イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

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【IS動画・日本語訳】歌から読み解くシリア・イラクでの戦争(24) イスラム国(IS)と「ユダヤ陰謀論」

◆「すべての背後にユダヤ」~陰謀論の危うさ
「すべての背後にユダヤがいる」。
イラクにはこうした言い回しがある。それは国際政治の場面だけではない。例えば、車がパンクした。ピクニックで雨が降ってきた。「くそ、ユダヤのしわざ」。
みんながそういう言い方をするわけではないけれど、ある意味、日常生活でのツッコミだったりする。

【IS動画】「真理の兵士たちよ、いざ進め」(一部意訳)

この映像が出たのは2014年6月頃だったと思うので古い部類なのだが、映像は文字が踊り、ラップ音楽のクリップでも通用しそうな編集になっている。おそらくこのころにISに「腕のいい」編集スタッフが加わったのだと思う。この映像に前後して、一眼レフの動画モードで背景をぼかした映像にしたり、残酷な処刑をまるで映画のシーンのように見せるなど、残虐さを「カッコよさ」に変える流れが出来上がっていった。こうした映像に感化されてISに入った外国の若者たちは少なくない。ユダヤ人を侮蔑的に表現するときによく使われる表現が「猿や豚の子孫」で、この動画の歌にも挿入されている。

9・11事件はユダヤ陰謀論というのがいまでも渦巻いている。イスラムキリスト教世界の対立を煽るためとか、世界を戦争に陥れてユダヤ資本の軍需産業が儲けるためだとか様々な言説がまことしとやかに語られてきた。その後の、イラク戦争、そして「アラブの春」も仕組まれたものであり、現在のイスラム国(IS)の台頭に至るまで、すべて「ユダヤの陰謀」と信じて疑わない人もいる。

9・11事件から始まった「テロとの戦い」は16年に及び、アメリカ合衆国史上、最も長い戦争となっている。そしていつ終わるかもわからない。もしユダヤ資本が軍需産業を操っているのだとすれば、これほどおいしい話はないだろう。

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この画像の元の出どころはわからないのだが、「ISの背後にユダヤ」という陰謀論や風刺でやたらと使われる。

イラク戦争後で言えば、確かに様々な局面で何らかの「陰謀めいたもの」を疑わせる怪しい要素はたくさんあった。米軍がファルージャスンニ派武装勢力掃討作戦をし、多数の住民が巻き添えで犠牲となったとき、シーア派が一致団結して占領反対の声を上げた。ところがちょうどそのタイミングで、シーア派の聖地で爆弾事件があいつぎ、両宗派が対立し、のちに殺し合いが始まった。あの時は、誰かが仕組んだんじゃないかとさえ思った。

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イスラム世界でよく出回っている「ユダヤ陰謀論」のネタのひとつがコカコーラのロゴ。いやまあ、そう読めないこともないだろうが、とりあえず、これを最初に「発見」したやつはすごい…。

だが陰謀論はあやうい論理で、「陰謀」と決めつけた段階で思考は停止する。そればかりか、「すべて陰謀」という結論を導くために、都合のいい証拠を拾い集めて切り貼りし、誰かを攻撃する材料にもなってしまう。本当に陰謀をするなら、もうちょっとわからないようにやるだろうと言おうとも、陰謀論者にしてみれば「わざと怪しい要素をまぎれこませることが陰謀のコツ」となってしまう。

先日、ユダヤ系英国人のテレビディレクターと会う機会があったので、「陰謀論」についてきいてみた。 彼はこう言って、笑った。

「国際政治の闇から、蚊に刺されたことまで全部ユダヤの仕業にされるんだぜ。俺たち、どんだけすごいんだよ」。

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もうひとつがペプシ。PEPSIに隠された意味が Pay Each Penny Save Israel (払え・わずかな小銭も・イスラエルを救う)というやつ。ちょっと無理すぎると思うが、イランの国営テレビがやってた反シオニスト・キャンペーンにも使われたりしたので、ネタとして笑えなかったりする。

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ユダヤ・十字軍同盟を徹底非難してきたISはというと、意外にもコカコーラやペプシに対して、さほどガチにはならなかった。2015年のIS支配下のモスルの市民生活を伝える公式プロパガンダ写真にも、コカコーラが映り込んでいる。消そうと思えばいくらでも消せたはずなのだが…。(2015年・IS写真・モスル)

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以前の記事、「歌うジハード戦士」でも取り上げたチュニジア出身のIS戦闘員アブ・アハマド。SNSにアップされたプライベート写真がネットでネタにされて、「コカコーラを飲んで、アディダスを着て、ナイキを履いてるジハード戦士」と笑いものにされた。アブ・アハマドは2014年のシリア・コバニ戦を経て、2015年、イラク・サラハディンでイラク軍基地に自爆突撃して死亡。

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近現代のイラクにおいてはユダヤ人は迫害にさらされ、ほとんどのユダヤイラク人は国外に逃れることとなったが、ユダヤ人家屋の一部はいまもイラクに残っている。写真はスレイマニアにあったユダヤ家屋で、アーチ状のレンガの組み方などからイラク人には、一目でユダヤ人家屋とわかるという。(イラク・クルド自治区スレイマニア・撮影:坂本)

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IS宣伝映像にはパレスチナ出身とみられる戦闘員が登場し、イスラエルユダヤを非難したことがある。さらにパレスチナハマスファタハまでも批判した。ところが、欧米で市民を狙ったテロを繰り返す一方、ISはこれまでイスラエルユダヤ関連機関への主だった攻撃はしていない。すると、ここでも「ISの背後にユダヤ」という陰謀論が。(2015年・IS動画・シリア・アレッポ

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【イギリス・IS声明・日本語訳】イスラム国(IS)ロンドン地下鉄爆発物事件・声明(全文)

◆地下鉄車両内に爆発物設置し市民狙う
9月15日、ロンドンで発生した地下鉄車両での爆発事件で、翌日、イスラム国(IS)は犯行を認める声明を出した。実行犯がISの直接指示を受けていたのか、あるいはネット宣伝に感化された一匹狼的な単独犯行だったかは不明。声明では複数の爆発物があったことを示唆している。以下は声明全文。(一部意訳)

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ロンドン地下鉄爆発物事件の翌日、ISはアラビア語と英語で声明を公表。英内務省アンバー・ラッド大臣は「ISが背後にいたかどうかの証拠は見つかっていない」(9月17日時点)としている。声明では「複数の爆発物のうちのひとつを設置」と、その他にも爆発物があったことをうかがわせる内容となっているものの、確認されていない。ISが直接関与したのか、一匹狼型単独犯行を「組織の成果」として利用して声明を発したのかは不明。また最近ではISと関係のない襲撃事件でも「犯行声明」を出す例が出ている。

ロンドン地下鉄駅での爆発物爆発で30名を負傷せしめる

【イギリス】 1438年ズルヒッジャ月24日(ヒジュラ暦

アッラーのお導きを請い、また全能なる御方(=アッラー)への信のもとに、カリフ国の兵士はロンドンの地下鉄(パーソンズ・グリーン駅)において、十字軍の一群の只中に、複数の爆発物のうちのひとつを設置した。これにより、少なくとも30名を負傷せしめた。アッラーの御意のもと、次にはさらに強力で苛烈なることが起きるだろう。万有の御主、アッラーにすべての称讃あれ。

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爆発物か発火物かは不明だが、メディアは「爆発物の一部が爆発」と伝えている。死者はでなかったものの、熱傷などで約30名の負傷者が出た。写真は乗客が撮影した映像を英メディアが伝えたもの。(ITVニュースから)

