イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

【シリア】クルド・人民防衛隊(YPG)戦闘服から見る内戦(3)写真19枚 (全3回)

◆ISとの戦いのなかで
世界各地で無差別市民殺傷事件を引き起こしたイスラム国(IS)。各国がIS対策を進めるなか、シリアの最前線で戦ってきたクルド・人民防衛隊(YPG)。IS掃討作戦では、米軍は規模を限定しつつもYPGに武器や物資を支援した。そのなかには戦闘服も含まれる。IS掃討戦で存在感を高めたクルド勢力だが、YPGとシリア民主軍(SDF)のこれまでの戦死者は約1万におよび、大きな犠牲も払ってきた。シリア・クルド勢力の戦闘服から見る内戦、第3回。
全3回 第1回第2回第3回

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昨年取材した写真。パターンと形状の違う戦闘服で並んでもらって撮った。中央と左がポケット斜めタイプで、MARPATタイプとマルチカムタイプ迷彩。デジタルパターンでも中央と右とでは微妙に違う。右の色合いはAOR2っぽい。いずれも斜めポケットタイプが新型でアメリカの支援物資ということだった。(2018年10月撮影)

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2014年末のコバニのYPG部隊。当時の戦闘服や武器が足らなかった頃と比べると、いまでは米軍がIS掃討戦でクルド勢力を支援するようになるなど、政治状況も大きく変わった。ただしIS壊滅させたのち、アメリカがシリア・クルドとの政治関係をどうするのかは不明。「国なき民・クルド」は、大国からの「裏切り」を繰り返し経験してきた歴史がある。(撮影:坂本)

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ISが急速に台頭したなか、欧米でYPG・YPJが政治的な注目を浴びる。2105年2月、YPJナスリン・アブドラ司令官は、フランス大統領官邸エリゼ宮に招かれ、戦闘服でオランド大統領(当時)と会見。この年の11月、ISによるパリ連続襲撃事件がは発生、フランス軍がIS掃討戦をさらに強化。有志連合としてIS拠点空爆のほか、シリア・クルド地域にも地上部隊を派兵する。一方、トルコは対峙してきたクルド勢力の影響力拡大に危機感を募らせ、IS掃討と地域保全の名目でのちにシリア北部に軍事侵攻する事態に。(2015年2月・フランス大統領府写真)

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整列するYPG・YPJの戦闘員。(撮影:坂本)

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いろいろ写真を紹介したなかで、最強のレア写真ならこれ。YPJ女子さんの靴下撮らしてもらった。ウサギさんなどのキャラで、顔部分に唇が縫い込んでプチ立体仕様デザイン。YPJ全員ではないものの、シリアでは流行ってるらしい。こんな小さな足の女性も銃を持って熾烈なIS掃討作戦で戦っている。(撮影:坂本)

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これはマンビジの前線で見かけたペンギンさん。

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「レア写真やで」で終わらせないよう、気になったので、市場に行って同じ靴下探してみた。シリア製の靴下だった。日本円換算で約90円。とりあえず数種類購入。(撮影:坂本)

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どうぶつ靴下の下にはシリア製の謎キティちゃんも。(撮影:坂本)

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YPG戦闘員は運動靴。PKK共通が多い。トルコMEKAP(メカップ)社の茶色シューズが有名で「PKK制式靴」とまでいわれるほど。トルコ南東部ではこの靴を所持してて拘束された例も。トルコ政府はMEKAP社に圧力をかけ押収などしてきた。写真左YPG・写真右PKK。(撮影:坂本)

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靴下撮影に協力してくれたYPJ女子さん。

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「女子の靴下かわいい」でない、戦争の現実も伝えておきたい。2015年のIS映像でシリア・ハカサの戦闘。ISが殺害したYPG・YPJ戦闘員の死体を積み上げている。YPJ女性戦闘員と思われる。いま我々と同じ時代を生きる彼ら・彼女らが、戦いの只中にあり、今日も命を落とし、また同時に誰かを殺している(写真一部ぼかし)

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シリア・コバニにある「戦死烈士追悼墓地」。ここだけでも毎週のように戦死者が運ばれてきて、家族がときおりやってきて死んだ息子や娘を偲ぶ。そして彼らが殺す敵にも同じように家族がいる。いまも続く戦争の現実。(撮影:坂本)

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シリアでは多くの住民が戦火にさらされ、故郷を追われた。誰もが否応なく銃をとって戦場で戦っている。YPJ女性戦闘員セルヒルダン(本名エルミン・19歳)はこの写真を撮った3週間後、ISとの戦闘で戦死。コバニの村出身で故郷守りたいとの思いからYPJに入隊。透き通るような緑の瞳だった。(2014年12月・撮影:坂本)

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クルド・YPGが実質主導したシリア民主軍(SDF)は、シリアのIS掃討作戦で大きな役割を果たした。3月にIS最終拠点バグーズはSDFに制圧されたが、スリーパーセルや潜伏要員が爆弾事件や暗殺を繰り返している。こうした状況に合わせ、特殊部隊・地域防衛など任務や地域の役割ごとに部隊再編が進められている。(2018年3月・SDF映像)

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中央の星条旗記章をつけているのはシリア駐留米軍。軍事教練を終えたSDF部隊の編成式などを視察するなどしている。IS掃討戦で政治的影響力を確立しようとするクルド勢力。大国に裏切られてきた国なき民・クルドは、国連にも頼ることはできない。国際社会での存在意義や政治的地位を獲得するためには、多数の戦死者という多大な犠牲を自ら払うしかなかったのが、クルド民族の悲劇でもある。(2018年3月・SDF映像)

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戦闘服も部隊の任務によって異なっている。この砂漠迷彩の戦闘服は、自主防衛隊(HXP・デファイ・アルダアタ)で、おもに地域・地区の防衛を担う。クルド人、アラブ人地域のそれぞれで編成が進む。内戦で経済が破綻したなか、給料がもらえる防衛組織は町や村の若者にとっては収入源の確保につながる。貧困が過激主義組織台頭の一因ともなってきた側面があるので、生活の安定は、治安維持にとっても重要である。(2018年3月・SDF映像)

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地域安定を最優先にして即席で兵員を養成すると、兵士の規律や風紀の乱れなど問題も起きる。SDFは憲兵隊(インズバット・アスケリ)を編成。部隊内部の規律監視にほか、問題行動を起こした兵士への住民の苦情を受付するなどしている。戦闘服は砂漠デジタル迷彩。戦闘服は砂漠デジタル迷彩に赤いベレー。(2018年4月・SDF映像)

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3月末、IS拠点バグーズを制圧し、ラッカで戦勝パレードをするYPG・SDF。ハンヴィ(左)もIAGガーディアン装甲車(右)もアメリカからの支援。とくに右のIAG装甲車は、IS壊滅を公約にしたトランプが大統領就任直後に供与されたことから「トランプからの贈り物」と呼ばれる。(2018年3月・SDF映像)

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SDFが公開したデリゾールでの軍事教練隊開設式。トランプ大統領は、IS壊滅が迫った昨年末、シリアから米軍撤退を表明し、これがマティス国防長官辞任のきっかけともなったと報じられた。その後、イラン情勢もからんでトランプ大統領は一部の米軍部隊駐留継続に方針転換。アサド大統領やイラク政府と関係を強めてきたイランの中東での影響力伸張を、シリア北部に米軍が駐留基盤を維持することでくさびを打ち込む形で牽制することもできる。YPG・SDFの支援関係は、米国・イラン・ロシアなどの国際関係に影響されるものとなっている。(2018年4月・SDF映像)

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【シリア】クルド・人民防衛隊(YPG)戦闘服から見る内戦(2)写真14枚 (全3回) 

◆YPGほか対テロ部隊(YAT)
クルド・人民防衛隊(YPG)指揮下の対テロ特殊部隊(YAT)は、ISとの最前線でもっとも果敢に戦ってきた部隊だ。IS掃討作戦で派遣された米軍特殊部隊から軍事訓練を受けてきた精鋭である。その戦闘服は黒ベースの迷彩。シリア・クルド勢力の戦闘服から見る内戦、第2回。
全3回 第1回第2回第3回

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クルド・YPGの精鋭組織には対テロ特殊部隊(YAT=イェクニエン・アンティ・テロル)があってIS掃討や敵対勢力の摘発・制圧が任務。対IS戦の一環として一部部隊は米軍特殊部隊の軍事訓練受けてきた。戦闘服は黒一色と思っていたが、じつは黒ベース迷彩。(YAT映像)

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対テロ特殊部隊(YAT)戦闘服の黒ベース迷彩を見せてもらう。生地はイラン製で縫製はシリア内とのことだった。生地がイラン製なだけでイラン政府が支援してるわけではない。(撮影:坂本)

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2014年にコバニに侵攻したISとの攻防戦を総指揮したYPG司令官マハムード・ベルホェダンと4年ぶりに再会。昨年、トルコ軍・シリア反体制派連合がアフリン侵攻した際にはYPGアフリン管区総司令官。現在は対テロ特殊部隊(YAT)の指揮官。YATの黒ベースの迷彩。(撮影:坂本) 2014年のインタビューはこちら>>

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YPG指揮下のYATのほかに、最近はシリア民主軍(SDF)指揮下でも特殊部隊編成が進められている。これは先月、ユーフラテス地域管区「コマンド部隊」(ヘゼン・コマンドズ)120名が4か月の軍事教練後に宣誓式と演武をしたときの映像から。同様の黒ベース迷彩服。(SDF映像)

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 YPG/YPJ以外には、警察部門(アサイシ)の対テロ特殊部隊(HAT)がある。これはアフリンの女性隊員の写真と思われる。(SNS写真より)

