そして、私がその重責を担うこととなった。私がその信頼を託された。この重き信頼を託されたのだ。私は諸君らのワリー(指導者)に任じられた。私が最良ではないだろうし、皆より秀でているわけではない。

ゆえに、信頼がおけると私を見るならば私を支えてほしい。もし誤っていると私を見るならば助言を請いたい。諸君のことに関し、私がアッラーに従うものであるかぎり、私に従ってほしい。もし私がアッラーに背くなら、私は諸君にいかなる力も持ち得ない。

王や支配者はその従者たちに贅沢や厚遇や安穏や享楽を約束したが、私は諸君にそのような約束をしない。私が諸君になす約束とは、祝福されし崇高なるアッラーがその下僕しもべたちになさったことである。

アッラーがお約束なさった。お前たちのうち、信仰に入って正しい行ないに励む者は必ず地上の継承者としてやろうぞ、継承者を立てて来た例にならって、と。そしてまたそういう者どものために、特にその嘉し給うた彼らの宗教をゆるぎない基礎の上に据え、今まで散々怖い目に遭ってきたかわり、今度こそ安心を授けてやろうぞ、と。「あの者どもは我を崇め、我のほかは何者をも拝んではおらぬ」それでもなお不信仰になる者あれば、それこそ御主の掟に背く者】(光章:55節)

崇高なるアッラーはこうも仰せになった。
【汝ら、弱気になってはならぬ、悲しんでもならぬ。まことの信仰者ならば、きっと汝らの方が勝るときが来る】(イムラーン家章:139節)

崇高なるアッラーはこうも仰せになった。
【もしアッラーがお助けくださるなら、もう誰ひとりとして汝らを打ち負かす者はいない】(イムラーン家章:160節)

崇高なるアッラーはこうも仰せになった。
【信徒を助けて勝利に導くことは我の本分】ギリシア人章:47節)

崇高なるアッラーはこうも仰せになった。
【本当に有力なのはアッラーと使徒と信徒たちなのに、偽信者どもはそれに気づかない】(偽信者ども章:8節)

これぞアッラーのお約束である。アッラーのお約束を成就させたくば、アッラーを畏れ、アッラーに従うのだ。偉大なるアッラーに従え、そのいかなる事にも、いかなる状況でも。真理を求め、真理を掲げ護れ。諸君が好むと好まざるにかかわらず。

アッラーのお約束を成就させたくば、アッラーの大道でジハードをなせ。信徒たちを奮闘させるのだ。苦難に耐えるのだ。

諸君がジハードの本分、すなわちその報奨、名誉、高潔、威力の何たるかを知るならば、現世と来世において、この傍観者となったり他事とする者などおらず、ジハードを棄て去る者などいないのだ。これはアッラーがお導きになった我らとの契り。

御方(アッラー)は、屈辱から民衆をお救いになった。現世と来世の名誉をお授けになったのである。これぞ諸君がアッラーとその使徒を信ずることであり、アッラーの大道に生命と財産をなげうって奮闘すること。知るべくは、これぞ諸君の最良なりしものということ。

【さすれば御方(アッラー)は諸君の罪をお赦しになるだろう。河水流れる楽園に入らせ、アドン(エデン)の園の住居を下さろう。これぞ大いなる勝利。いやもっとほかにも諸君の願いが遂げられよう。アッラーからの勝利と速やかなる征服。さあ、この吉報を信徒たちに伝えるがよい】(戦列章:11-13節)

まずはここまでとし、私自身と諸君のために、アッラーからのお赦しを請う。御方(アッラー)の応報を信じ、アッラーに祈るのだ。

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まこと、アッラーにすべての称讃あれ。最後の預言者、そのご家族、ご教友、従僕、兵士、審判の日に従う従者に祝福と平安あれ。アッラーのほかに神はなし、並びなき御方。御方(アッラー)は、そのお約束を成就なされ、ご自身の兵士をお助けになる。ただそれだけで(敵の)徒党を打ち負かす。

アッラーのほかに神はなし、並びなき御方。たとえ不信仰者が拒もうと、我ら、御教みおしえに従い誠実に服従するものなり。アッラー下僕しもべたちよ。諸君の宗教を打ち立てよ。アッラーを畏れ奉れ。

アッラーは、諸君の名誉を、現世と来世でお授けになる。もし平安を望むなら、アッラーを畏れよ。その恩恵を頂きたくば、アッラーを畏れよ。高貴なる人生を望むならば、アッラーを畏れよ。そしてアッラーの大道、ジハードに奮闘せよ。

玉座におられる偉大なるアッラーに請うのは、諸君の言葉をおまとめになること。諸君の間柄をとりなし、(アッラーが)好まれ、お受け入れになる最良のものへと諸君をお導きになること。

おお、アッラーよ、イスラムとその信徒に、お力をお授けください。多神偶像崇拝者とその輩徒には屈辱をなしたまえ。この地上の東西くまなく、あなたの下僕しもべ、すなわち、唯一神を信ずるジハード戦士たちをお支えください。

おお、アッラーよ、彼らの足場を堅固にし、勇猛の心で満たし、支えとなってご助力ください。アッラーよ、彼らが定める狙いを導き、彼らの考えを正したまえ。アッラーよ、彼らが正しく行く先をご用意ください。彼らの良きお支えとおなりください。

アッラーよ、あなたの御教みおしえを我らの心に確固とお繋ぎください。アッラーよ、幾多の心があなたに従うべく変え導きたまえ。アッラーよ、我らの心を偽善と見せかけの行ないから清めたまえ。我らから嘘を取り除き、裏切りから目を背けさせたまえ。アッラーよ、我らは請います、真なる信仰を、謙虚なる心を、認められし行ないを。アッラーよ、我らが請い求めるのは、お赦しと健栄、現世と来世で続く健やかなる姿。

アッラーよ、我らのこの集まりに慈悲の祝福をお与えください。こののち、我らの同胞に祝福と潔白をお与えください。アッラーよ、我らの誰ひとりとして、悲惨と剥奪がふりかからぬようなしたまえ。我らの最後の願いこそ万有の御主、アッラーへの称讃。我らの預言者ムハンマドアッラーの祝福と平安あれ。

では礼拝を呼びかける。
(※映像ではここで説教を終え、礼拝をする)
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【万有の御主、アッラーに称讃あれ。慈悲深く、慈愛あまねく御方。審判の日の主宰者。我らはあなたをこそ崇め、あなたにこそ助け請う。我らを導き、正しき道をたどらしめ給え。あなたのお怒りをこうむる者や踏み迷うの者の道ではなくあなたの嘉し給う者の道を歩ましめ給え】(開闢章)

アッラーと預言者に従え さすればお慈悲が授けられよう。競って御主のお赦しを手に入れるために努めよ。御主を畏れる者のために準備された、あの天地ほどの広さの楽園に入るために。順境であっても逆境にあっても、(御主の贈り物を施しに)使う者、怒りを抑え、寛容なる者たちのこと、アッラーは善をなす者を好み給う。また醜行や過失をなしたとき、アッラーを念じ、罪の赦しを請う者、アッラーのほかに誰が罪を赦すだろう」(と祈る者)、またその罪を故意に繰り返させぬ者。これらの者への報奨とは御主からのお赦し。そして、河の流れる楽園で永久に住むことができよう。奮闘努力する者への報奨、なんと素晴らしきことか】(イムラーン家章:132 - 136節) 

アッラーは偉大なり。
称讃する者をアッラーはお聞きになる。

1435年 ラマダン月6日(ヒジュラ暦
(※西暦では 2014年7月4日)

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