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事件が起きたのはロンドン・パーソンズグリーン駅。午前8時20分ごろの通勤時間帯を狙ったものとみられる。イギリスでは今年だけでも、複数のテロ事件が起きている。以下の事件の死者数には現場で死亡した実行犯も含まれる。
3月ウェストミンスター車両暴走・ナイフ殺傷・死者6名)IS系アマーク通信声明
5月マンチェスター(コンサート会場での自爆・死者23名)ISが声明
6月ロンドン橋(車両暴走・ナイフ殺傷・死者11名)IS系アマーク通信声明
6月フィンスベリー・パーク(車両暴走・死者1名)
9月・ロンドン・パーソンズグリーン駅(地下鉄車内爆発物)ISが声明
なおフィンスベリー車両暴走市民殺傷事件については、47歳男性がモスク周辺のイスラム教徒を狙ったものとみられ背景が異なっている。 (写真はITVニュースから)

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事件後、警察は容疑者を逮捕。イラク出身のアハメド・ハサン・モハメド・アリ(18)とされる。ほかにも複数の容疑者が逮捕(一部はのちに釈放)されたが、いずれも現時点では背後関係やISとのつながりはわかっていない。(写真はITVニュースから)

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地下鉄車両内爆発事件を伝える英タブロイド紙。デイリーメール紙(右)は、ネット検索で爆弾が容易に製造できる問題点を取り上げている。(2017年9月16日付)

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IS機関紙アン・ナバアは、ロンドン地下鉄車両内爆発事件について記事で取り上げている。これと同時に記事中にはロンドンでの事件の2日後、「イスラム国兵士がフランス・シャルルドゴール空港ターミナルコンテナに爆発物設置」とある。報道では、この時、同空港に着陸した英国エアバス機に爆発物情報があり警察部隊が出動しターミナルが一時閉鎖されたが、「誤通報」とされた。アン・ナバアは爆発物はターミナルに設置したものの、フランス政府が事実を隠蔽としている。一方、ロンドンでの事件と同じ9月15日には、フランスで2件のナイフ切りつけ事件が起きたが、アン・ナバアでは触れていない。(画像はIS機関紙アン・ナバア第98号紙面)

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動画【PKK・日本語訳】クルディスタン労働者党(PKK)カラユラン司令官「8・15武装闘争開始33周年」声明・全文

◆ゲリラ戦力強化をアピール
クルディスタン労働者党(PKK)カラユラン司令官は、武装闘争開始33周年にあたり、ゲリラ戦闘員を前に演説集会を開いた。場所はイラク北部カンディルの山岳地帯とみられる。8月15日はPKKが武装闘争を開始した記念碑的な日として位置づけられ、毎年、戦いに殉じたゲリラを「烈士」として追悼するとともに、闘争方針が明示されてきた。動画は短縮バージョンで、全文テキストのほうが、総括や闘争方針などが詳しく述べられている。以下は動画(短縮版)とテキスト全文版。(一部意訳)

【動画・日本語訳】PKKカラユラン司令官8・15声明(クルド語)転載禁止

ムラット・カラユラン司令官は、トルコで死刑判決を受けて拘置中のオジャラン議長につぐ実質上のナンバー2。「クルディスタン自由ゲリラ」とあるのは、PKKが近年用いている表現で、クルディスタン解放ゲリラというニュアンス。元の動画は30分ぐらあって長いので、短いバージョンに字幕をつけました。(2017年8月・PKK公表映像)(詳細なテキストは以下の全文参照) 

PKKカラユラン司令官8・15声明 (演説)2017

同志諸君、まずもってすべてのクルディスタン自由ゲリラ戦士の名において、8・15決起躍進33周年とオジャラン指導者を祝福したい。ゲリラ戦士としてオジャラン指導者への忠誠と敬愛の念をここにあらためて表明する。クルディスタンと中東の人民、烈士同志の母たち、すべてのわが同志たちの新たな再生の日を祝福したい。

この大いなる抵抗の日を勝ち取ってきたのは、クルディスタン解放闘争の歴史を自身の血で刻んできた英雄的な烈士たちである。偉大な烈士アギット司令官に続いた、革命に殉じた烈士たちを追悼し、彼らへの約束をあらためてここに誓うものである。わが烈士たちが安らかに眠ること願っている。諸君はつねに武器をとり続け、諸君の旗はかつてなきほど高々とたなびき、その大義は勝利を収めるであろう。

8・15決起がもたらした前進は、破壊の淵からわが人民を救っただけでなく、クルディスタンの民族的成果を幾多にも獲得するものであった。それはなによりも、(クルド人民を)再生に導く革命を打ち立てるものであった。

クルド社会は、知的、社会的、そして女性における革命を基軸として再生された。8・15決起躍進は、4つに分断されたクルディスタンのすべてで主要な役割を果たしてきた。北クルディスタン(トルコ・クルド地域)におけるこの戦争が、8・15精神のもとになされたものでなければ、南クルディスタンイラク・クルド地域)と、ロジャヴァ革命(シリア・クルドでの革命)は、いずれも成し遂げられなかったであろう。

いま、中東では戦争が続いている。中東は再編されるということを誰もが知っている。解放闘争とクルド人民はこの戦争の最前面にあり、これによってクルディスタンの敵たちは怒りに打ち震えている。

敵たちはあらゆる方向から攻撃を加えている。とりわけ植民地主義者トルコは、我々のオジャラン指導者、わが人民、わが運動を攻撃している。この2年においては、その攻撃は熾烈を極めてきた。

彼らはまずもってイムラルへの攻撃を加えてきた。
訳注:イムラル島=オジャランPKK指導者がトルコで死刑判決を受け、拘置されているブルサ沖の島)

イムラルで加えられる隔離拘禁と精神的拷問は、クルディスタンの抹殺政策を意味している。現在、イムラル島でなされていることは、すなわちわが人民の意志と未来に対する攻撃なのだ。

我々、クルド人民とその運動は、もはやこれらを容認することはできない。彼ら(=トルコ政府)が、イムラル・システムとクルド人民にいかに敵対しようと無駄である。エルドアンは、今日、自身が生き延びているのは、オジャラン指導者のおかげであることを知るべきだ。すでに言ったことをあらためて繰り返そう。オジャラン指導者の安全が危険にさらされるなら、トルコのすべての指導者たちの身に危険が及ぶと認識しておくがいい。
訳注:オジャラン指導者に万が一のことがあれば、トルコの指導者たちを攻撃するという意味)

この事実は、誰もが知っておくべきことである。我々、クルディスタン自由ゲリラ戦士は、オジャラン指導者の兵士である。我々は自己犠牲精神に満たされた精鋭部隊であり、その使命は、クルディスタン全域の安全を確保することである。

もしクルディスタン・ゲリラ戦士がシンジャルの救援に駆け付けなければ、ヤズディ住民のコミュニティは完全に破壊され、世紀に記録されるさらに過酷な大量虐殺がシンジャルで起きただろう。
訳注:2014年8月、イスラム国(IS)はイラク北部シンジャル一帯を一斉襲撃。住民殺戮が起き、女性や子供が拉致されるなか、一部住民はシンジャル山で包囲され、孤立した。クルド自治政府ペシュメルガ部隊が住民を起き去りにして撤退したなか、PKKと人民防衛隊(YPG)は9月、シリア側からISの前線を突破してヤズディ住民の一部を救出した)