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YPGの女性部門、女性防衛隊(YPJ)の徽章(パッチ)撮らしてもらった。徽章(記章)はクルド語でニシャン。アラビア語は何というか知らないが、たぶんタスヒーフル・アスケリーユ(軍章)か、わからない。(撮影:坂本)

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クルド労働者党(PKK)オジャラン指導者。文字は「指導者なくして我らの人生なく」。オジャラン指導者はトルコで死刑判決受け収監中。欧米諸国も「PKK=テロ組織」指定するも、米国主導の有志連合はPKKが実質的母体のYPGにIS掃討戦で軍事支援という国際政治の実際。今後は「オジャラン肖像記章」は自制していくということだった。アメリカとの関係も考慮していると思われる。(撮影:坂本)

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これはYPG・YPJ忠誠式(ソンド)。軍事教練修了しての服務宣誓。銃とオジャラン指導者の書籍の前に手を置いて命を懸けて故郷と人民のために戦うことを誓う。(YPG映像)

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YPG・YPJはいわゆる一般正規軍のような細分化された階級呼称はないものの、司令官(クルド語=フェルマンダール)と総司令(フェルマンダーレ・ギシティ)とか部隊長や班長はある。将来的には階級が整備されるかもしれないという話も聞いた。画像は整列・点呼イチティマのようす。PKK式を踏襲した、同じ整列・点呼の号令だった。(YPG映像)

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2015年6月、ISはいったん退却していたコバニを再び攻撃。このとき、YPG戦闘服や、当時IS掃討戦で共闘していた自由シリア軍の戦闘服で偽装したIS戦闘員、約80人がひそかに町や村に侵入。3連続自爆攻撃や襲撃で住民200人以上が犠牲となった。これらの事件が背景となり、YPGは一般商店での戦闘服の流通を制限。(2015年:ANHA通信映像)

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YPGは戦闘服がISに偽装されるのを防ぐため一般市場にはむやみに流通させないようになった。徽章(パッチ)は売ってるところあるものの「お土産・資料」などの目的でも所持してると対立地域でスパイとみなされる危険も。外国人だと、シリア周辺国でも容疑かけられ逮捕、拘束の可能性もある。(撮影:坂本)

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以前作った図ですが参考になると思います(図をクリックすると拡大)。シリア民主軍(SDF)に参加・共闘する武装諸派。合計の兵力規模は5万~6万人前後。多様な組織の連合体であるが、実質的にはYPG主導。赤い枠で囲んだ部分は、主観ながら、PKKの影響度が強い組織。シリアのキリスト教系組織はシリア正教やアッシリア人組織。このほかSDFには各国の左翼義勇兵らが参加する国際自由大隊(IFB)なども参加。

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店の棚の上にあったステンレス水筒「フッ素コート」の日本語文字がYPGと並んでてかなりシュール。検索したら象印っぽいけが、じつは酷似ラベル使ってるアジアの別メーカーらしい。(撮影:坂本)

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ところで、シリア内戦各派コスプレ写真とかは、やめたといたほうがいい。トルコはYPGを「テロ組織」規定。さらにISは日本人を含む市民を多数殺害するなど、各国情報機関は「最重要警戒の国際テロ組織」として監視対象になっている。ISコスプレをSNSで世界に発信すると誤認されたり、支持者とみなされて「ネタ」で済まなくなることも。日本の公安当局もテロ対策で警戒してるので、ISコスプレマニアは潜在的支持層とみなされて、身元特定とかぐらいはされる可能性あるかも。なのでキュートンぐらいが無難。  第3回へ >>

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【シリア】クルド・人民防衛隊(YPG)戦闘服から見る内戦(1)写真23枚 (全3回) 

◆YPG戦闘服の変遷
シリアが内戦となり、各派の武装化が進むなかで、戦闘服も変遷をたどってきた。クルド人主体の武装組織・人民防衛隊(YPG)は、米海兵隊のデジタル迷彩MARPAT模様で知られるが、イスラム国(IS)掃討戦の過程で米軍が戦闘服支援し、マルチカム迷彩も登場。YPG戦闘服の初期から、現在に至るまでの変遷から政治関係も垣間見える。
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シリアのクルド人主体の武装組織・人民防衛隊(YPG)。半分近くが女性戦闘員で、女性防衛隊(YPJ)を構成する。(撮影:坂本)

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YPGが公開した戦闘服縫製工場。場所はシリア北東の油田の町ルメイラン。(YPG映像)

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以前、YPG司令部で聞いたら迷彩布の生地ロール原価は1メートルあたり200円前後。シリアではだいたいこの値段なので、地域差はあれど、IS戦闘服の生地価格もほぼ同じと思われる。(YPG映像)

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縫製はかりしっかりしていて丈夫。(YPGJ映像)

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シリアが内戦になると、ロジャヴァ(シリア・クルド地域)防衛部隊として、人民防衛隊(YPG)とその女性組織(YPJ)が編成される。当初は地域によっては戦闘服も行きわたらず、かき集めたジーンズや緑セーターだった。補給網が閉ざされた戦線では、こうした戦闘服で自由シリア軍、ヌスラ戦線、そしてその後のISと戦っていた時期があった。

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ルメイランの戦闘服縫製工場。戦闘服は、クルド語で「ジレ・シェルヴァン」と呼ばれる。縫製工場では量産化が進み、各戦線の部隊に供給されるように。(YPGJ映像)

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2014年9月、ISはコバニに総攻撃をかけ、町を包囲。YPG側は、徹底抗戦したが、ISの猛攻で犠牲者が続出し、戦闘員が不足。地元シリアのクルド人のほか、トルコのクルド人がトルコ国境をひそかに越えて、コバニに入った。戦闘服が足らず、一部の部隊ではトルコ軍が使う迷彩生地などを持ってくるなどありあわせの材料で戦闘服にしていた。(撮影:2014年)

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2014年、コバニの前線で戦うYPG戦闘員。ISが一斉射撃で銃弾を撃ち込んできた。戦闘服はカミシュロのある東部のジャジーラ地域から運ばれてきていたが、その中間のテルアブヤッド一帯はISが支配し、補給網は寸断されていた。(撮影:坂本)

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昨年、シリアで撮ったYPG戦闘服。デジタル迷彩パターンは米海兵隊MARPATタイプ。でも戦闘服の肩章ループ部分のあたりとかは米海兵隊とは異なっている。(2018年取材時に撮影)

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MARPATタイプ迷彩。縫製はけっこうしっかりしていて、夏用は背中裏生地がメッシュだった。

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戦闘員たちによると、メッシュのほうが通気性がよくて快適と言っていた。

f:id:ronahi:20190627202336j:plain「5.11」のロゴがあった。「5.11」関連のグッズはシリアでもイラクでも出まわっていた。だが本物の5.11製かどうかは不明。(撮影:坂本)

f:id:ronahi:20190627202354j:plainこれは上衣だが、74251で5.11サイト検索すると、タクティカルパンツシリーズの型番だった…。

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YPGの現行戦闘服の全体像。胸ポケット形状がまっすぐ。(撮影:坂本)

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こちらは新型タイプで胸ポケット形状が斜め。「これはシリア製じゃなくアメリカ製」とみんなが言っていた。アメリカがYPG戦闘服を支援しているかは明らかではないが、IS掃討作戦の一環で支援してる可能性はあると思われる。(撮影:坂本)

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新型タイプの襟首部分タグのサイズ表記はインチ。シリアは日本と同じセンチ表記なので、もしアメリカ製ならYPG戦闘服の一部をアメリカで作って支援ということに。(撮影:坂本)

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ズボン(パンツ)の太もも部分のポケット。ちゃんとしたBDUっぽい細かい仕様になっていた。(撮影:坂本)

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YPGの一部で最近採用されだした新型戦闘服マルチカム。「アメリカ製やで」と戦闘員は言っていた。これも襟首タグはインチ表記なのでアメリカの支援物資の可能性。かなり米軍の戦闘服っぽく見えるものの、肩章ループあったりと微妙に違う。胸ポケット形状は斜め。(撮影:坂本)

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マルチカムのもうちょいアップしたやつ。襟部分のタグはインチ表記。

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どのタイプのマルチカムをベースにしてるかはわからないが、こんな感じ。

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YPG戦闘服のMARPATタイプとマルチカムタイプ比べてみた。YPGは「アメリカの支援」と言っていたが、アメリカからのYPG武器支援は、トルコの強力な反対もあって、小型火器(一部中型)に限定されていて、武器以外の「戦闘服供与」はありうる。(撮影:坂本)

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国防総省会計のシリア民主軍(SDF)等への武器供与リスト。実質的にはYPGも含まれる。2017年AK47=1万丁から昨年度は2万5千丁に。戦闘服の記載はないが、昨年度だけでもPKM(X1500)、SVD狙撃銃(X95)など武器支援は増加。赤枠の「国防総省は武器流用を監視」は、米国が支援するシリア反体制派が武器転用する可能性を意識したもので、そのもっとも大きな問題が、トルコがYPGと一体とみなすクルディスタン労働者党(PKK)への流用とトルコ側の反発を意識したもの。 第2回へ >>

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トランプ大統領就任以降シリア民主軍支援は拡大。ただし対戦車誘導ミサイルなどトルコ軍の脅威となる武器は制限。写真右は米国供与の装甲車。左は有志連合でIS掃討作戦調整してきたマクガーク米特使。シリア撤退発表のトランプに抗議し辞任。トランプは「知らない人」とバッサリ。マクガーク特使が、シリアでのIS掃討戦における一連のYPG支援とその調整を進めてきた。
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IS機関紙ナバア・ヘッドライン【11】(2019年1~4月)163~178号

