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イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

【動画・日本語訳】ロシア・プーチン大統領2017新年メッセージ

◆各国・各組織声明文 ◆IS関連

◆勝てる気がしないよ、ウラジミール
昨年末、来日したプーチン大統領。日本・ロシアの双方にそれぞれ思惑はあるし、安倍首相が交渉の目指す先を領土問題進展とするのか、平和条約締結にするのかをとってもこの会談の評価は分かれるだろう。

【動画・日本語訳】プーチン大統領 新年メッセージ2017(ロシア国歌つき) 
(8分19秒)一部意訳・転載禁止

領土についてなら、戦争や天変地異やロシア経済破綻でもない限り、将来、2島は返還はあっても4島全部は難しいだろうなと、日本人はきっとみんな思ってる。もし4島が日本領土になったとして、こんどはそこで生まれ育ったロシア人はどうするのか、までどれほど考えているだろう。

かつて声高に北方領土返還を叫んでいた右翼でさえ、4島全部が戻るなんて思ってないのでは。4島をあわせると竹島の何十倍もの面積があるはずなのだが、ネトウヨは韓国に対して見せる必死さをロシアに向けないし、「プーチンさんかっこいい」的な印象まであったりする。力とイメージで勝利している「おそロシアプーチンである。

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「ウラジミール」とファーストネームで呼んで親密さをアピールした安倍首相。プーチンの側からはシンゾーとはあまり言ってもらえなかったようだし、安倍首相の2歳年上であるプーチンを「君」と何度も呼んだのも、相手にはどう受け取られたか…。(ロシア大統領府写真)

他方、日本の市民運動は、アメリカがイラク攻撃で一般市民を殺害したら大きな声をあげたのに、シリアでロシア軍が空爆して多数の住民が犠牲となっても、アメリカに対するほどの声も上がらないし、大規模なプーチン糾弾デモも起きない。 

領土の価値や人間の命の重さも、政治の都合やイメージや主義主張のもとに変わってしまうという不条理。そんな思いを抱きながら、このプーチン大統領の新年メッセージと、最後に流れるロシア国歌を聴いた。

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以前、NHKの番組制作でロシア取材したときに訪れた小学校の壁に貼ってあったプーチンとロシア国歌。小学生も悪いことができない感がハンパない。(撮影・坂本)

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シリア・アレッポに展開したロシア軍部隊。(ロシア国防省公表写真)

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アレッポでは、反体制諸派と政府軍の激しい戦いが続いてきた。クルド・人民防衛隊(YPG)の地区を除いて、武装各派は一応、アレッポから退去し、昨年12月、アサド政権が「奪還」を宣言。シリア政府軍とともにロシア軍部隊も市内で活動。(ロシア国防省写真)

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戦闘で破壊しつくされたアレッポを走るロシア軍。(ロシア国防省写真)

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アレッポでは治安任務や地雷・不発弾の撤去などに任務にもあたる。(ロシア国防省写真)

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住民に手厚く接する兵士の姿を伝えるロシア軍公表の写真。(ロシア国防省写真)

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かつて美しさを誇ったアレッポには瓦礫が広がる。命を落としたり、難民となって国外に脱出したりと、内戦は住民にも町にも大きな惨禍をもたらした。(ロシア国防省写真)

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イスラム国(IS)や、その他の武装諸派に対する空爆作戦はいまも続けている。ロシアの空爆は、敵の軍事拠点があると判断すれば、近くに住民が多数いても、周辺ごと爆撃することも厭わないことが多い。国際社会も責任を問わないなか、誤爆や住民犠牲はあいついでいる。(ロシア国防省映像)

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ISメディアは、ロシア軍の空爆被害について、住民が殺されていると繰り返し伝え、「ロシアも攻撃対象とせよ」などと呼びかけている。(IS系アマーク通信映像)

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劣勢にあるといわれるISだが、昨年12月には一度シリア政府軍に奪還されたホムス・タドムル(パルミラ)で攻勢をかけ、再び制圧した。ISメディアは制圧後のロシア軍基地の映像を伝えている。背後にファフルディーン城がそびえる。(IS系アマーク通信映像)

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ロシア軍部隊がいた基地。昨年3月、シリア政府軍・ロシア軍部隊はISをパルミラから駆逐したが、再度、奪い返される結果となった。(IS系アマーク通信映像)

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制圧した基地から大量の武器・弾薬を奪うIS戦闘員。でも、プーチン怒らせたら怖いと思う。(IS系アマーク通信映像)

◆IS・イラク・シリア・クルド情勢の
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【動画・日本語訳】ドイツ・メルケル首相2017新年メッセージ 「ともに強くテロに立ち向かう」

◆各国・各組織声明文 ◆IS関連

◆難民政策と過激主義事件で揺れたドイツ
2016年を振り返ったドイツのメルケル首相のメッセージ。冒頭ではドイツ国内であいついだイスラム過激主義による襲撃事件について触れた。「イスラム主義テロリズム」という言葉も出てくる。

【動画1】メルケル首相 新年メッセージ2017 【ともに強くテロに立ち向かう】
(7分09秒)一部意訳・転載禁止

メルケル首相の2015年末のメッセージでは「ISのテロリズム」としたが、「イスラム」の言葉は用いなかった。イスラムを名乗る一部の過激主義者と、一般のイスラム教徒を区別し、イスラムへの偏見を広めないという意図もあったと思われる。

1年前のメッセージと比べてみよう。この時は「イスラム」は使っていない。

【動画2】メルケル首相 新年メッセージ2016 【難民の流入は 『明日のチャンス』】
(6分32秒)一部意訳・転載禁止

2016年はフランスやベルギーに続き、ドイツ国内でも襲撃事件があいついだ。政府や警察は事件の公表に慎重で、「ISの過激主義を背景としたテロ」と安易に結び付けないようにした。保守層からはこれに対する反発の声も出た。新年メッセージでの言葉の変化は、苦悩するドイツの実情を示しているかのようだ。

オバマ政権も「イスラム・テロ」を安易に使うのを避けてきた。そして「イスラム教徒こそが、過激主義テロを阻止する目となり耳となってくれる」としてきた。

一方、トランプは早いうちから「過激イスラム・テロ」の言葉を使い、オバマ大統領やクリントンがテロの実態を隠蔽しようとしている、と批判している。

【動画3】トランプ氏、最初の選挙メッセージ(2016年1月)(30秒)一部意訳・転載禁止

トランプが大統領選挙キャンペーンで最初に制作した広報映像。「過激イスラムテロ」「ISの首を切り落とす」「イスラム教徒の一時入国禁止」などインパクトのある言葉が並ぶ。最後に出てくるメキシコから越境しているような映像がモロッコにあるスペインの飛び地で撮影された別のものとの指摘も出た。その後、この映像は公式サイトでは見られなくなったが、トランプの考え方自体は変わっていないだろう。

ドイツでは今年、連邦議会選挙が予定されている。メルケル政権の難民政策とIS問題の対応への不満や反発を取り込むかたちで右派政党が票を伸ばす可能性もある。メルケル首相の新年メッセージは、イスラム過激主義と難民問題で揺れるドイツの姿を映し出している。一方、アレッポの悲劇に触れ、ドイツが難民を庇護し、受け入れたことは正しいことだったとし、テロリズムと難民問題を混同させないよう分けている点も押さえておきたい。

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2016年に起きた事件。イスラム過激主義やISとの関係が不明なものも含まれる。当局も事件の発表では過激主義との関連付けには慎重だった。ほかにも6月にイタリア系ドイツ人が映画館に立てこもり警察に射殺された事件があったが、警察は過激主義とは無関係としている。ドイツの庇護政策によって助けられた難民がいる一方、あいつぐ事件のなかで、政府の難民政策への反発が広がったのも事実だ。

◆IS・イラク・シリア・クルド情勢の
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【IS声明】トルコ・イスタンブール・ナイトクラブ襲撃事件・イスラム国(IS)声明(全文)

◆トルコを明確に「攻撃対象」と規定
1月1日、トルコ・イスタンブールで、ナイトクラブを狙った武装襲撃事件が発生し、39名が死亡、70名以上が負傷した。事件後、武装組織イスラム国(IS)は攻撃を認める声明を公表。事件は「バグダディ指導者の呼びかけに応えたもの」などとした。以下、声明全文。(一部意訳)

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声明は、1月2日付で出されている。トルコではIS関連とされる襲撃事件があいついでいるが、ISが明確にこの声明文の書式を使って「公式声明」として攻撃を認めたのは、これが初めてではないだろうか。(記憶違いだったらすみません) 米オーランドやドイツ・ベルリンでの事件ではISは襲撃への関与は認めたものの、こうした「公式声明」が出ていない。一方、パリベルギーでの襲撃事件では組織としての声明が出ており、同等の位置づけをしているとも推測される。画像はアラビア語の声明文。

イスタンブールのナイトクラブにおいて
偶像崇拝キリスト教祝祭で150名を殺傷

トルコ:1438年ラビゥラヒール月3日ヒジュラ暦 

十字架の守護者、トルコに対してイスラム国による祝福されし作戦が継続するなか、カリフ国の英雄的戦士のひとりが、キリスト教徒がその偶像崇拝祝祭を祝う最も有名なナイトクラブのひとつを攻撃し、手榴弾自動小銃によって150名を死傷させ、彼らの喜びを、悲嘆へと変えた。