クルディスタン・ゲリラ戦士が、コバニでの抵抗戦と支援の求めに応えて駆け付けなければ、コバニは消滅し、今日までダアシュ(IS)に占領されていたことだろう。もしダアシュがいまのように敗北していなければ、中東全域でより強力に猛威を振るい、人類全体にとって多大な災厄となっていただろう。

クルディスタン・ゲリラ戦士は、課された使命と責務を確固として果たしてきた。いま、これまで以上に勝利的にその任務を遂行するであろう。トルコ国家と軍は、地上でわが軍に対する戦いを維持できはしない。ゆえにこそ空爆を遂行し、自身の課題と守ることに必死になり、存亡をかけているのである。だが植民地主義者トルコは、こうした方途をもってしては生き残ることなどできない。知らしむべきは、AKP-MHPファシズムは、その植民地主義の歴史において最弱の状況を迎えているということである。
訳注:AKP=エルドアンが率いるトルコ公正発展党、MHP=トルコ極右政党の民族主義者行動党)

もはや自由クルディスタン到来の現実をいかなる力をもってしても阻止できないのだ。クルディスタン自由闘争の重要な局面にあって、我々は次の2つを呼びかける。まずもって、民族的統一が招集されねばならず、この重要な局面にあって、わが人民の利益に最大限に応えなければならない。4つに分断されたクルディスタンのすべての地域が共通の民族的戦略を創出し、自由クルディスタン大義のもとの責務を果たすため、一致団結せねばならない。

次の呼びかけは、クルディスタンの青年たちが歴史的かつ重要な局面にあってその役割を果たさねばならないということある。これはクルディスタン防衛部隊を拡大し、強化するうえで、重要で戦略的課題である。クルドの青年たちは、いかなる場を問わず、防衛部隊の戦列に結集すべきである。自身が参加する部隊にかかわらず、重要なことは、クルディスタン防衛部隊を強化することが求められているのであり、その隊伍に加わり、崇高なる任務を果たすことが問われているのだ。

バクール(北=トルコ・クルド地域)を始めとするクルディスタン人民は、AKP-MHP体制が、その終焉を迎えつつあるということである。ファシスト体制はトルコと世界の両方で閉塞状況に陥っている。わが人民の闘争、トルコとその周辺地域の民主勢力、そしてクルディスタン自由ゲリラ戦士は、勝利するのである。

敵は劣勢局面にありながら、虚構を振りまき、未曽有の心理戦争を仕掛けているが、クルディスタン自由闘争はそれをはるかにしのぐ高揚を勝ち取っている。

わが闘争は、クルディスタンだけの自由解放闘争ではない。全中東における革命闘争を同時に意味しているのだ。トルコ植民地主義者に対する勝利を収めることができるなら、クルディスタンが解放されるばかりでなく、トルコもまた民主国家となることがもたらされるであろう。

シリアにおけるロジャヴァ革命が勝利するならば、クルド人民だけでなく、アラブ人民も自由と民主主義にうちに暮らすことが成し遂げられる。言い換えれば、クルド革命は、中東革命となったのであり、人民の自由と民主主義の革命となったのである。オジャラン指導者が切り開いた地平に基づく革命闘争は、クルディスタンにおいて高揚し、これにともなって中東革命が創出されることとなろう。

クルド運動として我々は、次に34周年を迎える8・15を大いなる勝利の年として刻みたい。34年にわたる前進は、クルディスタンの年であり、オジャラン指導者の解放を勝ち取る前進の年となろう。クルディスタン自由ゲリラ運動は、その屈強さを断固として示してきた。

しかしながら、その屈強さだけでは十分とはいえない。クルディスタン自由ゲリラ戦士は、勝利する部隊でなければならないからだ。アポロ教育隊ならびに他の軍事キャンプでの総力活動と軍事教練は大いなる重要性があることを確認したい。

33年におよぶ経験を経て、総力集中を強化し、人的資質、心身、専門知識をいっそう深化させ、近代的で高度なゲリラ戦力を創出せねばならない。これが我々の目標である。次の34年めにあっては、8・15精神の勝利に基づく勝利の行進をもって、高度ゲリラ戦力を確固たるものとするであろう。これをもって、我々はクルディスタン人民の期待に応え、戦いに殉じた烈士同志たちの思いを実現させるのである。

この決意のもと、わが人民と同志たちの再生の日をあらためて祝福したい。8・15精神に貫かれた我々の前進は、必ずや勝利へと向かう。

8・15 精神万歳!
オジャラン指導者万歳!

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8月15日は、1984年にPKKがトルコ軍に対し最初の銃火を放った日とされる。PKKはこの日(8月15日)を15・Tebax (パズデ・テバハ)と呼び、「武装闘争開始記念日」と位置づけてきた。「再生の日」と繰り返し出てくるのは、解放闘争によって抹殺攻撃にさらされていた民族や文化、歴史の「再生」としてあらたな命を勝ち取った日という意味でPKKが近年用いている表現。今年で33周年めにあたり、PKKが建党された1978年11月27日よりも、1984年8月15日のほうが重要視されている。詳細については昨年の「8・15決起32周年声明」参照 >>>

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PKKは、1978年結成。当時、世界各地の民族解放闘争が社会主義的な性格を有していたごとく、クルド民族運動各派も左翼的性向が強かった。当時のPKK党旗にも「鎌と槌」がみられる。のちに社会民主主義路線を押し出し、共産主義色を弱めたが、封建的社会の解体や女性解放などの理念はいまも継承されている。女性ゲリラが多いのもこうしたイデオロギーを背景とする。1999年にオジャラン議長がトルコ当局に逮捕されると、一時、PKKの名を下ろし、中央指導評議会のもと部分的な穏健路線をとる。武装闘争路線は堅持しながら、組織改編を経て、再びPKKに戻る。

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PKKとその周辺組織の相関図。クルディスタン共同体連合(KCK)に包括される民主連合主義がPKKの方針となってきた。トルコで爆弾事件を繰り返してきたクルディスタン自由の鷹(TAK)は、PKKの別働組織とされるが、今年1月以降、目立った事件を起こしていない。推測だが、シリアのクルド組織・人民防衛隊(YPG)が主導するシリア民主軍(SDF)にアメリカがイスラム国(IS)壊滅作戦のための武器支援を強化する方針を決めたなかで、トルコでの民間人殺傷や爆弾事件は停止するという暗黙の合意をアメリカとPKKが交わしたのではないかとも思われる。アメリカでのシリアでのクルド勢力後押しは、将来的にはPKK主導のシリア・クルド自治区の国際的承認にもつながってくる。

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動画の冒頭に挿入された歌は、有名なPKKの革命歌。「赤い花が咲き誇る」という曲名でトルコ語。歌っているグループはコマ・ベルホエダン。トルコではかつて厳しいクルド同化政策がとられてきたため、PKKの初期の歌や出版物にはトルコ語が多数見られた。これまでの闘争を回顧するような映像では、過去の有名な曲が意識的に挿入されている。「赤い花」はゲリラ戦士を指すと同時に、70~80年代のPKKの共産主義路線であった「赤」を示唆している。いまもって戦闘員をゲリラと呼ぶのもその影響から。 

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PKKは近年の声明でさらなる戦闘員増強を打ち出してきた。今回の映像では、約400名のゲリラが映っている。場所はカンディル山脈地帯にあるアポロ軍事キャンプと思われる。イラク北部だが、PKKが活動する主要地域はおもにトルコである。一方、イラククルディスタン自治政府との緊張関係からイラク北西部シンジャルのシリア国境近くでもPKKが拠点化を進めている。カンディル山脈一帯はイラン北東部への出撃拠点ともなっている。