◆IS機関紙ナバア(2019年1~4月)163~178号
イスラム国(IS)機関紙 アン・ナバアのヘッドライン
◆ISの週刊発行プロパガンダ紙であり、いずれもIS大本営発表(IS動向の検証資料として掲載しています。残酷画像は一部ぼかし処理しています)
※印はメディア報道情報などをもとにした注釈 Research + Analysis

一覧】【】【】【】【】【】【】【】【10【11】

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IS機関紙ナバア(163号)◆ナイジェリア軍要員を各所で襲撃140名殺害◆アフガンでタリバンら殺害◆シリア・マンビジでPKK要員(YPG・SDFを指す)暗殺◆イラクキルクークで警察車両攻撃◆イラク・サラハディンでスパイ処断◆6日間「戦果」計72作戦 302名以上殺傷◆2019/01/03

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IS機関紙ナバア(164号)◆PKK(YPG・SDFを指す)4か月「戦果」271作戦910名以上殺傷◆シリア・デリゾール一帯で攻撃PKK30名以上殺傷◆ラッカ自爆+暗殺戦17名殺傷◆アフガンでタリバン2名殺害◆ナイジェリア軍33名殺害◆6日間「戦果」計71作戦191名以上殺傷◆2019/01/10

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IS機関紙ナバア(165号)◆シリア・マンビジ自爆攻撃・米兵ら9名殺傷◆アフガン・コレンガル渓谷統制下に◆ロシア南部チェリャビンスクのアパート崩落は「IS兵士による爆破」(※2018年12月31日、マグニトゴルスクのガス爆発でアパートが崩落、39人が死亡。ISとの関係を示す証拠は見つかっていない)◆ナイジェリア軍多数殺傷◆6日間「戦果」計74作戦200名以上殺傷◆2019/01/17

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IS機関紙ナバア(166号)◆シリア・ハサカ・シャダーディ米軍装甲車両車列に自爆突撃戦・PKK(YPG・SDFを指す)13名以上殺傷・マンビジ米兵殺害に続く連続攻撃◆ハサカPKK要員連続暗殺22名以上殺傷◆ナイジェリア軍殺傷◆6日間「戦果」計68作戦231名以上殺傷◆2019/01/24

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IS機関紙ナバア(167号)◆フィリピン・ミンダナオ・ホロ島キリスト教会に自爆殉教攻撃120名殺傷◆バグーズでPKK(YPG・SDFを指す)に自爆2攻撃◆エジプト軍殺害・車両破壊◆カフカス・スタヴロポリ地方で治安検問所攻撃◆6日間「戦果」計69作戦363名以上殺傷◆2019/01/31

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IS機関紙ナバア(168号)◆ナイジェリア軍をボルノで攻撃20名殺害・戦車破壊◆北バグダッドで暗殺+待ち伏せ攻撃、軍兵士+民兵9名殺傷◆アフガン警官に暗殺爆破攻撃3名殺害◆フィリピン・スールー州ホロ島で軍兵士23名殺傷◆6日間「戦果」計74作戦191名以上殺傷◆2019/02/07

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IS機関紙ナバア(169号)◆ナイジェリア北東部ボルノ州知事車列に待ち伏せ攻撃多数殺傷◆シリア・ラッカ評議員2名殺害◆デリゾール南東バグーズでPKK(YPG・SDFを指す)に連続自爆攻撃+対戦車誘導ミサイルで多数殺傷◆6日間「戦果」計79作戦197名以上殺傷◆2019/02/14

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IS機関紙ナバア(170号)◆エジプト・シナイ半島エルアリシュで軍兵士20名殺害◆フィリピン南部スールー州ホロ島パティクルで軍兵士2名殺害◆イエメンでアルカイダとフーシ派勢力を攻撃◆地雷解説(対人地雷・対戦車地雷・即製爆弾)◆6日間「戦果」計51作戦134名以上殺傷◆2019/02/21

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IS機関紙ナバア(171号)◆ナイジェリア・マイドゥグリ空港に連続ロケット弾攻撃◆イラク・モスルで軍情報部要員殺害◆チュニジア、スパイ処刑◆中国共産党政府の反イスラム政策を1ページにわたって批判「共産主義者の犯罪的所業を阻止せよ」◆6日間「戦果」計51作戦 140名以上殺傷◆2019/02/28

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IS機関紙ナバア(172号)◆アフガン・ナンガハル空港イングマスィ突撃、米兵含む64名殺傷◆イラク・バドル民兵暗殺◆サラハディンで軍情報部殺傷◆サハラ砂漠ジハード組織バグダディへの忠誠表明◆シリア・デリゾールとラッカでPKK(YPG・SDFを指す)殺害◆6日間「戦果」計44作戦156名以上殺傷◆2019/03/07

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IS機関紙ナバア(173号)◆アフガン・カブールでシーア派集会攻撃110名殺傷◆シリア・マンビジ自爆攻撃、米兵3名殺傷◆シリア・バグーズの空爆で死亡のアブ・アナス(本名ファビアン・クラー)追悼記、2015年パリ襲撃事件関与の人物◆6日間「戦果」計59作戦422名以上殺傷◆2019/03/14

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IS機関紙ナバア(174号)◆アブル・ハサン・アル・ムハジール声明「彼はアッラーに誠実であり、アッラーも彼に誠実であられた」◆シリア・バグーズ戦闘◆シリア・ホムスでロシア兵6名殺害◆ナイジェリア軍に自爆攻撃◆フィリピン軍50名殺傷◆6日間「戦果」計51作戦213名以上殺傷◆2019/03/21

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IS機関紙ナバア(175号)◆シリア・デリゾールとマンビジでPKK(YPG・SDFを指す)殺害◆イエメン・アルカイダ 10名殺害◆西アフリカ・サハラでのジハード◆ニジェールで米軍特殊部隊殺害、ブルキナファソのカナダ人学者殺害(※2019年1月、ブルキナファソ北部ウダランでカナダ人地質学者が拉致され、殺害された事件)◆6日間「戦果」計33作戦151名以上殺傷◆2019/03/28

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IS機関紙ナバア(176号)◆幹部含むPKK(YPG・SDFを指す)24名殺傷◆ナイジェリア軍兵舎襲撃戦・戦車破壊◆イラク・ディアラ、軍兵士・シーア民兵7名殲滅◆アフガン軍兵士・民兵・スパイ殺傷◆エジプト軍兵士殺傷・戦車破壊◆6日間「戦果」計44作戦109名以上殺傷◆2019/04/04

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IS機関紙ナバア(177号)◆シリアの虐殺戦に対する各地の連続報復戦闘◆シリア各地でPKK(YPG・SDFを指す)連続攻撃◆アンバルでイラク軍殺傷◆リビア中央部ジュフラ・フカハ攻撃◆エジプト軍攻撃22名殺傷◆シリア戦への報復作戦4日間8県80地域で92作戦362名殺傷◆2019/04/11

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IS機関紙ナバア(178号)◆パキスタンで自爆攻撃、警官ら70名殺傷◆チュニジア、スパイ処刑◆シナイ・エジプト軍攻撃戦(写真右はロシア・カフカス出身「殉教者」アブ・ムハンマド)◆フィリピン軍をホロ島パティクルなどで25名殺傷◆6日間「戦果」計85作戦395名以上殺傷◆2019/04/25

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【シリア】ラッカの悲しみ見つづけた時計塔(2)ISとの激戦と復興(全2回)写真14枚

◆ラッカ陥落と時計塔再建
武装組織イスラム国(IS)の拠点都市ラッカ攻略戦を進めてきたシリア民主軍(SDF)。米軍主導の有志連合の支援を受けながら進撃し、激戦ののち2017年10月、ついにラッカは陥落した。市内にはいまもIS支持者が潜伏し暗殺や自爆攻撃を繰り返すが、復興の象徴のひとつとして時計塔が再建された。SDFを率いたクルド勢力とアサド政権との緊張関係のなか、ラッカの将来はまだ見えてこない。時計塔は、再び悲しみを見ることになるのか。
(全2回)【第1回【第2回

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IS支配下の頃の時計塔。台座が黒く塗られている。ここで公開処刑が繰り返された。のちに全体が白く塗り替えられたが、また元の色に戻る。ISのラッカ支配は3年半以上続き、国際テロの震源地ともなった。

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2016年11月、シリア民主軍(SDF)はラッカ攻略の「ユーフラテスの憤怒作戦」を開始。攻略戦を前にISはいくつもの宣伝映像を公開。なかには少年とみられるIS戦闘員がラッカ死守戦の決意を語る映像も。2017年6月には市内中心部への突入戦となる。(2017年6月:IS映像より)

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時計塔周辺地区はIS中枢機関が多数あった場所。同じ場所の衛星写真の比較。ことごとく空爆と戦闘で破壊されている。この一帯には軍用機の爆撃のほか、トマホーク巡航ミサイルなども撃ち込まれている。

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時計塔から200メートル先にあるIS司令本部だった建物は、アサド政権時代は豪華な県庁宮殿だった。のちにIS司令部として使われ、空爆で完全に破壊され瓦礫に。(上:シャハバニュース・中:IS系ツイッター・下:イッティハッドニュースより)

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ラッカではSDFとの熾烈な攻防戦が繰り広げられた。写真は2017年8月下旬、時計塔に進撃したSDF傘下のマンビジ軍事評議会の映像から。戦闘のすさまじさがわかる。右のベージュ色の幕は上空のドローンから地上の戦闘員の動きを見えないように路地のいたるところを覆ってISが張り巡らせたもの。この2か月後、ラッカは陥落。(マンビジ軍事評議会映像より)

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ラッカ陥落から数か月後に撮られた写真。SDF傘下の外国人義勇部隊、国際自由大隊(IFB)にいる外国人アナキストが時計塔に書き残していったとみられるⒶ(アナーキー)マークの落書き。ほかにも「国境廃止」とか描いてる。ISと戦ったからといって、なんでもやり放題は許されない。外国人義勇兵がスプレーで自分たちの政治スローガンをあちこちに落書きしまくる行為に対しては住民やSDF内部からも批判の声が。(写真はツイッターから)