作戦は全能のアッラーの宗教による報復としてなされたものであり、十字架の下僕たるトルコへの攻撃を呼びかけた信徒の長訳註:アブ・バクル・バグダディを指す)に応えてなされたものである。成功と恩寵をなしたアッラーに称讃あれ。

戦闘機と砲弾の爆撃によって流されるムスリムの血は、その故国(=トルコ)の心臓部を、アッラーの御許のもとに焼き尽くすものとなるのだと、トルコ背教政府に知らしめよ。 

アッラーはご自分の思うところに十分な力をお持ちになられる。だが人びとの多くはこれを知らない。訳註:コーラン:ユースフ章:21節)

万有の御主、アッラーに称讃あれ。

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これはトルコ語の声明文。これまでトルコではアンカラ・クルド系デモを狙った自爆攻撃(2015年10月・死者100名以上)やイスタンブール・アタチュルク空港襲撃(2016年6月・死者48名・実行犯含む)など、今回の事件よりも多くの犠牲者が出る事件が起きている。トルコ政府はISによるものと見ているが、IS側は沈黙してきた。今回、イスタンブール襲撃事件で明確に犯行声明を出し、トルコを攻撃対象と宣言としたことは、ひとつの転換点でもあるといえる。今後、トルコや関連機関を狙った攻撃が国内外でさらに増えることも懸念される。

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襲撃事件があったのは、イスタンブールボスポラス海峡に面する富裕層の多い地域。ここで新年を祝うためにクラブに集まっていた客が狙われた。襲撃で犠牲となったのは、トルコ人12人のほか、サウジ7人、イラクレバノン3人や、モロッコ、インド、ヨルダンなど様々な国籍に及んだ。高級クラブが多数ある場所で、事前に目標を選定していたことが伺える。画像は事件を伝えるトルコ紙が掲載したクラブ・レイナ。

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地元メディアが報じた実行犯の写真。入り口で警官を殺害し、建物内で客らに次々と発砲した。AK-47自動小銃から180発を発砲して逃走したと報じられているので、予備弾倉も複数準備した上で襲撃している。現場で銃を乱射したのは単独とされるが、武器の準備、実行から逃亡・潜伏先の確保など複数の協力者がいたのではないか。

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事件後、地元警察は容疑者とされる男の写真を公開。キルギス人、またはウズベク人、またはこれらの国籍を保有するウイグル人の可能性などメディア情報は錯綜。一斉捜索で十数人が事件関連容疑で拘束された。警察当局は1月9日、ウズベキスタン国籍のアブドルガディル・マシャリポフと特定。

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ISはこれまでにも機関誌や宣伝映像を通じてトルコやエルドアン政権を繰り返して批判してきた。だが、襲撃事件はあいついだものの、事件で「公式声明」は出されなかった。画像はISがトルコ語で発行してきた機関誌コンスタンティニイェ。現在は、各言語で出される機関誌ルミーヤ(Rumiyah)のトルコ語版に統一されたようで、コンスタンティニイェ誌は第7号(2016年8月発行)までで休止している。(画像はコンスタンティニイェ誌・第4号と第5号) ISによるトルコとエルドアン政権への批判については過去記事のIS動画参照>>

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今回のイスタンブール襲撃声明で言及された「信徒の長、バグダディの呼びかけ」は、昨年11月に出されたバグダディ声明と思われる。声明ではエルドアン大統領を写真入りで掲載、トルコ攻撃を呼びかけた。バグダディ声明・日本語訳全文>> 

◆IS・イラク・シリア・クルド情勢の
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【IS声明・日本語訳】イスラム国(IS)広報官アブル・ハサン・ムハジール「いまにきっとわが言葉を思い出すときが来よう」(全文)【2】後編

◆IS関連 ◆各国・各組織声明文

◆「トルコ攻撃」呼びかけ【声明後編】
イスラム国(IS)が公開したアブル・ハサン・アル・ムハジール広報官の音声声明の後編。今回の声明では、シリア北部アル・バブでIS地域に攻勢をかけるトルコ軍について触れ、エルドアン政権を背教政府と激しく非難。「あらゆる方法で攻撃せよ」などと呼びかけている。トルコ国内・国外で関連施設、要人などを標的とする襲撃事件が起きる可能性が今後、さらに高まることが予想される。以下、声明後編。(おもに英語版をもとに訳出・一部意訳)声明前編(1)はこちら

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イスラム国 アブル・ハサン・アル・ムハジール 広報官声明
<< 前編 「いまにきっとわが言葉を思い出すときが来よう」(後編)

おお、アル・バブとその近郊で戦う殉教の騎士たちよ、ジハードの獅子たちよ!

アッラーが諸君の顔を照らし、そのよき奮闘とそして、トルコ人の背教徒やサハワども(=スンニ派武装諸組織)、クルド人ども、ヌサイリ(=アサド政権アラウィ派)の一味に与えた屈辱に、アッラーからの報奨があらんことを。これらは諸君の勇猛と、宗教のために名誉と不屈の意志をもって己れの身を捧げる責務からなされたもの。

かくして、忍耐強くあれ、敵を釘付けにせよ。そしてアッラーを畏れよ。さすれば奏功することとなろう。まこと、トルコの背教徒は、唯一神信仰者を殺戮した者たちの今代の末裔であり、その先人どもがなしてきたことを繰り返しているのである。あの者どもはムスリムの国家と、ムスリムの民の地に攻撃を加えた。

ゆえに、諸君の宗教と一神教の報復を成し遂げよ。諸君が戦う相手は、力ある者たちではない。むしろ、その相手は、壁の隅に逃げ隠れする黒影。かくして、諸君はあやつらに対する反撃戦に一途となれ。あの者どもを包囲せよ。見つけ次第、殺せ。どの空の下にあろうと、あらゆる方途をもって追いたて立ち向かえ。

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IS週刊機関誌アン・ナバアに掲載されたトルコ批判の画像。トルコ軍がシリアに越境し、ISと交戦するようになって以降、とくにトルコ攻撃を呼びかける記事や画像が増えた。

 

まこと、トルコの背教徒の兄弟(訳注:エルドアン大統領への暗喩)とその政府は、己れの安全を得んがために、十字軍ヨーロッパの門前で跪いているのだ。

おお、各地の熱情満ちたるムスリムよ!おお、誠実なる唯一神信仰者たちよ!ワラーゥ・バラァの民よ!(訳註:ワラーゥ・バラァ=信仰忠誠と、その敵に対する姿勢を持つこと) 

アッラーの宗教に対する戦争を仕掛け、その御光を消し去るために、この憎むべき者はこの地に分け入り、シリアにおいて恥ずべきサハワの屑どもの一群をかき集めた。 

彼(=エルドアン)は、住民のいる家々の頭上に容赦なく爆弾を落とし、破壊し、その手をムスリムの血で染めて、あの者どもの宗教(キリスト教)と神聖性に光を灯したのである。

よって、我々は真摯なるすべての唯一神信仰者たちに、背教世俗主義のトルコ国家を支える機関をあらゆる場所で標的にせよと呼びかける。そこにはなにより世界各地でトルコを代表する大使館、領事館に加え、治安、軍、経済、メディア機関が含まれる。 

唯一神を信ずるジハード戦士よ、さて、知れ。あの者どもがなす悪事、不信仰、罪業の最たるものが、逸脱に朽ちたイスラム学者、不信仰者の召請者、下劣と堕落に満ちたおさどもが吠え犬のごときに喚き散らす言葉の数々。これらの者は、その「法学」評議会、宗教令会合、メディアの番組、さらには個人アカウントや討論フォーラムの場で、あらゆる方途をもって多神崇拝の政党と背教国家を支持したる者たちである。あやつらの名は汚れ、その居場所は暴かれ、綱領は悪名に満ちている。専制不信仰の統治に、承認を与えた輩である。 

逸脱に堕ちておきながら、彼(=エルドアン)の大統領の地位を宣伝し、歓喜した。あの者どもは、各地から彼のもとに参集し、満天下にさらした背教と不信仰を公然と宣した彼を祝福したのである。あの者どもは、彼の地(=トルコ)を軍事作戦の出撃地とし、不名誉と無知の庇護地にした。お導きのしるしをその手で汚し、栄光のうちに残った者を不信仰者の面前で殺したのである。その手と同胞観は、いかに悪にまみれていることか。あの者どもは、不信仰者を引き入れ、矮小雑事へと転化した。偉大なる宗教を棄損し、その姿かたちを変えた。

かようにして虚偽は増大し、新たな深謀が拡散し、欲望が崇拝されることとなった。いかに悪が崇拝の対象となりしことか!称賛されるべきが非難されるべきものと区別できず、非難されるべきが称賛されるべきものと区別できぬごとくとなっていた。最悪の災厄と下劣の極みは、これらの者どもが指導者となり、民衆を闇へといざなったことであった。 

あの者どもは、ただ臆病であり、アッラーよりも民衆に怯え、傲慢で、名声、功名心や威信を追い求め、虚栄心に焦がれ、現世に執着めぐらす存在なのだ。あの者どもは、腐敗と虐待を深化させ、まったきの真理を埋め隠し、邪悪を拡散させた。計り知れぬほどにあまた言い及ぶべきことがある。アッラーよ、あの者どもの空疎なる魂、雇われの髭、惑わす舌に害をなしたまえ。

水兵のいない船は風に流され、カエルたちが乗っ取る;
それを封じ、あるいはその鼻を切り落とし、阻む方途はあるか? 