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以前、PKK軍事キャンプを取材したときの写真。左奥はPKK指導部のドゥラン・カルカン司令官。当時はいまのように中東がこれほど短期間に激変するとは思わなかったので、PKKのクルド問題解決への視座や武装闘争の方針などについてインタビューした。のちにトルコでのクーデター未遂とエルドアン政権強権化、シリア内戦やISの台頭。予想しなかったような事態がめまぐるしく現実となって立て続けに起きた。中東再編のなかで、PKKは重要なカギを握る存在のひとつとなっている。

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【IS動画・日本語訳】イスラム国(IS)スペイン出身戦闘員がバルセロナ襲撃を称賛

◆「アンダルースの地を取り戻す」とテロ正当化
イスラム国(IS)は、8月17日にスペイン・バルセロナで起きた同時多発テロについて、事件を称賛する動画を公表。シリア・カイル県広報部門の制作で、スペイン出身の戦闘員がメッセージをスペイン語で発している。カイル県(またはハイルと発音)はISが勝手に作った県で、シリア東部デリゾールにあたる。映像に登場する戦闘員2人も、デリゾール県下にいると思われる。

【IS動画】バルセロナ襲撃を称賛するスペイン出身戦闘員 (一部意訳)

バルセロナ襲撃事件から6日後の8月23日にIS地域カイル県(またはハイル県=デリゾール)広報部門が出した映像。スペイン出身とみられる戦闘員2名が登場し、ベルセロナ・テロを称賛している。映像に挿入された宗教歌(ナシード)はフランス語。これまでフランスでの襲撃事件の際にIS動画でよく使われてきたもの。スペイン語ナシードがなかったため「代用」ではないか。かつてはシリア・イラクでのジハードに参加せよ、と呼びかけが多かったが、IS支配地域に入ることが困難になったなか、各地での襲撃テロを扇動する手法が目立つようになった。(シリア「カイル県」・2017年8月・IS映像)

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IS映像で、戦闘員のひとりはアブ・ライス・アル・クルトゥビとテロップが出てくる。「クルトゥビ」は、スペイン南部コルドバ出身を指す。このIS映像が出ると、登場した戦闘員についてスペインメディアが報道。( La Sexta TVより)

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エル・パイス紙が報じたところでは、アブ・ライス・アル・クルトゥビの本名はムハンマド・ヤシン・アハラム・ペレス(22歳・写真左)で、父アブドラ・アハラム(42)はモロッコ出身で、テロ組織関与容疑で逮捕。12年の刑を受け、ジブラルタル海峡をはさんだ北アフリカのスペイン飛び地セウタの刑務所で服役中。母トマサ(写真右上)はアブドラと結婚した際に改宗。アブ・ライス(ムハンマド・ペレス)は、2014年にきょうだい5人と母トマサとともにシリア入りしたとみられる。左の写真はフェイスブックにアップされたもの。右はスペイン・メディアが報じた、子供時代とされる写真。

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2014年の時点で、スペイン・メディアはISに関係するスペイン出身者の女性らについて報じている。右端がアブ・ライス(ムハンマド・ペレス)の母親、トマサ・ペレス。

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アブ・ライス・アル・クルトゥビは、映像のなかで「アンダルースをかつてのようにイスラムの地として取り戻す」と述べている。かつてスペイン中南部地方は、アル・アンダルースとして約500年間にわたってイスラム圏であった。スペインテレビTele5は2015年に、スペインからシリア入りした「ジハード志願戦闘員」を取り上げた番組を放送したが、そこにはアブ・ライス(ムハンマド・ペレス)のフェイスブック写真も出てくる。

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ISプロパガンダ映像が出ると、スペイン語圏でたちまちにしてネットでネタにされ、パロディが拡散。アブ・ライスのクソコラ・グランプリとなった。

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映像に登場する別の男は、組織内での名前、いわゆるクンヤが「アブ・サルマン・アンダルーシ」とあるので、スペイン南部アンダルシア地方出身と推測される。この戦闘員の本名は不明。(2017年・IS映像)

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今回のIS映像に挿入されている音声スピーチは、昨年空爆で死亡したアブ・ムハンマド・アドナニ広報官の2016年5月声明「生き長らえる者も明証によって生き長らえさせるためである」から。十字軍の地(おもに欧米など)での市民殺戮を呼びかけた。「たとえ石であっても、敵地で投げつければジハード戦士を支え、大いなる効果がある」などと扇動。とくにこの声明以降、自爆や銃撃以外に、トラック、ナイフ、斧を使った市民殺傷テロがヨーロッパ各地であいついだ。「2016/05/21・アドナニ声明」全文 >>

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映像のタイトルの「猛雨の始まり」(または「最初の大雨=アウル・ガイス)とある表現は、ISによる2015年パリ襲撃声明や今年6月のテヘラン襲撃声明でも使われた言葉。イラク人にそのニュアンスをきくと、ISが声明の文脈で使う場合は、戦いの端緒を開く恵みの大雨であり、また、最初のしずくの一滴一滴がいずれ猛雨となる、と、さらなる攻撃や次に起きる大きなことを「良き予兆」として示唆している、ということらしい。

イスラム軍】ナシード「アウル・ガイス」(字幕なし)

この「アウル・ガイス」という歌があって、ISじゃないですがシリア「イスラム軍」のビデオクリップ。この歌自体は普通に親しまれている曲で、武装組織だけでなく一般歌手が歌うものもある。「最初の大雨」というのは、大地への恵みであったり、いい兆し、あるいはこれから何か良いこと、大きなこと起きるときに使われる表現なので、過激主義の歌というわけではない。


スペイン・バルセロナ襲撃IS声明全文 >>

◆IS・イラク・シリア・クルド情勢の
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【スペイン・IS声明・日本語訳】イスラム国(IS)バルセロナ同時多発襲撃事件・声明(全文)

◆爆弾製造失敗し、暴走車両での襲撃に変更か
8月17日、スペイン・バルセロナとカンブリスで市民を狙ったとみられる同時多発襲撃が発生。事件後、イスラム国(IS)が声明を公表した。声明では「十字軍とユダヤ人を120人を死傷させた」とあり、おもにキリスト教世界・西欧社会を指す十字軍に加え「ユダヤ人」と声明に掲げられた点が、これまであいついだ欧米でのテロ事件の際に出された声明と異なっている。(一部意訳)

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スペインでの連続襲撃事件のIS声明。アラビア語と英語で出された。英語は「イスラム国兵士」、アラビア語では「カリフ国兵士」と若干違うもののほぼ同じ。声明が出されたヒジュラ暦1438年ズルカーダ月26日は西暦2017年8月18日。事件の翌日に直ちにIS公式声明が出されている。

【速報】イスラム国兵士がスペインでの攻撃で
十字軍・ユダヤ人120人以上を死傷せしめる

[スペイン] 1438年ズルカーダ月26日(ヒジュラ暦

アッラーのお力添えのもと、火曜日、2つの潜行部隊からなる複数のジハード戦士たちがスペインの十字軍の集団を標的とした同時多発戦を敢行した。第1部隊のジハード戦隊はバルセロナのラス・ランブラスにおいてバンをもって標的を狙った。戦士たちはまた警察検問所において警官2名を轢いた。ラス・ランブラス広場付近の「バー」を小型武器をもって急襲し、内部にいた十字軍とユダヤ人に苦しみを味合わせ、殺害した。

他方、沿岸の町カンブリスにおいて別働部隊がバンで複数の十字軍を轢いた。この祝福されし攻撃戦は、十字軍同盟の市民、120人以上を死傷させる戦果をもたらした。すべての栄誉は、アッラーとその使徒、信徒にある。だが多くの者はこれを知らない。万有の御主、アッラーにすべての称讃あれ。

