イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

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クルド衛星放送ROJ-TV(ロジテレビ)裁判から見えてくるもの(3)◆「PKKの宣伝装置」とトルコ政府

 ◆「PKKの宣伝装置」とトルコ政府
メッドテレビ、そしてロジテレビの番組にはPKKゲリラを称えるものが多いのは事実だ。ニュース番組では、トルコ軍と衝突するゲリラ部隊の映像やオジャラン議長の声明なども取り上げられてきた。またPKK以外の政治組織を番組に出すことはほとんどない。

f:id:ronahi:20160225122807j:plainメッドテレビでニュースキャスターを務めていたザナ・セリン氏。トルコで生まれたが、幼い頃に家族がスウェーデンに移民。故郷の人びとのために何かしたい、とニュースキャスターになった。

f:id:ronahi:20160225122815j:plainトルコ軍と戦闘を繰り広げるPKKゲリラについて報じるロジテレビ。「クルドの立場から伝える」とするロジテレビだが、「テロ組織の宣伝をしている」とトルコは問題視してきた。

f:id:ronahi:20160225122821j:plainPKKのオジャラン議長。獄中からの声明を伝えることも「テロ組織と関与」とみなされた。

以前、メッドテレビのメインキャスターだったザナ・セリン氏にPKKを放送でどう扱うのか、とベルギーのスタジオで訊いたことがある。彼はこの問いに、こう答えている。

ベルギーのテレビ局のジャーナリストがここに来たことがあります。彼は、私が客観的立場なのかどうかと問いました。私は問い返したのですが、第2次世界大戦の際、ドイツ軍の戦車がこの国にやってきたとき、ベルギーのジャーナリストはどれほど客観的だったでしょうか。自分の国がよその勢力や他国に占領されている状況で、どれほどのジャーナリストが公平で客観的たりえるでしょうか。ゆえに客観的であることは難しいことですが、ベストを尽くすよう心がけています」

いまでこそイラク系、イラン系のクルド語衛星放送がいくつも登場したが、3000万人以上の人口がいるクルド人が自身の言葉で伝える放送局が17年前まで存在しなかったのだ。

世界初のクルド衛星放送として登場したメッドテレビ、そしてそれを受け継いだロジテレビのいずれもが、クルディスタンという国がないゆえにヨーロッパという遠くの彼方から電波を送るすべを自分たちで見つけださなければならなかった。

放送免許を取得するためにヨーロッパ諸国で登記先を転々とし、その先々で閉鎖や免許剥奪にさらされた。その姿は、故郷を失って離散、流浪し、世界から見放されてきたクルド人の姿に重なって見えた。 衛星放送局を開設できたのは、PKKの強力な組織力があったからというのは間違いない。

トルコ南東部の山岳地帯や農村部のゲリラ闘争だけでなく、ヨーロッパに暮らす百万人を超えるクルド移民も組織した点は、他のどのクルド組織もなしえなかったことだ。PKKは政治組織だけでなく、ヨーロッパに生活互助機関や文化組織などをいくつも構築した。クルド移民や難民たちの生活相談、就職斡旋もした。扶助的な支援のネットワークのなかでPKKとその傘下の機関は急速に拡大していった。(つづく >>
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