その者の民の最たるものがバラアム・イブン・バウラであり、ムサイリマの者どもの最たるものがラッジャル・ブン・ウンフワである。
訳註:バアラム・イブン・バウラは「イスラエルの子孫の者」とされる男。ムサイリマは偽預言者で、ラッジャル・ブン・ウンフワはその軍勢を率いた指揮官のうちのひとり)

 今日、不徳の学者ども、これらがイスラムとその民にとって害悪をなしている。はるかに諸君らが思う以上にである。アッラーの御許のもと、この者どもの頭が叩き割られる時が来た。その魂を絞め殺し、舌を切り落とす時が到来したのだ!

イヤド・アル・ヤスビは著作、タルティブ・アル・マダーリク・ワ・タクリーブ・アル・マサーリクでこう述べている。「アブ・バクル・イスマイル・イブン・イスハクが、偽ファーティマ朝、バニ・ウバイドの説教師について問われた。彼はこう言われた。『彼らはスンニの者たち』。彼は言った。『アッラーよ、あなたの下僕、アル・ハキムを祝福し、この地上の継承者としてお受け入れになりませぬか、と彼らは言わぬのか』。彼らは言った。『そうだ』。彼は言った。『説教者がアッラーと彼の使徒を讃える言葉をもって説教を始め、称讃をとくとなし、そして、アブ・ジャハルは天国にいる、彼は不信仰者となるのか、などと述べるさまを想像してみよ。(訳註:アブ・ジャハル=アミール・イブン・ヒシャムはムハンマドの時代、彼に敵対した人物)』

彼らは言った。『そうだ』。彼は言った。『アル・ハキムは不信仰においてアブ・ジャハルよりも悪い』。アッ・ダウーディもこの問題について問われ、かく述べている。『あの者たちのために説教壇に立ち、あの者たちのために金曜礼拝で礼拝を捧げる説教師たちは、殺されるべき不信仰の者。いかなる悔悟も彼には求められぬこと。彼のは妻は認められぬ。ムスリムから受け継ぐものは彼になく、また彼からムスリムが受け継ぐものは何もない。彼の富は、ムスリムが差し押さえるべきもの』。こうして彼の言葉は結ばれている。 

かくして、各地で熱情たぎらせる唯一神信仰の兵士たちよ。アッラーの御教えとその盟伴者に仇なすこれら邪悪なる学者どもを、そしてフィトナ(=迫害・内争)の召請者どもをあらゆる場所で殺し仕留めることに献身せよ。

諸君のひとりが、あの者どものひとりを見つけたなら、あの者を殺してその影を邪悪から断ち切れ。あの者を攻撃せよ、邪悪なる学者がたとえ家族とともに家にいようとも。 

我らへの敵対を宣し、ジハード戦士の殺戮を呼びかけ、無神論と棄教に堕ち、その責めを負う輩からまず手をつけよ。邪悪なる学者どもを諸君らが殺すことをもって、ジャハム、ジャアド、アル・ハッラージ、マアバドを殺したスンナの再興をなせ。悪魔が国家を建てるとき、周到に準備された兵士、協力的な支援者を悪魔はまず見つけようとする。全能のアッラーに、その権能も威力も並ぶものはなし。

アブル・ハサン・アリー・イブン・アブ・タリブ(=第4代正統カリフ)はこう述べた。イスラムの名、コーランの文言のみしか残らないような時がまもなく人びとに到来やも知れぬ。廃墟と導きなき空無のままに、彼らの豪華なモスクが建立されるであろう。この空下の最悪の存在が彼らの学者である。彼らのうちからフィトナ(=迫害・内争)が起こり、それは彼らのみに起因せしもの」ハディース:シュアブ・アル・イマンでのアル・バイハッキの伝承)  

まこと、フィトナは、あの者どもの口から始まり、説教壇から放たれたのである。のちに、あの者どもはアッラーの大道の為のジハードを禁じ、罪と見なし、虚構と不信仰を呼びかけ、圧政者どもの旗のもとに(我らと)戦うことを扇動した。それらをなすことで、支配者の満悦を買い、己れの富と高名を保持することに腐心したのだ。

まこと、自身の欲望に身をゆだね、現世での保身に執着することでその信仰を棄てたるが敗北者。真理にかかずらわぬ者、悪魔が虚偽に囚われのままにさせる。そして、今日、アッラーの大道で戦わぬ者あれば、圧政はその者をいつか圧政の道に戦うべく仕向ける。 

ムスリム全体、そしてとりわけイラク、シリアのスンナの者たちへ。マギ国家・イラン(=ここでのマギはゾロアスター崇拝を指す)の邪悪はその極みに至った。その火花は、すべての地に至り、すべての下僕たちに害をなした。あやつらは、その子飼い、民兵、専門家、補佐どもを通じて、イラク、シリアでスンナの民を殺戮した。

かくして、スンニ派は桎梏の捕囚となるか、服従を強いられた。アッラーをおいて、ムスリムからあやつらを封じる御方はなく、イスラム国を救ったのであった。そう。真理は明るきにあり、虚偽は暗きにある。虚栄に満ちた逸脱の輩徒がカリフの軍勢に比して戦えようものか。宗教、名誉、土地を守る者たちと、そうでない者が異なっていないなどと言えようものか。イランとその従者たちに恐ろしき残酷さを味あわせることの出来る者は誰たるか。

アッラーよ、あの邪悪な(イスラム)学者のヒゲ面に害なしたまえ。いかにあやつらの邪悪と虚偽は甚大なることか。マギ国家・イランの眼前で真理の剣を抜き、バグダッドからベイルートまで、アレッポからダマスカスまで、ホラサンからシナイに至るまで、破壊を心底味あわせてやることのできる者は誰たるか。さあ、誰たるか、分るか、悪と腐敗の召請者どもよ。 

ここにイランは、十字軍や裏切りの背教政府による空爆と支援のもと、東から西へ、北から南へと、スンナの民の土地をことごとく踏みしだき、アッラーの下僕、すなわち唯一神を信仰するジハード戦士に対する戦争を仕掛けている。あやつらが掲げるのは愛や希望なる美辞麗句。アッラーよ、その権能と威力をもって、ジハード戦士の手であの者どもの玉座をすぐさま打ち崩し、その王国を終焉させたまえ。 

おお、スンナの民よ、いざ、その時が到来したのではないか。諸君らは、軽佻浮薄を棄て、女との問答や伝説の神話なるもののいっさいを棄てたる者たち。なぜ諸君らは尊大に、そして誇りをもって振舞えているか。土地を攻撃し、メッカとメディナの投げ石に至った、あの冷酷無慙な敵の侵攻を跳ねのたゆえか。

それとも、己れを保護し、守ってくれるとあの者たちが信じる支配者のうちに、特段の堅忍と厳格さがあるゆえか。いや、アッラーにかけて、そうではない。まことこれらの考えはまったくもって間違っている。諸君に述べたことを思い起こしてみよ。いつまで夜空の星々を追いかけるのか。星は諸君の靴先も足も追いかけてはこない。 

諸君の敵は、 - アッラーよ、その背骨を砕き折りたまえ - 諸君の宗教を棄損し、名誉を汚すために、- アッラーよ、あやつらに屈辱を与えたまえ - 諸君の土地と幾多の希望を攻撃した。導きの道はいま明瞭となった。ゆえにそれを見よ。イスラムは吼える。ゆえにそれを支えよ。名誉が求めている。ゆえにそれを救え。戦いに奮い立つアッラーの御為のジハード戦士よ、ゆえに棄て去るなかれ。イスラムの地は、すべてのムスリムのものである。アッラーシャリーア(=イスラム法)は、その者たちの双肩にかかっている。 

イスラムの地とシャリーアの防衛は、ジハード戦士だけの責務ではない。かくして、サルやブタに居並ぶ兄弟の類い、あるいは石や木や人間を崇める偶像信仰者どもが立ち出でるならば、アッラームスリムの下僕は、いっさいの容赦を見せなくともよい。

ゆえに、馳せ参じよ。ジハードの戦列に加わり、アッラーの大道をゆく戦士たちをあらゆる可能な形、その戦闘、財産、鼓舞、礼拝をもって支えよ。 

カリフ国の兵士たちと世界各地の支持者たちよ! あの者どもに平安を許さず、あやつらの情報機関の顔に泥を塗り、あやつらの安全をただの夢物語にさせた諸君ら、すなわち、不信仰者の居地に挑みかかる飢えたる獅子たちよ! 