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IS機関紙アン・ナバア(第95号)が、バルセロナ襲撃事件後に掲載した記事。サグラダファミリア教会の写真が挿入され、「イスラム国兵士がユダヤ人と十字軍の集まる所に攻撃を敢行」とある。事件が起きたのは各国の観光客でにぎわうバルセロナの繁華街で、ユダヤ教イスラエルの関連施設が標的にされたわけではない。事件で犠牲となったのは、スペインのほか、イタリア、ポルトガル、アメリカ、オーストラリアなど多数の観光客が含まれていた。アン・ナバアの紙面にはサグラダファミリア教会の写真が挿入されている。

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バンは大勢の人通りでにぎわうランブラス通りを約550メートル暴走、13人が死亡した。

【動画】バルセロナ・ランブラス通り
バルセロナ・ランブラス通りでの襲撃当日の映像。(YouTube

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ランブラス通りでバンを暴走させ多数の市民を殺傷したユヌス・アブヤクーブ(22)。1995年モロッコ生まれで、バリセロナ北の町リポイで育った。現場から逃走し、途中で車を奪って運転手を殺害。事件から4日後、バルセロナ西南のスビラッツで警官によって射殺された。リポイは主犯格とされるアブデルバキ・アッ・サティがモスクでイマムをしていたと報じられている。

https://cdn-ak2.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/ronahi/20171010/20171010141514.jpg

一連の襲撃事件に関係した容疑者は12人とみられるが、警察は捜査を続けるとしている。地元メディアの情報を総合すると、アルカナーの爆発で死亡したアブデルバキ・アッ・サティ容疑者が主犯格とされ、ほかは若い青年が目立つ。リポイはアブデルバキがモスクでイマムをしていたとされる場所。兄弟や親戚など、近しい関係のなかで襲撃グループが形成されていたことがうかがえる。(容疑者の年齢はメディアによってわずかな相違あり)

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バルセロナ襲撃から数時間後、カンブリスでも車両による襲撃事件が発生。容疑者は5名で、ユヌス・アブヤクーブの弟フセイン(19)と、その親戚のオマル(21)、モハメド(24)ヒシャミ兄弟が含まれていた。。63歳の女性1名が死亡。警察は容疑者5名を射殺(うち1名は病院で死亡)。写真は容疑者が警官に射殺される映像。ランブラス通りとカンブリスでの車両ともにレンタカーだった。

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バルセロナとカンブリス襲撃の前夜、アルカナーで爆発事件が発生。大量のガスボンベや爆薬原料などが発見されたことから、警察はテロに関係する爆弾製造過程での誤爆とみて捜査。現場で死亡した2人のうち、1人はかつてモスクでイマムをしていたアブデルバキ・アッ・サティ(写真右上)とみられ、犯行グループの組織化で中心的役割を果たしていたとされる。警察当局は昨年起きたブリュッセル連続自爆事件にもアブデルバキ容疑者が接点を持っていたのではないかとして捜査を進めている。爆弾製造でサグラダファミリア教会を狙う計画もあったが、この誤爆発のため、残りのメンバーが車両暴走による襲撃い至った可能性を地元メディアは報じている。

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いずれも警察当局の手配写真。左はランブラス通りで襲撃事件を起こし、現場から逃走したユヌス・アブヤクーブ(4日後に警察が発見し、射殺)。右はユヌス・アブヤクーブを含む一連の事件に関与した容疑者らの一部。写真の4人はすべて警察が射殺。

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スペインでの襲撃事件の10日前、ISメディア部門ハヤートが出したプロパガンダ映像では、オーストラリア出身とみられる戦闘員が英語で、「十字軍の地を戦場にせよ」「トラックで群衆に突っ込み、路上をやつらの血で満たしてやれ」などとテロを扇っている。かつてはIS地域への移住呼びかけが多かったが、シリア・イラクのIS支配地域への入域が困難になると、おもに欧米などでの襲撃を扇動するメッセージが増えるようになった。顕著なのは、ナイフや車両暴走、放火など「誰でもできるテロで市民を標的とせよ」としている点である。(2017年8月・IS映像)

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事件翌日のスペイン新聞各紙。黒い喪章で犠牲者を追悼し、「テロに抗して団結」「テロに屈しない」などの見出しで、テロに立ち向かう決意を示している。


スペイン・ラホイ首相「テロ非難の声明」(8月17日) >>
【IS動画】スペイン出身戦闘員バルセロナテロ称賛 >>

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【スペイン】ラホイ首相・バルセロナ・テロ攻撃による犠牲者追悼 (2017/08/17)

◆ラホイ首相、国民の結束呼びかけ
8月17日に起きたスペインのバルセロナとカンブリスで起きたイスラム国(IS)によるとみられる同時多発襲撃事件について、ラホイ首相は、事件を非難するとともに、追悼メッセージを発表した。以下は声明の全文。(一部意訳)

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バルセロナ・カンブリスでの連続襲撃事件を受けて、カタルーニャ自治政府庁舎で緊急会合を開くラホイ首相。事件翌日、イスラム国(IS)が犯行を認める声明を出した。(2017年8月17日・スペイン首相府公表映像より)

ラホイ首相・バルセロナとカンブリスでのテロ攻撃による
犠牲者追悼と国民結束の呼びかけ

カタロニア自治政府庁舎 2017/08/17

みなさん、こんばんは。遅い時間にもかかわらずお集まりいただきありがとうございます。今夜、バルセロナが、襲撃事件の犠牲者、ならびにご家族、友人の方々にとって、悲しみと追悼と連帯の場となるべく、ここに言葉を述べたいと思います。事件への対応は、目下、私たちにとっての最優先事項であります。

ジハード主義テロを世界の他の都市が被ってきたごとく、今日、その深刻な攻撃を受けたバルセロナに、スペイン全体からの連帯を表明したいと思います。

マドリード、パリ、ニース、ブリュッセル、ベルリン、ロンドンの市民は、バルセロナの市民が直面した苦悩と同様の痛みや不安を経験してきました。私はこの言葉をもってこれらの方々にスペインとその他の世界の国々からの同情、連帯、共感の念を述べたく思います。

卑劣な攻撃に対するスペイン国民が受けた痛苦の証しとして、政府は公式追悼期間を2017年8月18日0時から、8月20日にいたる24時間と設定し、その間、公共施設ならびに海軍艦船は半旗を掲揚するよう通達します。

今日、スペインは、とりわけバルセロナは、各地からの同情と連帯を受けとめています。これは他の都市、国々がテロリズムによって攻撃された際に私たちが寄せた同じ思いでもあります。私たちは悲しみだけをもってひとつとなっているのではありません。私たちの価値観、生き方そのものを引き裂こうともくろむ者たちを打ち倒すという強い意志のもとに、ひとつに結束しているのです。

ゆえに私はこの非道なテロリストの攻撃に対処すべく、できる限り早く国家の法執行機関と会合を持ち、カタルーニャ警察ならびにバルセロナ市警察と会合を持ち、緊密な支援と連携を表明するため、ここバルセロナに入りました。

過酷かつ悲しい日となった今日、すべての治安部隊と情報機関、市民防護、緊急対応部門、すなわち我々の安全を監督するすべての機関が、スペイン国民と政府からあらゆる支援を得られると認識することは重要であります。