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2018年7月、ラッカ時計塔の前でアル・アラビーヤTVのインタビューに答える有志連合司令官ジェームズ・ジャラード米軍少将(当時)。シリア内戦前、ラッカがISの拠点都市として国際テロの震源地になり、激しい攻略戦を経て、のちに米軍将官がこの場所に立つ日が来ると誰が予想しただろうか。(左:有志連合作戦本部映像・右:アル・アラビーヤTV映像)

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IS拠点都市ラッカは陥落し、SDF主導の行政統治が始まった。だが市内にはISシンパやスリーパーセルが潜伏。写真は2018年5月、時計塔付近での自爆攻撃。(2018年5月:ANHA通信)

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去年取材したとき撮影した時計塔。この一帯も激しい戦闘が戦われ、市街戦と空爆で周囲は破壊。時計塔は損傷したものの破壊は免れた。一方、ラッカ空爆や戦闘に巻き込まれて死んだ一般市民は多数にのぼる。後ろの赤枠のあたりがジハーディ・ジョンが米軍ドローンの攻撃で殺害された場所。

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時計塔前で住民の証言を集めた。「ここでたくさんの処刑を見た。自分が見ただけで、のべ70人以上が殺された」とIS支配下の過酷な状況を話してくれる人がいた。この女性は「破壊だらけの町になってしまった」と嘆いた。後ろの建物は空爆で崩壊している。

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時計塔の横で。なかには話すのを断る人も。IS支持者や潜伏するスリーパーセルがまだいて、暗殺が横行し、怯える住民は多い。シリア・バグーズ「最終拠点」は失ったが、ISが壊滅したわけではなく、一部にまだIS支持者のどちらもいる。

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時計塔を取材した際の様子をTBS報道特集で使った映像。(2018年・撮影:坂本)

【動画】ラッカ行政当局による時計塔修復工事(2018年12月開始)

ラッカ陥落後、シリア民主軍(SDF)系の市民評議会が行政運営。市内にはいたるところに破壊された建物が残るが、悪夢の象徴となった場所をまず改修し、復興へ向けた希望の象徴としたい行政当局の意向があった。同じく公開処刑の現場となったナイム広場の工事も始まった。映像はラッカ行政当局広報部の昨年末の工事開始の様子。

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そして2月修復工事完成。(写真:ラッカ行政当局)

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「豊穣な農業とともに暮らすラッカ住民のシンボル」として時計塔の上に男女の像設置。(写真:ラッカ行政当局)

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時計塔、夜はライトアップされる仕様。市民にとって処刑の忌まわしい記憶を消したい場所でもある。ISが去ってもこんどはクルド勢力とアサド政権との政治問題もある。もうこれ以上、ラッカが悲しい場所にはなってほしくない。(写真:ラッカ行政当局)
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【シリア】ラッカの悲しみ見つづけた時計塔(1)日本人殺害ジハーディ・ジョン、ドローン攻撃死亡現場にも(全2回)写真16枚

◆ラッカ反体制デモの象徴からISの公開処刑の場に
シリア・ラッカ中心部にそびえる時計塔。アサド政権支持派や反体制派が集会やデモをする場ともなってきた。のちに武装組織イスラム国(IS)が町を制圧すると、時計塔は公開処刑の場所のひとつとなった。悲しみを見続けてきた時計塔を中心に振り返る。
(全2回)【第1回】【第2回

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シリアで騒乱が始まった頃のラッカでは、まだアサド政権派も強く、時計塔前で政権支持デモなどもあり、アサド大統領の写真やシリア国旗を掲げる人々も多数。(2012年・ラッカ市行政局映像)

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ユーフラテス川のひとりに広がるラッカは古代キリスト教都市からイスラム帝国を経て栄えた。中心部の時計塔周辺には、県庁宮殿など重要施設が置かれる。

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中東各地に広がったアラブの春。シリアでアサド政権の独裁打倒や自由を求めるデモはラッカにも及んだ。反体制派の市民は市内各所でデモや集会を開き、時計塔(左)にも繰り出すが、アサド政権の治安部隊に弾圧される。デモに対して発砲もあり、犠牲者も出た。(2012年・反体制派系Syria Rev映像より)

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2013年頃はまだ反体制各派が合同でデモをする光景も見られた。この当時、時計塔の前には、自由シリア軍系支持者の旗、その右横はヌスラ戦線の黒い旗も。アサド政権の政府軍は反体制派に対し、戦闘機による爆撃やヘリからの樽爆弾投下などを繰り返し、市民の犠牲も増え始める。過激イスラム諸派が、台頭したISIS(当時はイラク・シリアのイスラム国)に合流し、ラッカを掌握すると、自由シリア軍など他派の駆逐殲滅戦が始まる。(2013年5月・反体制派系ラッカ・メディア・オフィス映像より)

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のちにISISがラッカを制圧すると、市内各所で公開処刑が繰り返された。アサド政権協力者や自由シリア軍派のほか、ISが解釈したイスラム法に反した者などが処刑された。時計塔前での公開処刑、中央に3人が座らされ、銃殺される。まだ時計塔の台座には自由シリア軍系のペイントが残っているが、その上に、黒い旗を掲げている。(ラッカ・イスラム・ネットワーク映像より)

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時計塔の土台部分が黒く塗り替えられている。左は処刑され、見せしめで磔けにされた死体。上に「罪状」が書かれた紙がある。数日間放置されることもあった。一部ぼかしています。(左:RMC映像より)

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2014年にはISがシリア政府軍から奪ったスカッドミサイルで市内凱旋し、時計塔広場にも。右端に時計塔が見える。(写真:2014年 RMC映像より)

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時計塔はISのプロパガンダ映像に何度か映っている。メディアでよく報じられた「IS首都ラッカ」だが、ISは「イスラム国の首都」と宣言したことはない。都市の規模でいえばイラク・モスルのほうが何倍も大きい。ただしISの中枢機関や主要幹部がここに集中し実質的な「首都」となってきたのは事実である。ゆえにモスルと並んで空爆被害も大きく、市民の犠牲も多数にのぼった。(写真:2014年:IS映像)

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2015年のIS映像では、時計塔が白く塗り替えられている。(写真:2015年5月:IS映像)

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時計塔の周りは交差点になっていて、普段は車が周回する。公開処刑は車を止めて市民を集めて行われていた。この地区はラッカの中心地で、すぐ近くには県庁宮殿があったが、IS司令本部に。(写真:2015年5月:IS映像)

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IS映像でラッカ時計塔(左)の前に立つフランス人の戦闘員アブ・サルマン・アル・フランシ(本名ロマン・ガルニエール)。フランス東部ヴズール出身で、地域の水泳チャンピオンの経験も。映像では「IS兵士はヨーロッパ各地にいるのだ」と警告。パリ連続襲撃事件はこの映像の5か月後の2015年11月に起きる。多数の死傷者を出したパリ襲撃事件を受け、フランス軍はシリアでのIS掃討戦での軍事行動を拡大。(写真左:2015年6月:IS映像)

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ラッカは悲しみの都市となった。ISの恐怖支配と公開処刑。さらにシリア政府軍、ロシア軍、そして米軍主導の有志連合の空爆にさらされる。ISとは関係のない子供を含む市民も巻き添えで犠牲となった。ISはそれを利用し「虐殺された住民のために世界各地でテロで報復せよ」などと宣伝映像で呼びかけた。(2017年:IS映像)

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ISが急速に台頭するなか、米軍はイラクに続きシリアにも軍事介入を決断。米軍がシリアでのIS拠点攻撃を開始したのは2014年9月23日で、米軍艦船から複数のトマホーク巡航ミサイルが発射された。時計塔横の通信鉄塔は最初の標的のひとつとなり破壊。右写真は2015年11月には、ジハーディ・ジョンが米軍ドローンで殺害されたとされる場所。(画像はラッカ陥落後にシリア民主軍が空撮した映像より)

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時計塔の横には2つの通信鉄塔があり、ひとつは2014年9月、米軍トマホーク巡航ミサイルで破壊されたとされる。写真左は着弾したミサイル破片(トマホーク部品でなかったらすみません)。当時、IS系のSNSでは「我々が撃ち落としたドローン」などとされた。(RMC映像より)

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英国出身IS戦闘員ジハーディ・ジョン(本名ムハンマド・エムワジ)は時計塔前で殺害と報じられた。ジハーディ・ジョンは後藤健二・湯川遥菜さんら日本人殺害映像にも登場し、日本政府を脅迫したほか、数々の欧米人殺害に関与。英米とも暗殺リストのトップに挙げていた。空爆した先にたまたまジハーディ・ジョンがいたのではなく、行動を捕捉したのちドローンが彼の乗った車両をロックオンして殺害したもの。

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英デイリーメール紙によると2015年11月、ジハーディ・ジョンの居場所が特定され、クルド勢力エリアにいた英特殊部隊(SAS)緊急出動、ラッカ8キロの砂漠から軍用小型ドローンを飛ばして追尾し、位置を捕捉。米英軍共同で連携し、米軍の攻撃ドローンからヘルファイアミサイル撃ち込んで爆殺という、まるで映画のような殺害作戦。タブロイド紙なので少し盛ってる感があるものの、殺害作戦が遂行されたのは事実で、「死亡はほぼ確実」とされる。(画像:デイリーメール:2015年12月)デイリーメール紙の記事 >>

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ジハーディ・ジョン殺害作戦の翌日の2015年11月13日、作戦が遂行されたことを首相官邸前で報告するキャメロン英首相(当時)。後藤・湯川さんらの名も挙げながら「多数の市民を殺害したISを必ず壊滅させる」とした。(英TV映像より)