ここに知りおくべきは諸君-アッラーがそのご助力をもって諸君を支えたまえ- の祝福されし幾多の作戦は、戦局を好転させ、不信仰者の砲火をムスリムに近づけぬものとなる。かくして、あやつらを家々で、市場で、街頭で、(繁華街の)クラブで、あらゆる可能な場所で攻撃せよ。あの者どもにいかなる隙も与えぬほどに、その地を足元から焼き尽くし、その空を闇で覆うのだ。 

諸君の努力をさらに何倍にも増大させ、作戦行動を激化させよ。諸君にアッラーの祝福のあらんことを。カリフ国の各機関、教宣、保健、メディア部門の騎士たち、その他の兵士たちをここに称えることを忘れず、それぞれの戦線にある彼らのジハードと、リバット(=防衛警戒任務)にアッラーからの祝福があらんことを請うものである。彼らの戦いは、今日、軍事戦闘と並ぶほどに重きもの。

おお、アッラーよ、ご満悦するまで、貴方にすべての称讃を。ご満悦されし時にもすべての称讃を。そして、ご満悦されたのちにも、すべての称讃があらんことを。

おお、アッラー、貴方の大道から民を逸らし惑わせ、貴方の盟伴の軍勢に戦いを仕掛け、貴方の使徒(=ムハンマド)を否定し、地上の堕落に欲念めぐらすこの罪深き不信仰者を阻みたまえ。おお、アッラーよ。貴方の宗教を、貴方の兵士たちをお支えください。貴方の御言葉を至高のものに、そして貴方の真実の旗を高々と。おお、真理の神。アッラーの権能と威力に並ぶものなし。万有の御主、アッラーにすべての称讃あれ。

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シリア北部・アル・バブではISとトルコ軍との戦闘が続いている。トルコは「ユーフラテスの楯」作戦としてスンニ派武装諸派を支援する形でシリアに越境したが、ISと地上で交戦する状況となっている。写真はISがトルコ軍から奪ったのはレオパルト戦車。「戦利品」としているが、実際に運用できるかどうかは不明。12月22日にIS系メディア、アマーク通信が公開。

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アル・バブをめぐっては、トルコ軍が爆撃を加え、子どもを含む一般住民も犠牲となっている。ISは「エルドアン政権の犯罪」として映像をあいついで公開し、報復を呼びかけている。写真はアマーク通信が12月23日公開したもの。

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少し前の状況になるが、11月上旬の勢力図。トルコにとってアル・バブ攻略はIS壊滅よりも、クルディスタン労働者党(PKK)と関係の深いクルド・人民防衛隊(YPG)が押さえる黄色い地域、左・アフリンと右・マンビジがつながる「回廊」を作らせないというのが主要な目的だった。結果的にトルコはシリア越境介入でISとの地上戦に引きずりこまれる形となった。現在はトルコ軍・スンニ派武装組織の合同部隊はアル・バブ近郊にまで到達。ISも自爆車両突撃を繰り返すなど激戦が続く。

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ISは、自分たちに反対するスンニ派イスラム学者や高位の宗教指導者らも激しく批判。「殺されるべき存在」などのキャプションがつけられている。IS機関誌ルミーヤ誌(第4号)が今回の声明で掲載した記事から。

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◆IS・イラク・シリア・クルド情勢の
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【IS声明・日本語訳】イスラム国(IS)広報官アブル・ハサン・ムハジール「いまにきっとわが言葉を思い出すときが来よう」(全文)【1】前編

◆IS関連 ◆各国・各組織声明文

◆「忍耐もって戦え」繰り返す【声明前編】
武装組織イスラム国(IS)は12月5日、アブル・ハサン・アル・ムハジール広報官の音声声明を公開した。8月に空爆で死亡したアドナニのあとを継いで広報官となってから初めての声明となる。イラク軍とクルド・ペシュメルガ部隊が有志連合軍の支援を受けながら進めるモスル奪還戦に加え、シリアでのクルド・人民防衛隊(YPG)やトルコ軍との戦いにも言及。「忍耐をもって戦え」と何度も繰り返しており、各戦線でISが厳しい状況に置かれていることが伺える。以下、全文を2回に分けて掲載。(おもに英語版をもとに訳出・一部意訳・コーランの引用は岩波文庫版から声明後編(2)はこちら>>

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イスラム国・広報官声明(音声スピーチ・テキスト) 
「いまにきっとわが言葉を思い出すときが来よう」(前編) 後編>>
アブル・ハサン・アル・ムハジール
アッラーよ、彼を守りたまえ)

まこと、アッラーにすべての称讃あれ。我らはアッラーを讃え、お力添えとお赦しを請い、心の悪と行ないの因果からの庇護をアッラーに求めるものなり。アッラーがお導きになる者は迷うことなく、アッラーが迷わせる者は導かれることはなし。並びなき御方、アッラーのほかに神はなしと我は証言するものなり。ムハンマドアッラー下僕しもべであり、使徒たることを我は証言するものなり。彼と、そのご家族、ご教友、そして審判の日に従う従者に格別の平安と祝福あれ。以下、かくのごとく。

高貴なるアッラーは、かく仰せになった。

【彼らと戦うがよい。きっとアッラーは汝らの手で彼らを罰し、彼らを辱め、汝らを助けて彼らを撃ち、そして信者たちの胸を癒して下さろう。心に積もる恨みを晴らして下さろう。アッラーは御心にかなうものの悔悟を赦したまうだろう。アッラーは全知、英明であられる。それとも汝ら、このままでそっと放っておいて戴けるとでも思ったのか。汝らの中で(神の道に)奮戦し、アッラーと使徒と信者たちのほかにはひとりも心を許す相手をつくらなかったのは誰々とアッラーもまだご存知ないこのままで。汝らの所業は、アッラーが全部ご存知であるぞ】(悔悟章:14-16節)

アッラーの大道ゆく各地のジハード戦士たちへ。おお、赤く燃える石炭をその手に握るごとく耐え抜いているカリフ国の兵士たちよ。おお、この宗教と名誉の護り手たちよ!己れの心をアッラーの御為にいともやすく犠牲として差し出す準備ができている者たちよ!イスラムの故郷を血をもって守りぬき、正面きって史上もっとも傲慢不遜極まりなき十字軍に立ち向かいたる者たちよ!勇猛と確固たる心をもって、不信仰者の国々と背教者の軍勢を恐怖せしめた者たちよ!忍耐と不撓不屈で全世界を震撼せしめた者たちよ!

ここに助言するは、アッラーの使徒(彼に祝福と平安あれ)がアブドッラー・イブン・アッバースにかくお述べになった御言葉。

アッラーの御心にそわぬ形で、万物があなたの益をなそうとしたところで、それはかなわぬこと。アッラーの御心にそわぬ形で、万物があなたに害をなそうとしたところで、それはかなわぬこと。あなたが忌み嫌うものに耐えることは、より良きことと知れ。勝利は忍耐のもとに訪れる。救いは苦悶ののちにもたらされる。安堵は難苦ののにちにもたらされる】ハディース:アハマドによる伝承) 

まこと、ウマル(=ウマル・イブン・ハッターブで第2代正統カリフ)はアブスの民の首領たちにこう問うた。「何をもって戦ったのか?」。 彼らはかく答えた。「忍耐をもって。我らが敵とまみえるとき、必ず忍耐をもって立ち向かった」。サラフたち(=初期イスラムの信奉者)のなかにもかく言う者がいた。「我らの誰もが死や負傷の痛みを忌み嫌う。だが、忍耐をもってすれば、そのありようは変わる」。 

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アブル・ハサン・ムハジール声明は、ドイツ語、トルコ語、ロシア語など各言語で刊行される機関誌ルミーヤ(Rumiyah)でも掲載された。これまでのアドナニ広報官と比べるとコーランの一節からの引用は少ないが、詩が挿入されていたり、戦争と殺戮を扇動する文に宗教性や格調の高さを持たそうとするところは共通しているようだ。

 

 

かくて、忍耐強くあれ。おお、ジハードを戦う兄弟同胞たちよ。不屈たれ、そして歓喜せよ。アッラーの御為に、またアッラーによって、諸君は勝利するのだ。いま諸君が経験しているこの苦難は、幾多の苦難のたんなる一遍にすぎぬ。この苦難は、アッラーがその下僕にお慈悲としてお授けになったものであり、それによって善行と悪行とが区別され、そののち、大いなる真理とより重き責任が諸君に用意されるのである。この苦難は、まことのところ贈り物であり、それに先立って難しいものなどない。そびえる山々がうち崩され平地にされるがごとくの苦難の幾多を諸君は経験してきた。いやさて、諸君はそこで忍耐強くあり、頑強不屈であった。むしろ諸君は、より強固な決意と大いなる抵抗力をもって、これらの苦難を克服してきた。イラクとシリアの軍勢たちよ!イスラムのグラバ(奇妙なる者)たちよ!