卑劣な打撃によって私たちが痛苦に直面しているのは事実ですが、幾年にもわたって献身的な活動をしてきた方々が、長年、私たちを守り、幾多の犯罪計画を阻み、将来もこのために尽くしてきたことも疑いない真実であります。
残念ながら、スペイン国民はテロリズムが引き起こした不条理かつ非道に満ちた痛苦を幾度となく経験してきました。直近の歴史においても、テロの惨禍に直面しましたが、テロは必ず敗亡くするということも私たちは知っています。

これは、各機関の結束と、警察の協力、阻止の取り組み、国際支援、そして私たちの文明社会と民主主義、自由と諸個人の権利の価値を守る確固とした決意によって打ち勝つことができるのです。

テロリズムは、これまでスペインにおいて発揮されたような各政党の広範な合意によってもまた打ち勝つことができうるのです。近いうちに私たちの結束と未来のすべての活動の再構築のためにかつてやってきたようなテロ対策協定を導入する予定です。

みなさん。私たちがバルセロナで今日直面したこの惨劇は、世界の他のたくさんの国々が経験した痛みを結ぶものとなりました。今夜、いまこの場をお借りして、支援と連帯のメッセージをお寄せいただいた世界の指導者の方々すべてに感謝の意を表明いたします。

事件対応を最優先するため、指導者諸氏とはお話をする時間がまだとれておりませんが、後日、個別にメッセージのお礼を申し上げたく存じます。

プッチダモン・カタルーニャ州首相にはすでに申し上げましたが、州首相には、スペイン政府と国家が、犠牲者への支援と被害を受けたご家族の対応、また迅速に被害現場を修復し、卑劣な行為の実行犯を裁きにかけるべく、あらゆる最大限の協力を約束することを最後にあらためてお伝えします。

スペイン全体が、ここバルセロナの住民と同じ心情を分かち合っていることもまた知っていただきたく思います。

今日、テロとの戦いは、私たちが暮らしているような自由で開かれた社会にとって、主要な優先課題です。これは世界的な脅威であり、その対処も世界的になされねばなりません。

正義に基づく、そして恐怖と憎しみに従わない自由、人間と社会の尊厳への熱意を共有するすべての者は、同じ意義にもとに結ばれているのです。

さきほど申し上げましたように、私たちは同じ痛みのもとに結ばれているのは事実でありますが、何よりもこの無法かつ非道なる行為を根絶したいという思いのもとに私たちすべてが結ばれているのです。

スペインが確固とした価値のもとに結ばれていることを忘れてはなりません。それは民主主義であり、自由であり、人権といった私たちが誇りとする価値であります。私たちは歴史のなかでテロリズムに対し、幾度も立ち向かい戦ってきました。そして私たちはつねに勝利を収めてきました。いまこの状況に際し、スペイン国民はあらためて勝利することになるでしょう。

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ラホイ首相は声明で犠牲者への追悼とテロ対策の強化について触れ、また国民の結束を呼びかけた。事件では14人が死亡、約100人が重軽傷を負った。(2017年8月17日・スペイン首相府公表映像より)

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サグラダファミリア教会で犠牲者を追悼するミサ。フェリペ国王、ラホイ首相らが参列した。(2017年8月20日・スペイン首相府公表写真)

【スペイン】バルセロナ襲撃事件・IS声明全文 >>

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【動画】イスラム国(IS)空爆被害を報復襲撃の根拠に

◆外国人戦闘員が出身国の言葉で扇動
世界各地であいつぐイスラム過激主義者による襲撃事件。イスラム国(IS)が直接関与したもののほかに、ネットでISの呼びかけに呼応した者が単独で行動を起こす「一匹狼型決起」がある。テロ扇動の理由付けのひとつとなっているのが、IS支配地域での空爆に対する報復だ。ISは空爆被害とその復讐心を煽り、ジハードにためのIS地域への移住招請や欧米など各国での決起扇動の根拠として利用してきた。外国人戦闘員らが、自国の同胞に向けて、それぞれの言葉で呼び掛ける手法は、ISプロパガンダの「スタイル」でもある。

【IS動画】シリア・ラッカ「フランス軍機の空爆の実際」(一部意訳)

2015年11月13日に起きたパリ同時多発テロ事件の直後にISラッカ県広報部門が出した映像。テロへの報復としてフランスはIS拠点への空爆作戦を強化した。爆撃の数日後には、ISが宣伝映像を公開し、実際の空爆現場から「空爆は市民や民間施設を標的」などと戦闘員がフランス語でメッセージを発している。(シリア・ラッカ・2015年11月・IS映像)

【IS動画】イラク・ジャジーラ県・戦闘員が空爆批判メッセージ (一部意訳)

これもパリ襲撃事件の直後に公開された映像で、イラク北部の戦闘員がメッセージを出している。この当時はまだシリア・イラクのIS地域への移住と、各地での決起を同時に呼び掛けていた。映像にはオーストリアチェチェンの出身と思われる戦闘員がそれぞれ登場している。のちにトルコの国境警備が強化され、IS地域入りが難しくなると、「いまいる地域で単独で決起せよ、市民を狙え」と扇動することが多くなっていった。「ジャジーラ県」はISがニナワ県を勝手に分断して作った「県」で、イラク北西部のタラファルとシンジャルを含む地域にあたる。(イラク・ジャジーラ・2015年11月・IS映像)

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【パリ・バタクラン劇場襲撃】2015年11月13日、パリで連続襲撃事件を引き起こしたIS。ニュース映像をプロパガンダ動画に挿入し、襲撃を称賛する映像をあいついで公開。写真は襲撃されたバタクラン劇場から脱出しようとする市民。

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【IS・パリ襲撃犯・アブデルハミド・アバウド】パリ連続襲撃事件の主犯格とされるアブデルハミド・アバウド(組織内部名アブ・ウマル・アル・ベルジキ)。モロッコ系移民としてベルギー生まれ。シリア入りしたのち、再びベルギーに戻り、パリ襲撃を指揮。事件から5日後、潜伏先のアパートで警察特殊部隊に包囲され、銃撃戦ののち死亡。当時28歳。この写真は事件後にISが公開した映像から。「お前たちが我々を空爆し、ムスリムに対する戦争を続けるなら、我々は世界各地でお前たちと戦い続ける」としている。(IS映像)

ISは、自分たちに仕向けられている空爆はすなわちイスラムムスリム住民への攻撃という認識であり、空爆をする限り、我々の戦いは続くのだとする。

だがISが掲げるのは「アッラーの大道のジハードで、シャリーアイスラム法)による統治をこの地上に打ち立て、預言者の道たるカリフ制を成就させるまで戦う」ことである。これに敵対するとISが一方的にみなせば、それはすなわち「アッラーの敵」となり、攻撃対象となる。ゆえに有志連合が空爆をやめれば、各地でのテロをしなくなるというわけではない。

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【ISISが支配していたリビアスルトで、パリ襲撃事件直後に作戦成功を祝って住民にお菓子を配る戦闘員。支配地域各地からパリ襲撃に関する映像や写真報告などのプロパガンダを短期のうちに公開する「手際の良さ」である。中央の統制力とメディア戦略の周到さがうかがえる。(2015年11月・リビア・タラブロス・IS写真))

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【ISイスラム国に敵対する国際同盟」としてISは繰り返し宣伝映像で非難してきた。ISの規定では日本もこのなかに含まれている。(IS映像)

シリア・イラクのほとんどのムスリム住民は、自分たちの空爆被害の復讐に欧米で市民を殺してほしいとか、無差別テロをすればこの戦争が終わるなどとは思っていない。

ISは6月の広報官声明で、いまの過酷な戦いを、「アッラーが与えた試練」と呼びかけた。だが、宗教・宗派の違いを認めず独善に陥り、殺し合いを続けてきた「人間のごう」こそが、神が人間に問い、克服せよと与えた試練なのではないか、とさえ感じてしまう。

