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イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

ROJ-TV (ロジテレビ) 衛星回線停止されるも再開への試み続く

◆クルド関連

 ◆バックアップ放送立ち上げ放送継続の試み
デンマークでのロジテレビ閉鎖をめぐる裁判では、放送免許剥奪とはならなかったものの、結果としてロジテレビは放送停止へ追い込まれることになった。 1月19日、衛星回線を提供していたEutelsat(ユーテルサット)社が、自社衛星でのロジテレビの送信を停止すると発表したからである。

デンマークとトルコ政府、そしてNATOやアメリカまで巻き込んで大騒ぎした裁判とは何だったのか。衛星会社の決定というだけで、あまりにあっけなくロジテレビの衛星送信の道が閉ざされてしまうことになった。 デンマークはこれをシナリオに入れていたから、政府による閉鎖措置という言論介入につながる決断をしなかったのかもしれないとも思えてくる。

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衛星送信会社による送信停止措置を伝えるROJ-TV(ロジテレビ)の番組

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ロジテレビ終了にあわせて新しく移行するNuçe TV(ヌーチェテレビ)。今後の閉鎖措置の辞退に備え、他にもいくつかバックアップ局を準備している。

ユーテルサット社以外にもナイルサットでも回線契約をしていたが、放送できるエリアも受信アンテナ帯域も異なる。結局、これまでの視聴者は受信できなるため放送は終了へと追い込まれた。ユーテルサット社の発表後、ロジテレビでは、「クルドの声を消させない」とする大きなキャンペーンをはって支援を呼びかけた。

一方で、ロジテレビは閉鎖問題を予見し、事前にバックアップ放送回線を準備していた。 ロジテレビの前身、メッドテレビがイギリスで放送免許を剥奪されたときも、別の名前で登録していたクルド音楽専門チャンネルに切り替え、ニュース番組を放送し続けた。

衛星の回線契約料は莫大にかかるが、彼らはそれを「保険」として常に準備してきた。世界が支援してくれない現実の中で、自分たちが生き残るすべは自分たちで勝ち取らなければならないことを彼らは歴史から学んできた。 万が一、放送免許が剥奪されても、別の名前の放送局名で番組を継続する。

じつはこうしたテクニックは、トルコの様々な政党が裁判で閉鎖措置を命じられるたびに、事前に準備してきたバックアップ政党に名前を変えて活動を続けてきたのと似ているともいえる。 クルド系政党の平和民主党(BDP)も、これまでHEP、DEP、HADEP、DEHAP、DTPなど裁判所から閉鎖命令が出されるたびに名前を変えてきた。現在の与党の公正発展党(AKP)でさえ、軍部の圧力で閉鎖措置を下されて、福祉党、美徳党などがバックアップとして準備していた政党である。

民族と言語の権利か「テロ問題」かをめぐって注目されたロジテレビ閉鎖裁判だが、「結果的には名前を変えて放送するのであれば同じこと」というものではない。 ロジテレビはトルコ政府が望んだような放送免許取り消しにはいたらなかったものの、トルコ政府にとってはデンマークが何らかの司法的手続きをとったこと自体がひとつの「成果」であるとも言える。

ロジテレビはこうしたことを見越して、別のバックアップ局はすでに試験放送を開始している。 新しい放送は、STERK-TV(ステルクテレビ)、Nuçe TV(ヌーチェテレビ)という2つのバックアップ態勢がとられている。 自分たちの前に立ちはだかる困難には、自分たちの手でしか立ち向かえないことを彼らは身をもって知っているのだ。

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