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殺害作戦が遂行されたのは夜。居場所特定は彼がネットを使ったためか、周囲にスパイがいたかは不明。SASが小型ドローンを飛ばして場所確認続け、米軍と情報共有し、車に乗ったジョンを米軍ドローンが爆撃。ISはジハーディ・ジョンの居場所を伝えたスパイがいたはずと周囲にいた人を次々処刑したと報じられた。   2に続く >>

ラッカ時計塔の悲しみ(2)に続く>>

【シリア民主軍SDF声明全文】イスラム国(IS)最終拠点バグーズの制圧とIS掃討戦勝利【写真12枚】

◆シリアのIS拠点壊滅~あらたな局面へ
3月23日、シリア民主軍(SDF)司令部は、シリア・デリゾール南東部バグーズのIS最終拠点を完全制圧したとして声明を発表した。以下はSDFによるIS拠点制圧と掃討戦勝利声明の全文。

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IS壊滅戦の勝利を宣言するシリア民主軍(SDF)。声明を読み上げるのはマズルム・コバニSDF総司令官(2019年3月・写真:ANHA通信)

シリア・バグーズ制圧とIS掃討戦勝利声明
シリア民主軍(SDF)
(2019/3/23)

シリア民主軍総司令部の名において、また我々と塹壕をともにして戦ったすべての諸連合を代表し、いわゆる「イスラム国」組織が壊滅し、バグーズ地域の最終拠点で終止符が打たれたことを、きょう、我々はここに宣言する。

2012年、2013年の英雄的な抵抗戦の過程で、わが地域部隊が限られた資力となっていたなか、我々の地域は2014年初頭に攻撃にさらされ、同じ地域の諸勢力のなかにあっては、なかでもダアシュ(IS)の猛攻が先鋭化した。
訳註:SDFが結成されたのは2015年10月で、「2012年、2013年のわが地域部隊の抵抗戦」と言及している部分は、SDFを実質的に主導するクルド・人民防衛隊(YPG)の戦いを指す)

これらの攻撃はもっとも流血に満ち、残虐で、広範囲に及ぶものであった。なかでもコバニ攻防戦は、テロリズムに対する全世界的な抵抗の象徴であり、IS敗北への転換点となったことは特筆すべきである。

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シリア民主軍(SDF)マズルム・コバニ(シャヒン・ジロ)総司令官。
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5年にわたる戦いを経て、いま、ISの物理的な敗北と、人類に対するISのあらゆる目論見が終焉したことをここに我々は宣言する。

ISとアルカイダに対する戦争を通じ、我々が成し遂げた成果、すなわちシリア北部の諸々の構成体のすべての住民、およそ500万人をテロの一群から救い、シリア国土の5万2千平方キロを解放し、テロの脅威を排除したことを誇りとするものである。

この勝利には高い代償も払わなければならなかった。1万1千人を超えるわが軍の司令官、戦闘員が戦いに殉じ、ISの標的となった民間人も犠牲となり、また2万1千人の戦闘員が負傷した。 

この場において、これら英雄たちを我々は忘れてはならず、戦死烈士たちを追悼し、また戦傷者の回復を願うものである。彼らの犠牲なくしては、この勝利は勝ちとることはできなかった。同様に、テロに対する戦争に貢献したすべての勢力、とりわけISに立ち向かった国際有志連合に深い感謝を表したい。

テロに対するこの戦いでシリア民主軍が勝利に至ったおもな要因は、その民主的な姿勢、民主的国民の原則の貫徹、女性解放、諸人民の共存と同胞精神の原則であった。その原則はクルド人、アラブ人、シリア正教徒、アッシリア人トルクメン住民、チェチェン人、チェルケス人、国際義勇戦士たちをシリア民主軍の旗のもとに結集させるものとなった。

シリア民主軍が解放された地域の住民を支援すべく、行政機関や治安機構を設置し、整備した。これら機関は、これらの地域が民主的かつ公正な選挙を通じて行政・立法評議会を再建できるよう、地域の安定を創出することとなろう。

これに関連して、我々はダマスカス中央政府に向け、対話プロセスを選択し、シリア北東部での選挙によって選ばれた自治行政機構の承認と特定実力組織たるシリア民主軍の受け入れを土台とした政治解決のための具体的なステップを開始することを呼びかける。

またトルコに対し、シリアに内政問題に干渉せず、安全を継続的に脅かすのをやめ、シリア領内、とりわけアフリンから撤退し、相互信頼と良き隣人関係にもとづいて、この地域の懸案の諸問題解決への手段としての対話を受け入れるよう求めるものである。

最後に、ISのテロリズムに対する我々の戦いは、完全なる勝利が獲得され、その存在が徹底一掃されるまで続くものであると確認する。

同時にまた、我々は、テロリストに対する戦いのあらたな段階が始まったことを国際社会に宣言する。、これらは、我々の地域と全世界にとっての深刻な脅威であるISスリーパーセル潜伏といった軍事的脅威を完全に排除することを目的とし、国際有志連合軍と連携した軍事・治安作戦の継続をもってなされるものである。

シリア民主軍(SDF) 総司令部

2019年3月23日

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シリア東部デリゾールからさらにイラク国境近くにバグーズはある。SDFは2017年10月ラッカ攻略後、デリゾールへとISを追撃し、バグーズ南部のユーフラテス川べりで包囲した。(勢力図は2019年3月下旬時点)

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シリアのIS最終拠点となったバグーズ。米軍・有志連合の空爆シリア民主軍側の砲撃などが繰り返され激戦が続いた。拠点にとどまったのはIS戦闘員のほかIS家族もいて、巻き添えの犠牲も少なくないが、被害実数は明らかにされていない。手前にISが乗ってきたたくさんの車両が見える。川の対岸はアサド政権・シリア政府軍のエリア。逃げ場はなく、ここが最終地点となった。(2019年3月:写真:YPGメディア)

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SDF側はIS戦闘員に繰り返し投降を呼びかけ、降伏する戦闘員もあいついだ。一方、外国人などIS思想を強固に信奉する戦闘員らは玉砕覚悟で戦闘を続けた。(2019年3月:写真:YPJメディア)

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IS戦闘員と行動をともにしていたIS妻や子供たちを含む住民もシリア民主軍側に収容された。IS家族、住民も含まれる。身元確認などを経て、収容施設やキャンプなどに移送された。(2019年3月:写真:SDFメディア)

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 IS掃討作戦はアメリカの武器供与や、米軍・有志連合の航空支援を受けながら進められてきた。軍用車両ハンヴィほか自動小銃・弾薬などもアメリカが供与。SDFを主導するクルド・人民防衛隊(YPG)をトルコは「テロ組織」と規定しているため、アメリカも武器供与の範囲を限定。だが「IS壊滅」を選挙公約に掲げてきたトランプ大統領になって以降、武器支援は拡大。(2019年1月:写真:SDFメディア)

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バグーズにISを追い詰め、砲撃を加えるシリア民主軍。実質的に主導するのはクルド・YPG。SDFの戦闘力なしにはIS壊滅を進めることができなかった現実からアメリカは地上部隊を派遣するなどして作戦支援、武器供与に加え、軍事訓練などで連携してきた。(2019年3月:写真:YPGメディア)

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シリア民主軍(SDF)を構成する部隊・勢力。実質的にはクルド・人民防衛隊(YPG)が主導し、中枢司令官もクルド人が多い。あくまでも主観ながら赤枠はクルディスタン労働者党(PKK)の影響力が強い組織。拡大 

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バグーズ制圧を宣言する記念式典で整列するSDF戦闘員。(2019年3月・写真:ANF通信)

f:id:ronahi:20190330125445j:plain勝利式典では米軍・有志連合代表も出席。マズルム・コバニSDF総司令官(右)とアメリカのルーボック有志連合米特使(中央)。マクガーク特使の後任として今年1月から特使。マズルム・コバニ(シャヒン・ジロ)総司令官については、2017年にトルコ側に「寝返った」SDF報道官の記事で詳細(2019年3月・写真:SDF映像)

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【IS映像】ISは包囲下のバグーズからISメディアで映像発信を続けた。「不屈不動の意味」と題する映像はバグーズ陥落直前のパート2まで出た。パート1では、なぎら似の男がアッラーを信じたゆえに迫害されたコーランの星座章の一節を引用して、米軍・有志連合とそれに連携するシリア民主軍を批判。外部にIS支援ネットワークがあるとみられる。(2019年3月:IS映像より)

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【IS映像】ISはバグーズの最終拠点で戦う戦闘員の様子を伝えた。銃を手にする少年とみられる姿も映る。外部にIS支援ネットワークがあるとみられる。(2019年3月:IS映像より)

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今回のSDF声明でも触れられていたように、IS拠点の壊滅は果たせてもスリーパーセルと呼ばれるISの地下潜伏要員やシンパが自爆攻撃や暗殺戦を各都市で続けている。これは今年1月、マンビジ市内のレストラン付近で米軍兵士2名含む関係者4名が死亡、死傷者あわせて16名の犠牲が出た事件。ISが犯行声明を出した。ISが完全に壊滅したわけではない。(2019年1月:写真:ロナヒTV)

「ユーフラテスの憤怒」作戦・これまでの流れ(おもな声明一覧)
第1段階・開始声明 (2016/11/06)    第2段階・開始声明 (2016/12/10)
第2段階・戦果報告 (2017/01/16)    第3段階・開始声明 (2017/02/04)
第3段階・第2攻勢 (2017/02/17)    第4段階・開始声明 (2017/04/13)    
タブカ・ダム制圧声明
(2017/05/12)
ラッカ突入・大攻勢戦開始声明(2017/06/06)
ラッカ解放宣言 (2017/10/20)