訳注:グラバ=「奇妙なる者」は、ムハンマドの言葉「イスラムは奇妙なるものとして始まり、奇妙なるものに立ち戻る。ゆえに奇妙なる者たちに祝福を」による)

虚構の陣営は、この世俗世界によって欺かれ、欲望によって惑わされ、自惚れに満ちたもの。悪魔が鼻のなかに傲慢さを吹き込んだ。かくして、それは膚浅のうちに立ち現れ、自ら不遜さを宣し、怒りを噴出させ、恐怖におののき、大攻勢を開始したのであった。それは、歴史がかつて目にしたことなきほどの、イスラムの在り処とカリフの地に対するものであった。 

ここに到来したるは、十字軍のアメリカとヨーロッパ、旧共産国ロシア、マギ・イラン(訳註:ここでのマギは「ゾロアスター崇拝のイラン」の意)、世俗国家トルコ、クルド無神論者、ラフィダ(=シーア派の蔑称)、ヌサイリ(=アサド政権アラウィ派)、サハワ(=スンニ派武装諸組織)と民兵ども、圧政のアラブ諸国、その兵士ども、これらすべてがひとつの陣地をともにし、最新兵器を装備し、それぞれが薄汚いメディアをもって、同じスローガン「イスラムとその民の撲滅」を呼号した。それは、すなわち(このアードの民の不信仰者たちのごとく)【我らより強い者がどこにいる】(フッスィラ章15節)と同じ論法である。

 (訳註:アードの民=偶像崇拝の一族のひとつとしてコーランで言及され、アッラーを信じず傲慢尊大な態度をとったため滅ぼされたとされる)

 これらの者どもは、その力と武器をもって諸君に挑みかかり、最前線には配下の部族からなる下劣な背教者をヒツジの生贄のごとく配置し、諸君の領地を接収すべく差し向けたのである。かくて、諸君はあやつらに対する戦いにおいて、忍耐と堅忍、辛抱、不撓の努力への助力を(アッラーに)請い求めよ。

ラフィダ(=シーア派)どもは、その敵意をむき出しにし、報復の野心をたぎらせ、タラファルを押さえ、スンナの民(訳註:スンニ派を指す)を苦痛に打ちひしがせんとの策謀を抱いて、軍馬率いる兵力をもってイスラムの居地とタラファルの地に分け入った。

 (訳註:タラファル=モスル西方の都市。スンニ派シーア派の混住地域でトルコ系住民が多い。2014年にISが制圧してからはシーア派住民をあいついで処刑、追放し、シーア派モスクや墓地も徹底して破壊。現在、イラク政府軍と連携するシーア派民兵部隊が攻略を目指して作戦を展開している) 

かくして、アッラーの敵に息をつかせる猶予を与えてはならず、敵が防衛線を要塞化するのを許してはならぬ。敵との戦いにはいっさいの慈悲を見せず、戦闘現場では容赦なく無慈悲に臨め。無知の者、慇懃無礼なる者、信仰なき者、この現世には勝利など微塵もなき者どもと見なし、戦え。

あの者ども(=シーア派)は、十字架信仰者(=キリスト教徒)に操られ、戦闘と戦争に己れの居場所を見出し、この地域を分断してマギ集団のラフィダども(=シーア派イラン)の政府にこの地と民を差し出す目論見を成し遂げんとしているのである。

かくして、2つの軍勢は向き合うこととなった。
【あの者の首を刎ね、指の一本一本を打ち切ってやれ】(戦利品章:12節) 

あの者たちの車列を破壊せよ。陣地を急襲せよ。あの者たちをその聖域において悲嘆の淵に叩き込め。災厄をみまい辛苦を味あわせてやるがいい。アッラーはすぐさまあの者どもに打ち勝つ力を諸君らにお与えになる。退却など考えることすらならぬ。

アッラーの御前にあって退却をなすというならば、それは己れの名誉からの退却であり、そこにはいかなる守護者も与えられぬ。敗北して見捨てられた者たちがアッラーに不平を唱えるごときの、信仰そのものからの退却である。高貴なるアッラーの御言葉をつねに心に刻め。

【信徒の者よ、汝ら敵軍に出遭ったら、しっかりと腰を据えて、アッラーの御名を何遍も唱えよ。さすれば、必ず幸福を得よう。そしてアッラーと使徒(ムハンマド)の言いつけをよく守れ。決して喧嘩口論などして志をぐらつかせ、ついには順風に見放されるようなことがあってはならぬぞ。どこまでも頑張りとおせ。まこと、アッラーは辛抱強き者の側につきたまう】(戦利品章:45-46節)

そして、崇高なる御方(=アッラー)のこの御言葉:

【同志として共に戦う人びとを有った預言者がその幾人あったことか。彼らは神の道での戦いのためならばどのような目に遭っても意気阻喪せず、弱気にならず、決して志を屈しなかった。アッラーは忍耐強い人びとを好みたまう】(イムラーン家章:146節)

アッラーに我らは誓う。我らがここに目にするのは崇高なるアッラーが、十字軍、背教徒、無神論者の者どもを死へと引きずり込もうとなされていること。アッラーの御許しのもと、あの者どもからの攻勢をついぞ最後のものとし、我らがあの者どもの故国に襲いかかるであろう。唯一なる御主にいっさいを託した者として、唯一無二なる御方、アッラーからの信をもって我らはこの言葉を言う。おお、イスラムの民よ、ラッカの獅子たちよ!

おお、武勇と名誉と尊厳の者たちよ! 淫らで無神論の不信仰の女にムスリムの地が略奪されるかどうかがまさに直下の問題。この女の仲間どもが、それに置き換わる男を据えられず、その名において邪悪を溢れたぎらせ到来したること。

訳註:ここではラッカ攻略をめざすクルド組織・人民防衛隊YPGの女性部隊YPJに言及している)

 むしろ、これらの者は不信仰に満ちた逸脱の民、この地上における偶像崇拝の集団であり、己れの虚構と、イスラムやその民に対する戦争を支える輩徒。

かくて、御主のもと、言ってくれたまえ、諸君よ。クルドの無神論者の罪が撃退されず、あやつらの思いのままの状況が到来するというのか。アッラーが、かようなることお許しにはせぬ。

それはすなわち、淫らで神を信じず、堕落し、下劣で愚かで悲惨な不信仰の女どもがなす、諸君の信仰に敵対する戦争、シャリーアイスラム法)の不在、モスクの冒涜、男たちへの屈辱、諸君の女たちや妻たちを未亡人にさせることから救えぬ状況である。

もしこれらが到来するなら、人生のいっさいの善も、いっさいの価値も失われるだろう。いまこそ真実の時であり、諸君が誓いを果たす時であると知るのだ。おお、ジハードに立つムスリムよ、3つの課題が諸君の前にあり、それ以外を望む輩徒どもには災厄を与えよ。アッラーシャリーアに統治される大地、信仰に拠って立つ戦いとしての責務ゆえにこそなす敵の攻略、そして、長きにわたりその誠実さの先に求められてきた殉教。

しかとあるわが心、解き放たれたこの魂。
これぞ不名誉を拒否したるもの、
そして研ぎ澄まされしわが剣。
魂との別離を誰が怖れようものか。
別離なるもの今生の終わりたるものか。
魂が身体に宿っているうちに、それを高みへと昇らせよ。
シリアの地でなけば、イラクに。
臆病者に善はなく、
ただ屈辱と窮乏に満ちた人生が待つのみ。
わが熱情と惆悵を責めるあの者ども。
だが、火は燃えることをもって責められようか。

 (後編に続く)

IS・アブル・ハサン・ムハジール声明【後編】に続く>>

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写真はアブル・ハサン・ムハジール広報官の今回の声明公表の翌日に、IS支配地域、イラクキルクーク県」(おそらくハウィージャ)で住民に音声CDが配布された様子。全住民に配るわけでないので、あくまでプロパガンダ写真であるが、今回の声明を大きく位置づけようとしていることが伺える。(IS写真)

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前広報官アドナニが8月に死亡し、後継として任命されたのがアブル・ハサン・ムハジール。まだ公式には写真は公開されていない。名前は組織名であるが、IS内でムハジールは「IS地域への移住者」として使われる場合が多く、シリア、イラク人以外の外国からの戦闘員の可能性が高い。(IS写真)

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IS週刊機関誌アン・ナバア(第58号)に掲載されたムハジール声明。タイトル「いまにきっとわが言葉を思い出すときが来よう」はコーランの信者章:44節から。

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イラク・モスル西部の町、タラファル近郊にはおもにシーア派民兵部隊が迫っている。モスルからラッカに抜けるISの補給線を分断して包囲する形で激しい戦闘が展開されている。ISは、イラク軍、クルド・ペシュメルガシーア派民兵の3方面での戦線を構え、有志連合の空爆も加えられている。写真はタラファルでのIS部隊。(IS写真)

IS・アブル・ハサン・ムハジール声明【後編】に続く>>

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【IS動画・日本語訳】ドイツ・ベルリンでのトラックによる市民殺傷事件・実行犯「遺言」映像

◆IS関連 ◆各国・各組織声明文

◆バグダディへの「忠誠」唱え、市民を殺戮
12月19日、ドイツ・ベルリンでトラックが群集に突っ込み多数の市民を殺傷する事件が起きた。犯人はドイツで難民庇護申請を却下されたチュニジア出身のアニス・アムリ(24歳)。逃亡中、イタリア・ミラノで警官に射殺された。事件後、襲撃前に撮影された映像をイスラム国(IS)系メディア、アマーク通信が「遺言」として公表、「作戦はイスラム国兵士によるもの」などとした。以下はその映像。(一部意訳)

【アマーク通信映像】「ベルリン襲撃犯・ISへの忠誠」一部意訳・転載禁止

冒頭の「慈悲として剣をもって遣わされし御方」とはムハンマドを指し、IS広報官アドナニもよく使った言葉。それに続けてバグダディ師への忠誠を唱和している。7月のフランスでの教会襲撃犯はメモを見ながらこの忠誠をたどたどしく読み上げていたが、今回のアニス・アムリはかなり流暢だ。それなりにISの過激思想に感化される期間があったと推測される。 「ISの忠誠」については過去記事参照>>

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アニス・アムリが運転するトラックは、クリスマス前の買い物客でにぎわっていたブレイトシャイト広場の大通りに突入し、11人が死亡、50人以上が負傷する惨事となった。またトラックの所有者のポーランド人運転手も殺害されている。(地元メディア写真)