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【IS】ISにとっては国連も「不信仰者の民ども」による国家連合という認識。自分たちに歯向かう全世界が敵である。(IS映像)

空爆被害を利用したテロ扇動映像に加え、ISのプロパガンダはさらに過激化していく。のちに空爆現場で斬首や銃殺する「処刑スタイル」が次々と増えていった。
これについては次回 >>

<< 前回 空爆の標的情報伝えるスパイ処刑

◆IS・イラク・シリア・クルド情勢の
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【動画】イスラム(IS)掃討作戦~空爆の標的情報伝えるスパイ処刑

【この記事には残酷な写真が含まれます】
◆ISはスパイを見せしめで殺害
イスラム国(IS)掃討作戦ではイラク軍や有志連合、さらにシリア政府軍やロシア軍が空爆を遂行している。戦闘機、爆撃機のほか、各国の兵器メーカーが製造した攻撃型・偵察型ドローンも投入されている。ISの軍事拠点、幹部の所在に関する情報は、潜入して活動する情報要員や地元協力者によってもたらされる。ISはこれらの情報要員を「十字軍のスパイ」として摘発し、残虐な方法で処刑してきた。

イラク軍・動画】イラク軍 中国製無人攻撃機 CH-4B

イラク軍は各国メーカー製から無人航空機(ドローン)をIS掃討作戦で運用している。偵察用のイランのアバビル3などのほか、攻撃型軍用ドローンとしては中国から調達したレインボー・CH-4B(虹彩4B)も投入。映像はイラク・オバイディ国防大臣(当時)が中国製ドローンCH-4Bを視察した際のもの。レーザー誘導ミサイルも搭載する。上空から地上のIS標的を破壊する。ドローン攻撃や空爆では、標的選定は航空からの映像のほか、IS地域に潜入する情報要員からの情報などから選定される。(2015年10月・イラク国防省映像)

※視聴注意

【IS動画】空爆情報伝えたスパイの処刑 (一部意訳・一部にボカシ処理をしています)

2015年6月にISが公開した映像。IS地域内に潜入してイラク軍に標的情報を伝える情報要員を拘束し、スパイとして「罪状」を告白させたのち、次々と処刑する。ボカシ処理をして一部編集でカットしたが、元の動画では、うめき声や死体のアップも挿入されるなど残虐さが際立っている。冒頭映像に空爆での住民犠牲を挿入して「ムスリム殺戮」と結び付け、スパイ処刑を正当化する構成に仕立てている。残酷な手法で見せしめ的に殺害するのは、裏切り者や工作員を阻止する意図もある。(2015年6月・ニナワ・モスル・IS動画)

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【IS系アマーク通信】IS系アマーク通信が公表したシリア・ラッカでの米軍による橋への爆撃とする映像から。ISは小型撮影ドローンまで飛ばしてユーフラテス河畔にかかる橋の被害状況を伝えている。橋梁や幹線道の破壊は、ISの部隊移動や補給網を断つのには非常に有効である一方、地元住民の生活にも影響が及ぶ。(2017年3月・ラッカ・IS系アマーク通信)

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【IS系アマーク通信】同じくラッカの橋への空爆映像から。IS地域でひそかに活動する情報要員は様々で、信念に基づいて活動する者や報酬目的で協力する者がいる。軍事拠点の場所やIS幹部の所在を電話や伝達者を使ってイラク軍やクルド部隊などに伝え、有志連合も含めて空爆の標的選定がなされる。幹部の車両や自宅が的確に狙われるのはこれらの情報によるところが大きいが、情報が誤っていたり、古かったり、あるいはISに拠点を偽装されると誤爆被害も起きる。(2017年3月・IS系アマーク通信)

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【IS写真】IS支配地域内で活動する情報要員がもたらす情報は、空爆の標的選定で重要な役割を果たす。ISはスパイ摘発を強化し、処刑を繰り返している。このIS写真は2016年、ラッカで「十字軍同盟のスパイ」として、公開の場で磔けにしてナイフで心臓を突き刺す様子。一部をぼかしています。(2016年6月・シリア・ラッカ・IS写真)

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【IS写真群衆のなかには、子どもの姿も見える。首には「スパイ」として罪状を書いた紙がぶら下げられている。広場などで公開で処刑された死体は、数日間、その場に放置されたり、車にロープをつけて引きずり回される。スパイ活動を阻止し、外部に情報提供する者を出さないための見せしめでもある。一部をぼかしています。(2016年6月・シリア・ラッカ・IS写真)

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【ラッカ】対IS戦の現場では、航空機は爆弾だけでなくビラ(伝単)も投下する。これは今月、シリア・ラッカで有志連合機が上空から投下したビラ。IS戦闘員に向けた内容で「諸君の無線機はウソをついていない。諸君の司令官がウソをついているのだ」とある。おそらく、シリア民主軍(SDF)側の無線通信から聞こえるISの劣勢な戦闘状況のなか、君たちのISの司令官は「勝利」を鼓舞して戦闘員を戦わせて死なせ続けているので、それを信じてはいけない、と戦意喪失や戦闘放棄をさせることを狙ったものと思われる。(2017年8月・SDF公表写真)

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【ラッカ】これも同じ日に有志連合機がラッカで投下したビラ。ラッカで密かにメディア活動を続ける「ラッカは静かに虐殺される」がSNSに投稿したもの。こちらは住民向けのビラで、「シリア民主軍(SDF)は、避難民を手厚く保護し、早期に帰還できるよう尽力している」という内容。(2017年8月・「ラッカは静かに虐殺される」公表写真@Raqqa_SL)

ISは、空爆被害を「十字軍によるムスリム殺戮」などとし、欧米などのムスリムに西側世界への敵愾心を植え付け、各地で一般市民を狙った報復テロを呼びかける。
これについては次回  空爆被害を報復の根拠に >>

<< 前回「テロとの戦い」のなかでの空爆犠牲者

◆IS・イラク・シリア・クルド情勢の
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【IS動画・日本語訳】イスラム国(IS)掃討作戦、「テロとの戦い」のなかでの空爆犠牲者

◆繰り返されてきた空爆と住民被害
9・11事件の報復でのアフガニスタン空爆、そしてイラク戦争後の混乱、シリア内戦に乗じ台頭したイスラム国(IS)。米軍の「テロとの戦い」は15年におよび、その過程で多数の住民犠牲も出てきた。空爆と民間人巻き添え。いまもずっと同じことが繰り返されている。他方、ISは被害を巧みに宣伝に利用し、復讐を呼びかける。

【有志連合動画】有志連合によるIS爆弾車両施設への空爆(音声なし・一部意訳)

ISは意図的に住宅地や学校、モスクの近くに軍事物資や爆弾車両製造工場を置くことがある。またIS地域に潜入する情報要員が伝える標的情報が誤っている場合もある。そうしたなかで地区が空爆され、住民が死傷すると、「罪なきムスリムの子どもや女性が狙われた」とする。爆撃する側も、標的の破壊効果があると判断すれば、巻き添え犠牲が出るとわかっていても爆撃を遂行することもある。映像は、有志連合が今年2月末に公開した「モスルでのIS爆弾車両施設への空爆」の映像。(2017年2月・CJTF-OIR映像・音声なし)

【IS動画】空爆と住民被害見舞金(一部意訳)