 

IS機関紙ナバア・ヘッドライン【10】(2018年9~12月)146~162号

◆IS機関紙ナバア(2018年9~12月)146~162号
イスラム国(IS)機関紙 アン・ナバアのヘッドライン
ISの週刊発行プロパガンダ紙であり、いずれもIS大本営発表(IS動向の検証資料として掲載しています。残酷画像は一部ぼかし処理しています)
※印はメディア報道情報などをもとにした注釈 Research + Analysis

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IS機関紙ナバア(146号)◆イラクキルクークで自爆+爆破攻撃、警官ら多数殺傷◆アフガニスタン、自爆+連続襲撃戦でシーア派と治安部隊 150名殺傷◆ミンダナオでフィリピン軍兵士20名殺傷◆エジプト軍クーガー装甲車爆破◆IS地域6日間「戦果」計109作戦516名以上殺傷◆2018/09/06

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IS機関紙ナバア(147号)◆イラク・サラハディン、シーア民兵車両爆破◆バグダッド民兵殺傷◆アフガン・カブール自爆攻撃で軍・警察ら55名殺傷◆フィリピン・スールー島軍兵士攻撃◆「カリフ国支持者への行動指南」◆IS地域約1ヶ月間「戦果」計99作戦 379名以上殺傷◆2018/09/13

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IS機関紙ナバア(148号)◆シリア・ハサカで米軍車両+PKK(YPG・SDFを指す)待伏せ爆破攻撃多数殺傷◆イラク・モスルで自爆攻撃、軍兵士10名殺傷◆フィリピン軍兵士39名殺傷◆ヒジュラ暦1440年開けにあたり昨年1年間IS「戦果」総計 2981作戦 19900名以上殺傷◆2019/09/20

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IS機関紙ナバア(149号)◆9月22日のイラン・アフワズの軍事パレード襲撃で「革命防衛隊ほか民兵、イラン軍、100名以上殺傷」としイングマスィ(突撃戦士)5名の写真公開◆シリア・ハサカ一帯で連続暗殺作戦28名殺傷◆IS地域6日間「戦果」計128作戦551名以上殺傷◆2019/09/27

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IS機関紙ナバア(150号)◆シリア・ハサカでPKK(YPG・SDFを指す)に自爆攻撃◆パキスタン軍兵士45名殺傷◆アフガン・ナンガハルで選挙候補者に自爆攻撃◆IS地域6日間「戦果」計133作戦531名以上殺傷◆カリフ国支持者に向けた放火指南(画像右ぼかし処理)◆2018/10/04

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IS機関紙ナバア(151号)◆シリア、ハサカとラッカでPKK(YPG・SDFを指す)を襲撃◆シリア・スワイダで政府軍14名殺傷◆ナイジェリア軍殺害◆イラク・バイジ製油施設で車両爆弾◆アンバルでの米軍部隊襲撃詳報◆IS地域6日間「戦果」計103作戦406名以上殺傷◆2018/10/11

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IS機関紙ナバア(152号)◆バラカ(=ハサカ)でPKK(YPG・SDFを指す)を攻撃殺傷◆シリア・スワイダで政府軍戦闘車両攻撃◆イラクティクリート、ベイジで軍兵士+民兵殺傷、軍用車両破壊◆ナイジェリア軍を攻撃◆IS・6日間「戦果」計 118作戦404名以上殺傷◆カリフ国の支持者向けのローンウルフ(単独決起)や地下細胞による攻撃指南PART3・敵の待ち伏せ戦法など(画像右ぼかし処理)◆2018/10/18

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IS機関紙ナバア(153号)◆アフガンで治安部隊要員殺傷◆PKK(YPG・SDFを指す)に暗殺戦、シリア・デリゾールとハサカで43名殺傷◆イラクキルクークで襲撃戦◆エジプト軍攻撃◆解説「スパイ携帯電話」(図右)◆IS・6日間「戦果」計 121作戦 610名以上殺傷◆2018/10/25

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IS機関紙ナバア(154号)◆シリア・ハサカのイラク国境近郊でPKK(YPG・SDFを指す)70名以上殺傷◆リビアで警察署襲撃◆アフガン・カブールで自爆攻撃55名殺傷◆アフガンNATO基地で殉教コマンド戦、米兵含む十字軍殺傷◆6日間「戦果」計85作戦435名以上殺傷◆2018/11/01

f:id:ronahi:20190602082001j:plainIS機関紙ナバア(155号)◆イラクキルクーククルドペシュメルガら11カ所に爆弾攻撃◆イラク・サラハディン知事車列攻撃◆バグダッド5カ所連続爆破◆ラッカでPKK(YPG・SDFを指す)要員へのサイレンサー暗殺戦◆IS・6日間「戦果」計100作戦369名以上殺傷◆2018/11/08

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IS機関紙ナバア(156号)◆シリア・デリゾールでPKK(YPG・SDFを指す)33名殺傷・ラッカ暗殺戦◆アフガニスタン大統領府付近で自爆攻撃など連続戦で65名殺傷◆オーストラリア・メルボルンで十字軍市民殺傷(※2018 年11月9日、メルボルンの商業地区でソマリア系移民ハサン・カリフ・アリ・30歳が自身の車に火をつけたのち、歩行者を大型ナイフで切りつけ。車にはプロパンガスが積んであったが爆発せず。歩行者ら1人死亡、3人負傷。警官が容疑者に発砲、病院で死亡した。ISの直接指示があったは不明)◆IS・6日間「戦果」計67作戦 205名以上殺傷◆2018/11/15

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IS機関紙ナバア(157号)◆ナイジェリア軍110名殺害◆アフガン軍攻撃◆ティクリートイラク軍51旅団司令補標的◆エジプト軍殺傷◆一時期連載してたIS武器図鑑みたいなの復活、狙撃ライフル解説、HS.50、SVDドラグノフ、M24など◆6日間「戦果」計62作戦 251名以上殺傷◆2018/11/22

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IS機関紙ナバア(158号)◆シリア南東ハジン、シファア近郊PKK(YPG・SDFを指す)拠点攻撃80名以上殺害、捕虜多数◆西アフリカ・ナイジェリア軍攻撃◆フィリピン軍兵士10名以上殺傷◆アフガン軍基地に連続自爆攻撃300名以上殺傷◆6日間「戦果」計61作戦 548名以上殺傷◆2018/11/29

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IS機関紙ナバア(159号)◆ナイジェリア軍をチャド湖近郊で攻撃54名以上殺傷◆エジプト軍に対し爆破7戦闘◆アフガニスタン・ジャララバードでタリバン殺害◆シリア・デリゾール近郊PKK(YPG・SDFを指す)に爆破+暗殺戦◆6日間「戦果」計67作戦 197名以上殺傷◆2018/12/06

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IS機関紙ナバア(160号)◆シリア・ハジンでPKK(YPG・SDFを指す)に3自爆戦65名以上殺傷◆ラッカPKK暗殺◆6日間「戦果」計58作戦 170名以上殺傷◆いずれもIS大本営発表◆フランス・ストラスブール銃撃については「今週の出来事コーナー」でニュース引用言及のみ◆2018/12/13

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IS機関紙ナバア(161号)◆シリア・ハジンでPKK(YPG・SDFを指す)34名以上殺傷◆イラクキルクークで軍情報部急襲◆ソマリアアルカイダ殺害◆6日間「戦果」計76作戦184名以上殺傷◆12/11仏ストラスブール銃乱射事件「カリフ国兵士が十字軍国民に報復」と言及◆2018/12/20

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IS機関紙ナバア(162号)◆リビアトリポリで外務省に3戦士突撃戦31名殺傷・建物焼き討ち◆ナイジェリア軍攻撃◆イラク・タラファルでイラク軍に爆弾攻撃15名以上殺傷◆シリア・デリゾールでPKK(YPG・SDFを指す)15名殺傷◆6日間「戦果」計58作戦175名以上殺傷◆2018/12/27

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【イスラム国(IS)】パンクスからIS妻になった英国人サリー・ジョーンズとは・息子ジョジョは捕虜処刑映像~米軍ドローン攻撃でサリー死亡報道(3)写真19枚(全3回)

◆サリーの夫は空爆死、幼い息子は捕虜処刑映像に
サリーがIS勧誘や英国でのテロを呼びかけただけでも十分深刻だったが、さらに衝撃の事態が起きる。2016年、ISが公開した捕虜処刑映像に、息子ジョー(愛称ジョジョ)とみられる子供が映っていたのだ。そして2017年6月、米軍ドローン攻撃でサリー死亡が報じられる。(写真を含め英メディア報道と、サリーを番組で報じた英TVプロデューサーからの情報をもとにしています。撮影時期と情報が前後する場合もあります)全3回
【第1回】【第2回】【第3回】

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2016年8月、IS・ラッカ県メディア部門は敵対勢力の捕虜を次々と殺害する映像を公開。ISに対峙するクルド勢力の捕虜を、エジプト、イギリス、チュニジアウズベキスタン出身とみられる子どもが銃殺。右から2番目に立つ少年はサリーの息子ジョジョではないかと報じられた。ジョジョはシリア入り後、アブ・ハムザの名をつけられたが、映像ではアブ・アブドラ・アル・ブリタニと名が出ている。(2016年8月・IS映像・一部をぼかしています)

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ISはラッカ発映像で敵対するクルド組織の5人に囚人服を着せて銃殺する映像を公開、そこに映っていたのが、サリーの次男ジョジョとみられる青い目の少年だった。ジョジョならこのとき11歳。「サリーの息子が処刑映像に登場」との報道に英国社会では大きな衝撃が広がり、ジョジョの祖母は苦しい心境を英紙に語っている。(2016年8月・IS映像)