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事件直後にアマーク通信が「速報」として出したニュース。「イスラム国兵士がベルリンで国際有志連合の市民を標的に作戦を遂行」などとある。12月19日夜に発生した事件を、まず「速報」で報じ、4日後には今回のアニス・アムリの「遺書」とする動画をネット上に公開している。襲撃計画の策定から実行、声明の公表まで組織的な関与があったことをうかがわせる。IS広報部門は、パリ襲撃(2015年11月)、ブリュッセル襲撃(今年3月)では直後にISとして明確な声明を出したが、それと比べると扱いは大きくない。直接・間接的な関与の度合いなどで、事件に一定の「ランクづけ」がなされているのではないだろうか。

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ドイツの連邦刑事局は、現場証拠などからアニス・アムリが襲撃に関与したとして指名手配。「容疑者は武装している可能性あり」とある。報奨金(10万ユーロ=約1200万円)をかけて情報提供を呼びかけた。メディアは、アニス・アムリは昨年7月にドイツに入国、難民庇護申請をし、却下されたものの送還の書類等が整わなかったことなどから滞在していたと報じている。また、イタリアで放火の罪で4年間服役していたとされる。アムリの場合は、難民が突然、事件を起こしたのと違い、事件前からドイツ治安当局に危険人物としてリストアップされていたと地元メディアは伝えている。

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ベルリンでの事件を伝えるISの週刊機関誌アン・ナバア(第60号)。事件から2日後に公表されたもの。「ドイツでカリフ国兵士が十字軍50人をトラックで轢く」との見出しで、これまでのドイツでのIS関連の襲撃事件を列挙。「イスラム国に対する十字軍の戦争に参加したドイツへの攻撃」などとしている。

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アニス・アムリは、19日夜にベルリンで事件を起こしたあと、フランスなどを経由し、イラリア・ミラノに入ったと報じられている。地元警官が職務質問した際、リュックサックから銃を取り出し発砲したため、警官が射殺。警官1名が負傷している。(地元テレビ映像)

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写真は、事件後、困惑してメディアに話すアニス・アムリのチュニジアの家族。CNNは、アニス・アムリに関係するグループや人物として、イラク出身でドイツ在住のアブ・ワラアやボスニア系ドイツ人ボバン・シメオノヴィチらがいたと報じている。ISとつながるドイツの組織はいくつかあるが、彼ががどう過激思想に感化され、具体的な実行指示を受けていたかは捜査中だ。(地元メディア写真)

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トラックによる無差別殺傷事件は、7月、フランス・ニースでも起きている。このときは80人以上が犠牲となった。11月に出されたIS機関誌ルミーヤ(第3号)では、大型トラックでの殺戮を解説。「人が集まるマーケットやパレードを狙え」と具体的に説明し、コーランを都合よく解釈して「宗教的意義」を持たせている。さらに、「我らは御主のもとに帰る」などと念唱しながら運転して敵をひき殺せ、などと扇動までしている。

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ベルリンの事件現場で献花するメルケル首相。ドイツの難民保護政策はいま揺れている。昨年、ドイツに難民庇護申請を受け入れられたシリア人一家の話によると、同じ収容施設にいた「シリアからの難民」と主張する男がモロッコ方言を話したり、言動がおかしくIS関係者と疑われる人物が複数いたという。担当者は申請処理の多さに、時間をかけて審査することもできなかったようで、難民有志で、ひそかにIS関係者らしい人物を通報するネットワークを作ろうか、とも話していた。庇護申請を認められ命を繋ぎとめた難民が多数いる一方、それにまぎれて過激主義や犯罪者が流入する問題に直面している。(写真はAFP)

◆IS・イラク・シリア・クルド情勢の
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〔トルコ〕クルド組織クルディスタン自由の鷹(TAK)、イスタンブールでの自爆攻撃(声明全文)

◆各国・各組織声明文 ◆クルド関連

◆過激化するTAKの爆弾闘争~市民も巻き添えに 
今月10日にイスタンブールで起きた同時多発爆弾事件で、クルド武装組織「クルディスタン自由のタカ」(TAK)が攻撃を認める声明を出した。事件はサッカチーム「ベシクタシュ」のホームスタジアムのボーダフォン・アリーナ付近で発生し、警官37名を含む47名が死亡、100名を超える負傷者を出した。TAKはクルディスタン労働者党(PKK)から分岐したとされる組織だが、トルコ政府は一体の組織と見なしている。トルコではTAKやPKKによる攻撃が激化しており、今後、民間人も巻き込む爆弾事件がさらに増えることも予想される。以下は声明全文。

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12月10日にイスタンブールで起きた事件は、2回におよぶ同時多発爆弾攻撃。1回目の爆発は、爆弾を積んだ車両によるもので、サッカー試合後のスタジアム周辺での雑踏警備の警察機動隊バスを狙ったものと見られる。2回目の爆発は、マチカ公園での自爆によるもので、ジャケットとリュック姿の不審者が警官に静止された際、自爆したと報じられている。エルドアン大統領は声明で「PKK、ダアシュ(IS)、ギュレン派らのテロ組織は共通の目標を企図している」とした。事件発生から数日のうちにクルド系政党・人民民主党(HDP)の関係者ら200人以上がテロ関連容疑などで拘束されている。写真は事件を伝えるトルコ紙。

クルディスタン自由の鷹(TAK)声明文

報道機関ならびに社会世論へ

2016年12月10日22時30分、イスタンブールボーダフォン・アリーナスタジアムとマチカでの同時作戦が、わが烈士ティレジ報復隊によって遂行された。この作戦で、百数十名の警官、その他を死傷させ、自身を犠牲として捧げた2名の同志が勇敢にも烈士となった。烈士の氏名は後日、明らかにされる。
トルコ市民はTAKの直接的標的ではない。わが烈士ティレジ報復隊は、最大限の注意を払いながらこの作戦を遂行した。しかしながら、指導者アポ(=オジャラン)の拘留が続き、トルコ・AKP(=公正発展党)のファシズムが多くの母親たちを拷問し、クルディスタンで日々、少女の死体がさらされ、子供たちが虐殺される限り、トルコには安堵できる場所などない。トルコ市民は、このファシズムをただちに阻止しようと声を上げるべきである。AKPファシズムこそがこの混乱に一切の責任を負っているからである。
ファシズムはみずから幕引きをするか、さもなくば我々が辛辣なる状況に叩き込むかである。わが同志が流したすべての血は、TAKの自己犠牲戦士にとっての新たな行動のしるべである。

クルド人民に安寧あれ。この苛烈なる戦争の勝利者は我々である!
アポ(オジャラン)指導者万歳!
TAK万歳!

クルド人クルディスタン万歳!
烈士が死することはない!訳注:戦闘で死んだ同志の魂はいつまでも消えることはない)

クルディスタン自由の鷹

2016年12月11日

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イスタンブール連続爆弾事件でTAKが公表した声明。いまイスラム国(IS)との戦闘を戦うシリアのクルド組織・人民防衛隊(YPG)には、アメリカは特殊部隊を送り、武器援助までして支援をしている。トルコ政府はTAK-PKK-YPGは実質的に一体の組織としている。対IS戦でYPGを「テロと戦う自由戦士」と描く欧米メディアもあるなか、その母体となったPKKは、トルコで民間人まで巻き込む闘争を激化させている。これまでにもPKKは政治的好機にあるときに、突然、闘争を過激化させたり、停戦を破棄するなどしてきた。このPKK特有の政治・戦術の手法には穏健なクルド人政治家からも批判が出ている。PKK組織関係図はこちらを参照

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今回の声明では一連の作戦を「烈士ティレジ報復隊」によるものとしている。烈士ティレジとは、11月24日、アダナでの自爆攻撃(死者2名・負傷者30名以上)で死亡したティレジ・デリルの名を指す。この攻撃ではTAKはアダナ県知事を標的としたとしている。ティレジは組織内の名で、本名はマルディン・ヌサイビン出身のムサ・エズデミル(20)とTAKは公表。

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TAKは12月20日、後続声明を出し、12月10日のイスタンブール連続爆弾攻撃実行犯2名の氏名を経歴とともに公表。写真左・組織名シェルヴァン・ショレシュ・デルウィシュ(27・本名カドリ・キリンチ、マルディン出身)と、写真右・組織名アンドク・セルハット(20・本名ブラク・ヤヴズ、ウルファ出身)とし、いずれも「闘争に殉じた烈士」などとしている。TAKはPKKのオジャラン指導者への支持を繰り返し表明している。

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【動画+写真34枚】イスラム国(IS)戦術分析(17)◆戦闘員養成4・各地に広がる軍事キャンプの脅威(アフガニスタン編)

◆IS戦術分析 ◆IS関連

◆シリア・イラク越えアフガンへ~タリバンとも衝突【動画+写真34枚】
イスラム国(IS)が活動するのは、シリア・イラクだけではない。これまで、エジプト、リビアアフガニスタン、イエメンなどにも浸透を図ってきた。軍事キャンプでの戦闘員養成は、拠点構築の足掛かりを作るうえでも重要な任務と位置付けられている。今回はISがホラサン県と規定するアフガニスタン地域の軍事キャンプ。

【IS動画・日本語】ホラサン(アフガン地域)軍事キャンプ 一部意訳・転載禁止
2015年11月に公開された動画で、ISが「ホラサン県」とする地域にあるアブ・オマル・バグダディ軍事キャンプ。場所はアフガニスタンと推測される。アブ・オマルは、イラクイスラム国(ISI)の指導者で、2010年、米軍・イラク軍の合同作戦で死亡。動画のタイトル「そして、備えよ」はコーラン・戦利品章から。