2015年5月公開の「イラク・モスルでの空爆被害」を伝える映像。ISのザカート(喜捨)配布部門が空爆被害を受けた住民に見舞金を配る様子を紹介している。見舞金が支配地域で制度として犠牲者全員に給付されているのか、宣伝のためだけなのかは不明。住民は双方の戦闘のはざまで逃げることもできず、犠牲となれば、ISはその死や犠牲を宣伝映像に利用する。ISは映像で「十字軍 VS ジハード戦士」ではなく、ムスリムイスラム教徒)が被害者となっていると描く。 「十字軍 VS イスラム」の構図で空爆被害を伝え、これが各地のムスリム同胞に向けたシリア・イラクでのジハード参加の招請や、復讐心を煽って欧米諸国での報復決起の理由付けとして利用されてきた。(IS映像・2015年・イラク・ニナワ県モスル)

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【IS画像】イラク、シリアでは、クラスター爆弾白リン弾も使われ、ISは機関紙で取り上げてきた。左はクラスター爆弾、右は白リン弾。右画像では白リン弾が身体機関に及ぼす被害や退避方法まで詳述している。自らの被害と爆弾の非人道性を押し出すが、IS側も戦闘現場で化学成分を含んだ砲弾を使用するなどしてきた。(2017年・IS機関紙ナバア・93号/85号) 

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【IS写真】IS機関誌ルミーヤが掲載した、モスルの医療施設に向けて白リン弾が使用されたとする写真。ISはプロパガンダを通じて、民間被害を強調する。ISも病院を標的に自爆攻撃をしてきたが、こうしたことについてはISメディアでは公表していない。ISはムスリム住民の被害を宣伝で伝えるが、住民を「人間の盾」に使ったり、支配地域外の住宅地に向けて砲撃している。犠牲者はいずれもムスリムである。(2017年・IS機関誌ルミーヤ12号)

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【IS系アマーク通信】米軍主導の有志連合、そしてロシア軍は「テロ組織掃討」の名のもとに軍事作戦を続け、その結果、子どもや女性が巻き添えとなってきた。何よりも悲しいのはシリア、イラクとも政府が自国民に向けて爆弾を落としているという事実である。誤爆や巻き添え被害が起きても「すべてISが悪いから仕方ない」で片づけられ、調査はされず、作戦指揮官が責任を問われることもない。(2017年・ラッカ・IS系アマーク通信)

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ファルージャ空爆少し時を遡ってみる。これは2004年にイラクファルージャが米軍の武装勢力掃討作戦で空爆された時のもの。このとき米軍はクラスター爆弾も使っている。戦闘のはざまで700人を超える住民が死亡。墓地が足らずサッカー場に遺体を埋め、墓石がないので道路の敷石に名前を書いていた。イラクでは当時からいまにいたるまで、同じことがずっと続いてきた。ISの台頭は、こうしたいくつもの事件の延長線上で生来した事態でもある。そして内戦に陥ったシリアにも空爆と住民被害が広がることになった。(2004年・イラクファルージャ・撮影・坂本)

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ファルージャ空爆ファルージャでの米軍による空爆で重傷を負った女性。バグダッドの診療所に搬送されてきた。流産したうえ、家族と親戚あわせて20人が亡くなった。空爆では、標的を外れて民間人が巻き込まれる「誤爆被害」だけでなく、民間人が死傷しても目標を破壊する上での「想定内犠牲」を前提として爆撃が遂行される。「戦争とはそういうもの」とはいえ、テロ組織壊滅のために市民の犠牲が容認されてきた現実はあまりに不条理といえる。(2004年・イラクファルージャ・撮影・坂本)

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ファルージャ空爆2004年のファルージャ空爆の頃といまと違う点は何かというと、当時は地元スンニ派住民や武装組織に、シーア派が支援を表明していたこと。イラク占領に抗する反米闘争という愛国主義的性格があったためだ。この写真はバグダッドスンニ派地区のモスクにシーア派が「ファルージャ空爆非難・反米抵抗闘争連帯」で結集し、ブッシュ打倒を叫んでいた。いまではありえない宗派合同礼拝の反米集会である。のちにイラクナショナリズムではなく、宗派アイデンティティが前面に押し出され、スンニ派シーア派の宗派抗争が先鋭化し、両派の武装組織が殺しあう状況に。もうひとつ当時と現在が異なるのは、以前はネットでの動画環境は限られたものだったのが、いまISはネットを通じて空爆被害映像を伝え、世界のムスリムに向けてプロパガンダを直接発信して報復を扇動しているという点である。(2004年・イラクバグダッド・撮影:坂本)

ISは、異教徒を殺害・奴隷化したり、子どもに捕虜処刑や自爆突撃を強いる過激組織である。一方、その掃討作戦のなかで、ISとは何の関係もない住民が犠牲となっている現実も押さえておくべきだろう。 空爆への報復として、ISは拘束したスパイを処刑し、プロパガンダ映像で公開してきた。
これについては 次回 >> (空爆情報伝えるスパイ処刑)
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【動画・日本語訳】空爆による住民被害をイスラム国(IS)はプロパガンダでどう伝えているのか

「十字軍同盟VSイスラム」の構図で描く
イスラム国(IS)拠点に対して続く空爆。車両や軍事施設を狙った爆撃では、住民も巻き添えとなっている。住民被害が出るとISは宣伝映像で公開し、「十字軍同盟がムスリムを殺戮している」という構図で伝えてきた。これがのちに、世界各地での報復テロの決起扇動につながっていく。

【IS動画1】有志連合の空爆による住民犠牲(一部意訳)

2015年6月に公開されたIS映像。シリア・アレッポ県コバニ近郊の村での60人以上が犠牲となった空爆での家族を殺された住民の怒りの声を伝えている。この事件はコバニとマンビジ間の村で起きた。映像には「十字軍によるムスリムへの空爆」とタイトルがつけられ、死傷した子どもたちを映し出している。(2015年・IS映像)

【IS動画2】有志連合の空爆による住民犠牲(一部意訳)

2015年11月公開のイラク・モスルでの空爆被害映像。タイトルは「十字軍・サファウィによるムスリム住民に対する空爆」となっている。イラクでは無人攻撃機を含む政府軍機と有志連合機がIS拠点を爆撃してきた。「サファウィ」とはサファヴィ朝ペルシアのことで、ISは「現代のペルシア帝国たるイランの後押しを受けたイラクシーア派政府」という位置づけで使っている。「イラク政府は西側キリスト教世界の十字軍と結託してムスリムを殺戮している」とISは描く。日本やイスラム諸国であっても、対ISテロで一致協力する国々は「十字軍の同盟国」とISは規定。挿入された歌は、「この屈辱、なぜゆえに」というナシード。住民犠牲が出たり、過酷な試練に直面する動画でよく使われる。空爆被害に「苦難と屈辱にさらされるウンマイスラム共同体とその民)」とする歌詞を重ね、心情に訴えかけるつくりになっている。(2015年11月・IS映像)

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【IS系アマーク通信】IS系メディアが伝えるイラク・モスルでの空爆被害者の映像。ISプロパガンダの一部であることに踏まえた上で見るべきだが、もしIS側のメディアがこうした映像を出さなければ、有志連合やイラク政府、シリア政府は住民被害の状況を伝えただろうか。テロ扇動を防ぐためにIS映像はすぐにネット上から消される。若者が感化されたり戦闘員のリクルート活動に使われないよう一定の規制はしかたない部分もある。だが住民犠牲の事実までなかったことにされるべきではないだろう。(IS系アマーク通信・2017年2月・イラク・モスル)

 

空爆と住民被害については
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