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サリーはシリア・ラッカを拠点にしていたが、イラクに行ったことも。「チグリス川でピクニック」とツイッターに投稿している。当時、IS地域から刻々とメッセージを発信するサリーは「IS有名人」のひとりだった。書き込まれたメッセージにリプライするなど、IS妻と世界がライブでつながる状況になっていた。

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サリーはツイッター発信を宣伝戦術としたのか、投稿することで承認欲求を満たしたのかはわからない。米海軍特殊部隊NAVY SEALsの個人アドレスのリンクを「殺害リスト」として投稿もした。ツイッターフェイスブックの運営がアカウント凍結対策を強化したものの、新たなアカウントで発信が繰り返された。ただしかつてのような野放し状態に比べると発信は減った。またIS関係者は相互メッセージのやり取りを、テレグラムなど別のSNSに移していった。

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2015年11月に英TV・チャンネル4で「IS支える英国女性たちの実像」という番組が放送された。番組では女性ディレクターが身分を隠し、過激主義に関心を持つ女性になりすましてロンドンの地下ネットワークに潜入し、1年にわたって隠し撮り取材。そこではシリア入りをコーディネートする女性の地下ネットワークの存在が明らかに。(Channel4番組より)

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番組内では、なりすました取材者が「ニカブをかぶりたいけど母が許してくれないの」とシリアにいるサリー・ジョーンズにメッセージを送る。するとサリーは「(イスラム国に)移住してはどう?」と返信し、航空券についてアドバイスする。潜入取材では英国内でシリア行きをサポートする女性も追っている。(Channel4番組より)

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この番組を制作した英国人プロデューサー氏とは自分も何度か一緒に仕事をしたことがあって、いろいろ教えてもらった。番組では潜入取材者が隠し撮りを続けるも、最後には地下グループのリーダー格の女性から疑われて取材中止までが映っている。「リーダー女性の顔を放送して大丈夫だったのか」とプロデューサー氏に聞いたところ、女性はすでにテロ関連容疑で治安当局に逮捕されたという。(Channel4番組より)

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このプロデューサーのチームは、英国のIS支援ネットワーク隠し撮り取材だけでなく、別番組で英極右組織にも潜入。そこでは「現代の最大の標的はユダヤではなく、移民とイスラム」とする過激なヘイト思想と排外主義的政治目標が語られる。プロデューサー氏によると、どちらの番組も反響があったが、極右潜入番組のときは脅迫があり、また治安機関が傍受した極右組織の通信でプロデューサー氏の名が挙がっていたことから、身辺に気をつけるようアドバイスがあったそうだ。ISと極右、いずれの過激主義も英国社会が直面する深刻な問題だ。(ITV番組より)

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英Skyニュースは、ラッカから出てシリア民主軍(SDF)に収容されたIS妻でサリーを知るという女性をキャンプで取材。サリーは英国に帰国したいと言っていた、と話す。事実であれば、サリー自身が望んでISに加わり、テロ扇動やIS志願者リクルートをしておきながら、帰国を望むのも勝手な話ではある。ただ、ISに入ったことを後悔する気持ちになっていたのかもしれない。一方、息子ジョジョは幼いころにサリーに連れられてシリアに入り、過激主義洗脳教育を受けて捕虜処刑までさせられている。ISの「被害者」とも言えるが、サリーとともにドローンで殺害されたなら酷なことだ。(Skyニュース映像より)

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2017年6月、サリーはラッカ南東マヤディーンで米軍ドローン攻撃を受け、死亡と報じられた。各紙は詳細な画像入りで殺害作戦成功を伝えた。米軍ドローン、プレデターからヘルファイアミサイルが発射されたという。サリー、この時、48歳。暗殺リストにリストアップされ標的となったIS女性はサリーが初めてとされる。息子ジョジョも一緒に死亡したとされるが、サリーとは別の場所にいたとも伝えられ、生死は不明。サリーの死亡はほぼ間違いないとみられている。(画像:英タブロイド各紙がサリーの死を伝えた記事より)

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英軍もIS掃討作戦を戦う有志連合に参加してきた。写真は有志連合軍・副司令官で英軍のルパート・ジョーンズ少将。IS志願の英国出身者がシリア・イラクに入り、自爆攻撃や住民殺害を繰り返し、他方、英軍がシリア・イラクで軍事作戦を展開する構図に。(有志連合・CJTF-OIR映像より)

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写真は2014年にISメディアが公表したシリア・イラクの国境盛土を破壊する写真。英国の中東政策をさかのぼれば、ISが「西側列強・キリスト教十字軍によるイスラムの地の分割」と批判するサイクス・ピコ協定も、もとはといえば英仏が引いたイラク・シリア分割線である。その場所が世界を脅かすテロ震源地になり、英仏軍が派遣される悲しき「皮肉」となっている側面もある。(2014年6月・ISメディア・HAYAT・ISリポート・第4号より)ISの国境解体映像 >>

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写真はシリア・ラッカでのISへの英空軍のドローン攻撃(サリー殺害の米軍ドローンとは別の映像)。日本とヨーロッパでは状況も背景も異なるが、例えば日本人が数百人単位で紛争国に入って過激組織に加わって住民を処刑したりテロを扇動し、実際に支持者が日本国内で無差別に市民殺傷して、その紛争国に自衛隊を派遣して容疑者らをドローン攻撃で殺害、さらに巻き添えで地元住民にも犠牲が出てしまう状況を想像できるだろうか。これがこの数年、欧米各国がISとの関係で直面してきた現実でもある。(英国防省映像)

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右はサリーがドローン攻撃で死亡したことを伝えるThe Sun紙のトップ見出し、「白い未亡人・抹殺される」。IS問題はシリア・イラクでの紛争だけでなく、ヨーロッパ、そして英国国内のテロ対策に直結する深刻な課題となっていた。無差別殺傷や爆弾事件があいつぎ、また戦火から逃れてきた難民の受け入れをめぐる政策も左右する問題だった。

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英国出身の子どもがIS処刑映像に登場したのは、サリーの息子ジョジョだけではない。それに先立つ2月、車に閉じ込めた「スパイ」を子どもが遠隔爆破リモコンで爆破し殺害させる映像がある。イサ・デア(4歳)とみられ、母グレースは「私は西側の人質を殺す最初の英国人になりたい」とSNS上に書き込んでいる。父はスウェーデン国籍のアブ・バクルで、戦闘で死亡したとされる。英国出身でIS地域入りした子どもは少なくとも50人いるといわれる。(2016年・IS映像)

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ニュースサイト・バーミンガムライブは2018年10月、「サリーは生存していた可能性」とする情報を伝えている。シリア・クルド組織YPGに拘束されたカナダ出身IS戦闘員ムハンマド・アリ(アブ・トゥラブ)の証言として、シリアのハジンまたはシャファハに潜伏しているのではないかとしているが、真偽は不明。その後も生存情報や身柄拘束報道は出ていない。(写真はAFP映像より)

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これまでにIS入りした英国出身者の戦闘員と女性・子どもはあわせて800人前後とされる。IS拠点が陥落するなか、拘束された戦闘員やIS家族の本国送還も今後、大きな問題となるだろう。

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かつてはパンクスだったサリーが変遷を経たのち、なぜ過激組織ISに惹かれ、シリア入りするに至ったか、その動機は不明のままだ。100人いれば100の個々の背景がある。既存社会への反発や、人生への悔悟が宗教に向かわせたのか、サリーが心寄せたジュナイドへの思いからか、理由は様々だろう。ISによって多くの住民、異教徒が苦しめられ、彼女のテロ扇動が欧米で無差別テロを誘発することにもつながった現実や、息子の運命までも変えてしまったことを見るならば、サリーの人生を「パンクでアナーキーな生き方」とするにはあまりに悲しみに満ちている。

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過激主義に惹かれる一定層の人間が存在するのは宗教に限ったことではなく、左翼、右翼含め、いつの時代でもある。ISに関連したマンチェスター爆弾事件やウェストミンスターでの襲撃など、いくつもの市民殺傷事件が起きた英国だが、ほとんどのイスラム教徒はISのような過激主義と無縁で暮らしている。ロンドン市長パキスタン系のイスラム教徒であり、市民に支持されている点も押さえておきたい。写真は2017年3月に起きたロンドン車両暴走殺傷事件の現場、ウェストミンスター橋で手をつないで犠牲者を追悼するイスラム教徒の女性たち。(写真はロイター)

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【イスラム国(IS)】パンクスからIS妻になった英国人サリー・ジョーンズとは(2)IS志願者リクルート・欧米でのテロ扇動(2)写真19枚(全3回)

◆サリーの夫と英国IS戦闘員ら、ドローン標的で空爆
夫に続いて幼い息子ジョジョとともにシリア入りしたIS妻サリー・ジョーンズ。ネットでIS志願女性のリクルート活動をする一方、欧米でのテロを扇動した。IS戦闘員となった夫ジュナイドがドローン攻撃で死亡し、自身は国連に「テロリスト指定」される。英メディアはサリーを「白い未亡人」と呼んだ。(写真を含め英メディア報道と、サリーを番組で報じた英TVプロデューサーからの情報をもとにしています。撮影時期と情報が前後する場合もあります)全3回
【第1回】【第2回】【第3回】

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左は90年代にパンクバンドでヴォーカル・ギターしていた頃、右はIS入りしたサリー。彼女が勧誘してIS入りした英国ほか外国人は相当数に上り、また欧米での具体的テロ行動も呼び掛けている。パンクスからIS妻となった彼女を「数奇な運命」の一言では片づけられない。

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サリーの夫・ジュナイドは2015年8月24日、米軍のドローン攻撃で死亡。なぜ彼の居場所がわかったかは不明だが、地元のスパイが情報を送ったか、彼の使っていたメッセージアプリSurespotが解読されて位置情報特定につながったなど諸説ある。