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動画に映っていたキャンプ。黒い隊旗にはアブ・オマル・バグダディ軍事キャンプとある。前回の動画と同様、コーランの一節【かれらに対して、できる限りの武力と 多くの繋いだ馬をもって備えよ。それによってアッラーの敵、あなたがたの敵に恐怖を与えよ】(戦利品章:60節)が引用されている。これはIS軍事キャンプに共通しており、ジハード戦士養成の精神的支柱のひとつに据えられている。(2015年・IS写真)

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砂漠や平地が多いシリア・イラクと違って、アフガニスタンでは山岳地帯や渓谷が軍事拠点の特徴。山岳地帯が多く、海のないアフガンだが、迷彩服が青い海上仕様になっている意図は不明。このキャンプでは緑の迷彩服が教官のようだ。(2015年・IS写真)

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これまで取り上げたイラクでの軍事キャンプでの戦闘員の動作や訓練の流れと共通する部分が多い。指導要員がアフガニスタンに入り、一定の軍事教練マニュアルに沿って訓練メニューを作っている可能性が高い。(2015年・IS写真)

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戦闘訓練の基本メニューはイラク・シリアでの軍事キャンプとほぼ同じようだ。このキャンプでは対人格闘術としてカラテスタイルのほかに、ボクシングの要素も取り入れているようだ。手前の戦闘員はキャメルバッグ水筒システムを背負っている。(2015年・IS写真)

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写真はコーランを手にする戦闘員。動画にも出てきたが、ISは軍事訓練を単純な軍事技術や格闘術の習得するだけでなく、イスラム教義・信仰など精神面の教練も支柱のひとつとしている。教義の独自解釈で無差別殺戮を正当化したり、自爆攻撃を「殉教」などとして宗教的意味を持たせるプロセスが徹底的に教え込まれる。(2015年・IS写真)

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訓練の最終段階では組体操で仲間の意志一致を図る。これは、イラク、シリアの軍事キャンプでも共通している。だいたいタワー3段。死をも恐れぬジハード戦士でさえ3段というのに、日本の小・中学校ではタワー5段も。仲間で達成感を共有すると同時に、誰かに見せるというメンタリティーには共通する部分があるかも知れない。(2015年・IS写真)

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これは同じ時期に公表された別のキャンプ。中央にある隊旗にはアブ・ムサブ・ザルカウィ軍事キャンプとある。ザルカウィはヨルダン人で、イラク聖戦アルカイダを率い、イラクで起きた香田証生さん殺害事件にも関与したとされる。2006年、米軍の空爆で死亡。(2015年・IS写真)

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エルボーパッド、ニーパッドまで装着。ブーツやチェストリグは真新しく見える。(2015年・IS写真)

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個人装備一式が、常時運用されているものか、撮影用に揃えたものか、アフガン政府軍のものを奪ったかは不明だが、こうした映像がもたらす宣伝効果は高い。シリア・ラッカのIS軍事訓練施設に収容され、脱出した少年の証言によると、新品の戦闘服一式が全員に配られ、その翌日、IS撮影班がやってきたたということなので、このアフガン・キャンプもメディア戦略を意識したものではないだろうか。(2015年・IS写真)

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対空機関砲の講習。ここでの迷彩服は、青が教官のようだ。(2015年・IS写真)

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これはホラサンにあるまた別のキャンプで昨年11月に公開されたシェイク・ジャララディン軍事キャンプ。アフガン・ナンガハルで米軍の空爆によって死亡したイスラム法学者シェイク・ジャララディンの名を冠したのではないか。IS軍事キャンプは、米軍の空爆で狙われるため常設した場所ではなく、移動していると見られる。(2015年・IS写真)

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同じくシェイク・ジャララディン軍事キャンプ。左に立つ男は教官のようだが。黒い肌は地元のアフガン人には見えない。IS本体から派遣された指導官とも推測される。(2015年・IS写真)

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正拳突き。(2015年・IS写真)

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やはりこのシェイク・ジャララディン軍事キャンプでもブーツは真新しく見えるので、このときの整った装備は撮影用に準備されたのではないか。(2015年・IS写真)

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これまでに公開されたIS映像からしか判断できないが、こうした銃を持っての基本動作は、シリア・イラクでのISキャンプでの動きと似ている。タリバン政権以降に編成され、国際治安支援部隊(ISAF)の訓練を受けたアフガン治安部隊や、フセイン政権後に米軍が訓練したイラク軍を取材したことがあるが、いずれとも違うようだ。個人的には、イラク・シリア式の基本教練に独自アレンジを加えたのをマニュアル化してアフガンにも持ち込んでいるのではないかと推測している。(2015年・IS写真)

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アフガニスタンではタリバンのほうが勢力基盤も大きい。ISは昨年初頭にホラサン「県」として認めた。山間の農村は別にして、実質的な行政機構を持つような統治地域を持っていはいないものの、「県」と扱うことによってISの存在感を示すことにもなっている。ISの浸透にともない、一部地域でタリバンとも交戦する状況となっている。(2015年・IS写真)

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シリア・イラクのIS地域へは、周辺の国境警備が厳しくなって入りにくくなっているため、アフガニスタンやその他の地域が過激な若者の受け皿となって定着する可能性もある。(2015年・IS写真)

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RPG-7ロケット砲を構える。アフガニスタンでのIS戦闘員数は、2000~3500人前後と一般メディアでは異なって報じられている。ISは戦闘員数を公表していない。(2015年・IS写真)

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シェイク・ジャララディン軍事キャンプを拠点とする部隊。山岳地帯を移動しているようだ。シリア・イラクの支配地域を失いつつあるISだが、各地に伝播したIS支部が将来の拠点となることも懸念される(2015年・IS写真)

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ホラサンは広義の意味では、イラン以東の中央アジアタジキスタンウズベキスタンなど)とアフガニスタンパキスタンの一部にかけての地域。通常、ISが使う場合は、おもにアフガニスタンとその周辺地域を指すことが多い。IS公表写真ではアフガニスタン・ナンガハルでの戦闘がよく出てくる。右写真は今年8月に米軍のドローンでの空爆で死亡が報じられたISホラサンの指導者、ハフィズ・サイード・カーン。パキスタンタリバン運動(TTP)で活動していたがのちにバグダディへの忠誠を表明し、ISホラサン県の「知事」に任命されたといわれる。

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今年2月に公開された別のキャンプ。アブ・バクル・サディク大隊・アブ・オマル・マクブル軍事キャンプとある。アブ・オマル・マクブルはパキスタンタリバン運動(TTP)広報官とされた人物。2014年10月にISに忠誠を表明した。この映像に映るだけでも、約50人がいる。(2015年・IS映像)

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とび蹴りで陶器を割るのが指導教官。空手かテコンドーの要素が取り入れられているようだ。(2015年・IS映像)

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戦闘員が正拳突きで陶器の板を割る。勢力基盤としてはタリバンに劣っても、ISはメディア戦略では圧倒的に強い。こうした映像が各国の過激な若者たちを志願に駆り立てる。(2015年・IS映像)

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腹筋を固め、その上をバイクで乗り上げ根性をつけるスタイルは、シリア・イラクでも共通している。(2015年・IS映像)

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これは突入訓練。手榴弾を投げ込んで、部隊で突入する。動きはかなり機敏だ。(2015年・IS映像)

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右手を重ねあい、バグダディへの忠誠を表明する戦闘員。アフガニスタンダリ語パシュトー語などだが、この忠誠だけはアラビア語で唱和している。(2015年・IS映像)

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映像の最後では、アフガン治安機関の情報要員を処刑する。オレンジの「囚人服」を着せられ拳銃で頭を撃ち抜かれる。ISの「処刑スタイル」とプロパガンダ手法がアフガニスタンでも統一して採用されているのがわかる。(2015年・IS映像)

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今年5月公開されたホラサンのタジク戦闘員の映像。タジク語でバグダディに忠誠を表明している。こうしたキャンプが広がれば、アフガニスタンだけでなく、中央アジアで政府機関や外国人を狙った事件が起きる可能性もある。(2016年・IS映像)

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昨年11月、ナンガハルでアフガン政府軍を襲撃するIS戦闘員。ISはアフガン政府軍・警察部隊やパキスタン軍、さらにはタリバンとも衝突している。(2015年・IS写真)

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政府軍部隊のハンヴィーを襲撃後、兵士の首をナイフで切り落とし写真を公開している。ISの「宣伝スタイル」がアフガニスタンにも及んでいる。(2015年・IS写真)

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軍事キャンプが持つ意味は大きい。ここで養成された戦闘員たちは都市部にも潜入し、自爆攻撃や外国人襲撃要員としても投入されることになる。写真は今年7月、カブールで自爆したアフガン人戦闘員。ベストに爆薬が装着され、オレンジの起爆ケーブルが延びているのがわかる。(2016年・IS写真)

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昨年8月に公開された映像。ナンガハルでタリバンに協力した部族の一団がISによって殺害される。部族のいる地域がタリバンの攻勢を受け、ISが追い出されたことへの報復とみられるが、殺された地元部族もイスラム教徒である。10人が並ばされ、地面に埋められた爆弾で爆殺される凄惨な映像だ。足元に爆弾が埋められ、オレンジの起爆ケーブルでつながれている。バラバラになった死体まで写しており、見せしめにしている。(2015年・IS映像)

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これはアフガニスタンではなく、イラクのディアラ県。昨年1月にホラサンが正式に「県」と承認された際に、各地のIS県から祝福メッセージ動画があいついで公開された。これはディアラ県戦闘員からのホラサン県への祝福メッセージ。今後、フィリピンやバングラデシュも一定の条件が整えば、宣伝戦略として「県」として認められることもあるかもしれない。(2015年・IS映像・イラク

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【シリア民主軍声明・全文】イスラム国(IS)壊滅へ向けたラッカ攻略作戦・第2段階へ

◆各国・各組織声明文 ◆クルド関連 ◆IS以外の武装組織 ◆IS関連

◆「ユーフラテスの憤怒作戦」第2段階はラッカ西方攻略目指す
イスラム国(IS)の事実上の「首都」ラッカの攻略をめざすシリア民主軍(SDF)とそれを構成する合同部隊は、12月10日、ラッカ解放へ向けた「ユーフラテスの憤怒作戦」が第2段階に入ったとする声明を公表した。解放作戦の第1段階は11月6日に開始され、これまでに多数の村や町がISから解放されたとしている。以下は声明全文。(一部意訳)

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シリア民主軍(SDF)のもとに編成される合同部隊。クルド・人民防衛隊(YPG)が主導しているが、解放作戦はアラブ人を含むラッカ出身者が担うことを強調。ISに代わってクルド勢力がラッカを統治するのではないことを印象付けようとしている。写真中央の女性はクルド人のジハン・シェイク・エヘメド作戦室広報官。(SDF写真)

シリア民主軍(SDF)声明(2016/12/10)

【ユーフラテスの憤怒作戦・第2段階開始に関する声明】

ユーフラテスの憤怒作戦の第1段階は、成功裏に遂行された。700平方キロにわたる地域の村、町、戦略的幹道をこれまでに解放し、ラッカ北部近郊部のテロ組織ダアシュ(=IS)の防衛ラインは打ち破られた。 

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SDFには各派が合流。アラブ人、クルド人トルクメンのほかにキリスト教徒なども加わっているが、主導するのはYPGである。(SDF写真)

わが部隊は、安全道を確保し、多数の住民が解放地域に向かう保護避難路を設置した。

このたびSDF軍事評議会の作戦会議において、本作戦を第2段階へと移行することが決定された。この第2段階の目標は、ラッカ西方地域の解放と包囲である。ここに広く伝えるべきことは、ユーフラテスの憤怒作戦はさらに強化されるということである。これにはデリゾール軍事評議会、「シリアの明日運動」の部隊、ならびにラッカ革命旅団指揮下のもとに新たに編成された戦闘部隊が加わり、国際有志連合軍による訓練を受けたラッカ出身の1500人が合流する。

国際有志連合と我々の連携はひきつづき継続され、成果をもたらすものとなることを強調する。本作戦の第2段階においては、テロの壊滅へ向けて、さらに強力な連携のもとに進められる。

ユーフラテスの憤怒作戦においてラッカの解放と近郊地域の防衛の主体となるのはラッカの者たちであり、ラッカ解放以降においては、(社会のすべての構成機関が加わる)市民行政機構が行政を担うこととなる。

ラッカとその近郊の住民に対しては、わが部隊が到着するまで、ダアシュが展開する地域から遠ざかるよう呼びかける。

本作戦の第1段階においてラッカの住民と諸部族が示した協力と歓迎に、我々は心から感謝の意を表明する。

テロ組織ダアシュから、ラッカとその近郊地域の完全な解放を勝ち取るため、わが部隊へのさらなる協力と支援、そしてわが戦列に加わることを求めるものである。

シリア民主軍(SDF) 総司令部
「ユーフラテスの憤怒」作戦室
2016年12月10日

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2106年12月上旬頃のラッカ近郊の状況。SDFはラッカまで約40~50キロまで迫っている。ユーフラテスの憤怒作戦・第2段階では、ラッカ西部から展開し、村や町を解放しながらIS掃討を進めるとしている。(地図はSDF・YPGなどの情報をもとに作成)

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ユーフラテスの憤怒作戦でラッカに向けて進撃するSDF部隊。クルド勢力は、ラッカからISを駆逐したあとにアラブ人を追い出してクルド化させようとはしているわけではない。だが、この地域に強い影響力を行使することで、シリア情勢、さらにはトルコに対し、また国際社会で政治的存在感を高めたいという思惑がある。軍事と政治を計算しながら動いているのは、米露、シリア、トルコなども同様である。(SDF写真)

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ラッカ攻略へ向けた作戦は、近郊の村や町からの住民の避難路を作る形で進められてきた。有志連合の空爆支援を受けながらの合同作戦だが、一方で爆撃の巻き添えとなる住民も出ている。ISは「ムスリム住民を殺す十字軍の非道」と宣伝に利用。戦闘のはざまで逃れることのできない住民も少なくない。写真は脱出住民に水や食料を配るYPG戦闘員。(YPG写真)

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肩を組み踊って出撃前の志気を高める戦闘員たち。(SDF写真)

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ISが広大な地域の支配を短期間に固めたのは、地方部族を押さえたことが大きかった。地元部族がどちらにつくかは戦局を左右する。写真はSDFのラッカ攻略作戦に協力を表明した部族代表。部族にとっては、どんな組織が領地にやってこようと、軍事力のある強者に従うしかない現実がある。(SDF写真)

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ユーフラテスの憤怒作戦・第2段階に入り、前線に展開するSDF部隊。(SDF写真)

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「クルドの星」とガンダムと~いま起きている、この戦争のなかで

◆クルド関連 ◆IS関連

イスラム国(IS)との最前線に立つクルド戦士
クルド地域を取材すると、「日本ではクルド人のこと知っているの?」とよく聞かれる。そういうこともあって、カメラバッグには「クルドの星」の表紙をいつも入れていて、「こういうマンガがあるんだよ」と教えてあげたりする。するとクルド人たちはみんな驚く。「はるか遠くの日本人が自分たちのことを描いてくれたなんて」。

クルドの星」の作者、安彦良和先生と、ある編集者の紹介で、ご自宅でお会いしたのはもう20年ほど前のことになる。先生はその時の話を「クルドの星」文庫版のあとがきに書いてくださって、とても恥ずかしかった。それ以来、毎年先生からいただく年賀状には、いつも国際情勢のことや戦火の人びとへの思いなど、自筆の丁寧なメッセージが添えられてあって、その応援にずっと励まされてきた。

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クルドの星」を手にするクルド部隊・人民防衛隊(YPG)の若い戦士(19)。安彦良和先生が見つめた戦争の特集でとりあげていただいた写真。先生が学生時代を送った青森の東奥日報に昨年掲載されたもの。

シリアでクルド組織・人民防衛隊(YPG)を取材した際、戦闘員として戦う19歳の青年が日本のことを聞いてきたので、「クルドの星」の表紙絵を見せて説明してあげた。すると彼は小さくつぶやいた。「自分はクルドの星になれるかな…」。
イスラム国(IS)との戦闘で、ほぼ毎日、彼の仲間が死んでいた。ISがわずか数百メートル先まで迫り、砲弾が撃ち込まれる瓦礫の中の最前線で聞いた彼の言葉は重く、つらかった。 

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ガンダムのシールドの上でイスラム国(IS)の説明という、すごい紙面に。ISの解説は新聞社がつけたものをハロが語っている。その後明らかになったISの現状とわずかに異なる箇所もあるものの、そこはガンダムシールドなので無双。

後日、その時の写真を安彦先生に私信としてお送りした。作品のイメージにも影響するので、写真は公けにするつもりはなかったのだが、先生のほうからこの話を取り上げたい、と新聞社の編集者にお話ししていただいた。 

ちょうど先生の「ガンダム作家の見た戦争」という連載が続いていて、その一部として掲載された。様々な形で戦争を描いてこられた先生の思いと、いま起きているシリアでの戦火という趣旨の記事だった。分断民族・クルド人に悲劇に加え、この地の誰もが民族・宗派に関係なく戦乱に巻き込まれ、苦しんでいる。そうした話を、「クルドの星」を切り口につないでいただいた。

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IS拠点の建物に突撃して、制圧したYPG部隊。すぐ先にはISスナイパーが展開し、狙撃を加えてきた。(2014年末・シリア・コバニ・撮影:坂本)

自分が最初にガンダムを見たのは中学生の頃だったろうか。当時は少年向けのロボ・アニメとしてとらえていたものが、のちに戦場を実際に取材するようになってみると、安彦先生がガンダムを通して照射した「戦争と人間」の意味が少しずつわかるようになった。

これまで国際社会に見放されてきたクルド人が、ISとの戦いで世界に広く知られるまでになった。だが、そこにはたくさんの「クルドの星」の戦士たちがいて、命を落としてきた。故郷や家族を守るため銃をとり、彼らもまた誰かの命を奪うという現実。私たちと同じ時代に生きながら、いまも戦火のなかでたくさんの人びとが過酷な運命を強いられている。

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1キロ先の前線からは毎日、ISとの戦闘で戦死したクルド戦闘員の遺体が次々と運ばれ、埋葬していた。墓石もなく、道路の敷石や家の床石をもってきて、サインペンで名前と戦死日を書いていた。左の老人は息子が戦死。「誰も泣かない。泣くのはやつらを追い出してからだ」と言った。(2014年末・シリア・コバニ・撮影:坂本)

◆IS・イラク・シリア・クルド情勢の
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