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2014年9月頃にジュナイドがツイッターにアップした写真。報道では、ジュナイドは米国防総省のヒットリストの3位だったとされる。ドローンによる爆殺は成功したが、「テロリスト抹殺」の名のもとの空爆では、巻き添えとなっている地元住民が多数いることも知っておきたい。

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ジュナイドはIS内のオンライン・リクルート活動やハッキング部門の主要メンバーとなり、FBIはこの集団を「ラッカ12」「レジオン(軍団)」と呼んでいた。英国カーディフ出身のレヤード・カーン(アブ・ドジャナ)も加わっていたとされる。2015年にはマレーシアでコソボ出身の青年がハッキングした米軍・政府関係者約1300人分の個人情報リストを、ジュナイドが「ISハッキング部門」として拡散させる事件が起き、コソボ出身の青年はマレーシアから米国移送ののち20年の刑を受けている。

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ジュナイドが米軍ドローンで殺害される3日前、英国出身のIS戦闘員2人、レヤード・カーンとルフル・アミンが英空軍ドローンの攻撃によって殺害されている。英米の情報機関ともジュナイドらのIS地域での動きをマークし、ヒットリストの上位に名を連ねていた。

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レヤード・カーンは学生時代、成績優秀で、当時、自身のフェイスブックで「将来はアジア系初の英国首相になるのが夢」と記していたという。その数年後にはシリア入りし、IS映像で「不信仰者が敵意を見せるほど我々は強くなるのだ」と語る。ツイッターでは、殺害したヌスラ戦線戦闘員の死体や、コンバージョンキットでカスタマイズしたグロック銃の写真をアップしていた。ルフル・アミンはピザ配達などの仕事をしたのちシリア入り。2人は2015年8月、英空軍ドローンReaperのピンポイント爆撃によって殺害された。

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ジュナイド、レヤード、ルフルら3人の殺害を英議会で報告するキャメロン首相(当時)。英国内では、「国際法上の交戦国でない国の領土内において英空軍ドローンが英国市民を殺害する行為」については議会の承認など法的手続きを経るべき、との議論を呼んだ。キャメロン首相は国家安全保障の観点から「差し迫ったテロの脅威」排除のため必要な措置とした。識者からは「差し迫った」の定義や殺害命令の判断基準を明確にすべきとの指摘も出た。(2015年)

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英紙テレグラフが入手した映像。2014年後半、英国出身戦闘員をラッカで撮影したもので、左からジュナイド・フセイン後藤健二さんら日本人人質殺害予告映像に登場したほか複数の欧米人殺害に関与したムハンマド・エムワジ(通称ジハーディ・ジョン)、レヤード・カーンとされる。ジュナイドとレヤードについては前述のようにそれぞれ米英軍の攻撃で死亡、またジハーディ・ジョンは2015年11月、米軍の空爆で死亡したとされる。(TELEGRAPH紙より)

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夫・ジュナイドの死後、サリーはツイッターに投稿。「夫がアッラーの最大の敵に殺されたことを誇りに思う、アッラーよ、彼を嘉し給え。彼こそ最愛の人」。さらに死の翌月には、「夫は自分が殉教者になったら私に続けてほしい、と言っていた。クッファール(不信仰者)など恐るるにたらず」とツイート。

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左はサリー・ジョーンズが使っていた複数のアカウントとされるものの一部。(いずれも凍結済み)。右はサリーのツイッターで、地下鉄でのテロをほのめかすツイート。今でこそツイッター規制は厳しくなったが、当時はアカウント凍結へのツイッター運営側の対応も遅かった。それでも何度も凍結されては新アカウントで過激ツイートが繰り返された。誰もが読めるツイッターのほか、秘匿性の高い別のSNSアプリでは英国内の地下シンパに具体的な指示を与える個別メッセージを送っている。

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サリーの存在はIS入りしたことが明らかになった当初からタブロイド紙の恰好のネタになり、「パンクロッカーからトップ・テロリスト女性に」などの見出しがつけられた。左のサリーのコラージュ写真はタブロイド紙面で繰り返し使われる。もとはコリン・ベイトマンの小説「ジャックと離婚」(ディボーシング・ジャック)の表紙(右)を反転させたものにサリーの顔をコラージュしたもの。夫を失ったサリーを英メディアは「白い未亡人」と表現。

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「白い未亡人」はもともと北アイルランド出身のサマンサ・ルースウェイトにメディアがつけた呼び名。イスラム教に改宗したサマンサはジャマイカ系英国人ジャーミインと結婚。その後、ジャーミインは2005年7月のロンドン同時多発爆弾テロ事件の実行犯となり爆発で死亡。サマンサは幼い子供とともにアフリカに渡るも、過激組織アル・シャバブに関与した容疑などで手配され、現在も逃亡中。左はサマンサが南アフリカ国籍者になりすまして不正取得した偽名パスポートと報じられたもの。チェチェン紛争で夫を亡くした妻らが組織したグループが「黒い未亡人」と呼ばれたことにからめて、サマンサは「白い未亡人」と呼ばれるようになった。のちに夫を失い、過激主義の道を進んだサリー・ジョーンズも同様の異名がつけられることに。

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夫・ジュナイドの死の翌月の2015年9月、国連はサリーを「IS構成員としてリクルート活動」などの理由で渡航禁止・資産凍結の制裁対象に指定した。この画像は日本の外務省サイト「国連決議に基づく制裁対象リスト」から。リストには他にもアルカイダ指導者ザワヒリタリバン幹部、そしてビン・ラディン息子らの名が並ぶ。女子パンクスからこの「世界最強やばい人たちリスト」の制裁対象になったという意味では、すさまじい人生とも言える。制裁対象リストはここ>>(外務省サイト・PDF形式)

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サリーは自分が制裁対象リスト入りしたことに、すぐさまツイッターで反応。「デビッド・キャメロンが私の名を国連制裁リストに入れたって記事見つけたわ。私に渡航禁止って(笑)」とIS地域からツイート(2015年9月)。国連制裁対象による資産凍結といっても、旧ユーゴのミロシェビッチ大統領やリビアカダフィ大佐一族らも名を連ねる制裁リストであり、生活苦だったサリーには凍結される資産もなく、英国旅券も無効となっているが、国連にテロ組織構成員と指定されたことで第三国に逃亡しても追跡されるなど多くの制約や監視の対象となる。

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このとき国連がIS構成員として制裁対象リストの指定テロリストとした英国籍者はサリーを含め4人。
◆オマル・フセイン(アブ・サイード):2013年支援団体を装ってシリア入り。元は大手スーパーチェーン店「モリソンズ」警備員だったことからタブロイド紙からは「スーパーマーケット・ジハード戦士」とも。
◆アクサ・マハムード(ウンム・ライス):2013年11月、シリア入り。当時20歳前後、ISでは女性宗教警察部門にあたるアル・ハンサ旅団に配属。アクサの両親は英国で苦悩に満ちた表情で記者会見している。
◆ナセール・ムサンナ(アブ・ムサンナ):医学生で2013年、弟とともにシリア入り。IS映像ではリヤード・カーン、ルフル・アミンらとともに登場。

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話はそれるが、このスーパーマーケット・ジハード戦士、オマル・フセイン(アブ・サイード)は2014年、IS映像「ジハード戦士のメッセージ」に登場し、「不信仰者の地の中心部でテロを起こせ」と扇動するなど、英国出身IS戦闘員の有名人として知られていた。一方、自身のSNSアカウントでは、仲間にサンダルが盗まれたなど、地元戦闘員との「文化」の違いに不満を漏らすこともあった。IS拠点ラッカが陥落後、英Skyニュース取材班は、ラッカのIS収容施設の拘置房内の壁に彼の名前を発見し、査問で死亡した可能性を伝えている。もし事実なら、彼が非難してきた敵、「十字軍同盟」でなく、自身が忠誠を誓ったISに処断されたことになる。

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シリア入りしたIS妻たちの一部には銃の訓練を受けた者もいる。マンチェスター出身でISに加わったハラネ姉妹は、ツイッター武装訓練の写真を投稿している。ただし実際の最前線の戦闘現場に立つのは、戦況が悪化し始めてからの頃となる。

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前述のサリーとともに国連の制裁対象とされたグラスゴー出身のアクサ・マハムード(ウンム・ライス)は、ISアル・ハンサ旅団で活動。彼女が投稿した写真では、生首を手にした女性の姿が映る。IS妻も様々で、自らの強い意志でISに加わった者もいれば、ただ夫に従うままに子どもを連れシリアに入った例もある。地元シリア人の話によると、外国人には「カリフ国の女性」となった高揚感ゆえに過激主義志向の女性が少なくなかったという。一方で、生活が破綻したり、組織に幻滅して逃亡を企て、処罰された例も多数あった。

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ISが2018年2月に公開した「インサイド・ヒラーファ7」には、前線で銃を持って戦うヒジャブ姿の女性戦闘員の姿が映っている。ISが公式映像で明確に戦う女性戦闘員を紹介したのは、おそらくこれが初めてではないか。戦況悪化のなか、女性もジハードの現場に立つことでアピールする意図があったとみられる。(2018年・IS映像)

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サリーのツイッター・アカウント。プロフィールには「アブ・フセイン・アル・ブリタニの妻」とある。夫の死後は「殉教者アブ・フセインの妻」と記すようになった。IS支配地域からツイートを続け、ISプロパガンダ拡散や志願者、シンパを獲得するリクルート活動をしたほか、欧米でのテロも扇動。実際にシリア入りする英国出身者があいつぎ、また英国内では市民を標的とした無差別テロも起き、深刻度は増していく。 
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